2026年11月現在、中国の軍事力は世界有数の規模に達している。Global Firepowerの2026年軍事力ランキングでは、145カ国中世界3位。アメリカ、ロシアに続く位置を占め、日本の7位を大きく上回る。2026年の中国の公式国防予算は中央政府ベースで約1兆9,100億元に達し、海軍の空母、J-20ステルス戦闘機、ロケット軍の弾道ミサイル、核戦力など、主要分野で近代化が進んでいる。
ただし、軍事力はランキングや兵器の保有数だけでは判断できない。SIPRIが公表した2025年の軍事支出推計では、中国は約3,360億ドルで世界2位。一方、アメリカは9,540億ドル、日本は622億ドルだった。公表予算と国際機関の推計には算定範囲の違いもある。人民解放軍の陸海空・ミサイル戦力を整理し、米国・日本との比較、台湾海峡への影響、2035年に向けた軍事近代化の課題まで、2026年の最新資料から読み解く。
【2026年最新】中国の軍事力ランキングは世界3位!実際の評価は?

中国の軍事力を国際的な指標で確認すると、2026年は世界トップ3に入る。単純な兵員数や戦車の保有数だけでなく、航空戦力、海軍力、兵站、財政力、地理的条件などを含めた総合的な評価でも、中国はアメリカ、ロシアに続く位置にある。
Global Firepowerの2026年ランキング軍事力の国際比較で広く参照されるGlobal Firepowerの2026年版では、145カ国を対象に60以上の要素から各国の通常戦力を評価している。
上位10カ国のうち、主要国の順位は次のとおりだ。
- 1位:アメリカ
- 2位:ロシア
- 3位:中国
- 4位:インド
- 5位:韓国
- 6位:フランス
- 7位:日本
- 8位:イギリス
- 9位:トルコ
- 10位:イタリア
中国のPowerIndexは0.0919。アメリカは0.0741、ロシアは0.0791、日本は0.1876となっている。この指標は数値が小さいほど通常戦力の評価が高い仕組みだ。
中国が3位に位置する背景には、約14億人の人口を基盤とした人的資源、巨大な工業力、造船能力、ミサイル技術、航空機の国産化、継続的な国防投資がある。
世界3位だからアメリカと同等なのかここで注意したいのは、ランキング3位という結果が、アメリカと中国の軍事能力がほぼ同じという意味ではないことだ。
アメリカは世界各地に基地や同盟国を持ち、空母打撃群、戦略爆撃機、原子力潜水艦、輸送機、衛星通信などを組み合わせて遠距離でも軍事作戦を遂行できる。世界規模の兵站や実戦経験も大きな強みだ。
一方、中国は東アジア周辺に戦力を集中させられる。台湾海峡や東シナ海など、中国本土に近い地域では、陸上基地から航空機やミサイルを運用できる地理的優位性がある。
つまり、世界全体での軍事的な展開能力と、中国周辺での局地的な軍事的優位性は分けて考える必要がある。ランキングだけで実際の戦争の勝敗を予測することはできない。
【2026年の国防費】中国の軍事費はどれほど大きい?SIPRI推計との違い
中国の軍事力を支える最大の基盤の一つが、長期にわたる国防費の増加だ。2026年3月、中国政府は全国人民代表大会に関連する予算説明で、2026年の国防支出を公表した。
中国の2026年公式国防予算は約1兆9,100億元中国国防部の2026年国防支出に関する説明によれば、2026年の全国一般公共予算に計上された国防支出は約1兆9,400億元。このうち中央政府の国防支出は約1兆9,100億元で、前年度の執行額に対して7%増となった。
この増額は、軍の近代化、先端装備の研究開発、国防産業の強化、軍事組織の改革などを継続するための資金的な基盤となる。
中国政府は国防建設と経済建設の協調を掲げているが、軍事費の増加が続いていることは、国家戦略における軍事力の重要性が依然として高いことを示している。
SIPRIが推計する中国の軍事支出は約3,360億ドル公式予算と併せて確認したいのが、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が2026年4月27日に公表した2025年の世界軍事支出データだ。
SIPRIは中国の2025年軍事支出を約3,360億ドルと推計した。前年比では実質7.4%増で、世界2位の軍事支出国となっている。
主要国の2025年軍事支出は次のとおりだ。
- アメリカ:約9,540億ドル
- 中国:約3,360億ドル
- ロシア:約1,900億ドル
- 日本:約622億ドル
中国の支出は日本の約5.4倍に相当する。アメリカと比較すると約35%の水準だが、アメリカに次ぐ世界2位という位置は変わらない。
なぜ公式予算とSIPRI推計は一致しないのか中国の公式国防予算とSIPRIの推計額が異なるのは、算定方法と対象となる支出範囲が同じではないためだ。
中国政府の公表額は、政府予算に計上された国防支出を中心としている。一方、国際的な軍事支出の推計では、統計の定義に応じて、軍事関連の研究開発、準軍事組織、退役軍人関連支出などが加味される場合がある。
米国防総省の2025年中国軍事力報告書も、この問題を取り上げている。同報告書は2024年の中国の実質的な軍事支出を約3,040億〜3,770億ドルと推計し、北京が公表した約2,310億ドルを32〜63%上回る可能性を示した。
この推計には人民武装警察、地方の治安支出、退役軍人関連費用、動員活動、国防関連研究開発、設備投資などが含まれている。
なお、SIPRIの3,360億ドルは2025年の推計、公式の1兆9,100億元は2026年の予算であり、対象年も異なる。両者を同一の数字として扱うことはできない。
中国の軍事費を評価するときは、政府公表額だけでなく、SIPRIのような第三者機関の推計や、推計に含まれる支出項目まで確認することが重要だ。
【人民解放軍の実態】陸軍・海軍・空軍・ロケット軍の実力を分析
中国の軍事力の中核を担うのが、中国人民解放軍(PLA)だ。中国共産党の中央軍事委員会の指導下にあり、陸軍、海軍、空軍、ロケット軍を中心に、宇宙・サイバー・情報支援などの能力を組み合わせた軍事組織を構成している。
陸軍:大規模な地上戦力と機動力を重視中国人民解放軍陸軍は、世界最大級の規模を持つ地上戦力の一つだ。
かつては大量の兵員と戦車を中心とした軍隊という印象が強かったが、現在は機動力、精密火力、通信ネットワーク、無人機との連携を重視する方向に変化している。
主な近代化の対象は、戦車、装甲車、自走砲、ロケット砲、攻撃ヘリコプター、空挺部隊、特殊作戦部隊などだ。
台湾を想定した軍事シナリオでは、陸軍の水陸両用部隊や空挺部隊、海軍陸戦隊などの連携が重要になる。米国防総省の報告書でも、台湾への軍事作戦を考慮した地上部隊の配置や水陸両用能力の強化が指摘されている。
海軍:福建艦の就役で空母3隻体制へ中国海軍は、近代化が特に目立つ分野だ。艦艇の建造能力を背景に、駆逐艦、フリゲート、潜水艦、揚陸艦、空母などを継続的に増強してきた。
注目を集めたのが、国産空母福建艦(003型空母)だ。
中国国防部系の公式発表によると、福建艦は2025年11月5日に正式就役した。満載排水量は8万トンを超え、電磁式カタパルトを搭載する中国初の空母となった。
従来の遼寧艦、山東艦と合わせ、中国は空母3隻体制に入った。
電磁式カタパルトは、艦載機を発艦させる際の運用上の選択肢を広げる技術だ。戦闘機だけでなく、早期警戒機などの大型航空機を運用する能力にも関係する。
福建艦の艦載機としては、J-35ステルス戦闘機、J-15T、電子戦型のJ-15D、KJ-600早期警戒機などが想定されている。
ただし、空母の就役と、空母航空団を含む実戦的な運用能力の完成は別問題だ。発着艦訓練、整備、護衛艦との連携、補給、長期間の洋上活動などを積み重ねる必要がある。
空軍:J-20ステルス戦闘機が象徴する技術力中国空軍は、旧式機への依存を減らし、ステルス戦闘機や高性能レーダー、空中警戒管制機、無人機などを組み合わせた航空戦力の構築を進めている。
その代表的な機体がJ-20(殲-20)だ。中国が開発した第5世代ステルス戦闘機で、レーダーによる探知を難しくする設計や高度な航空電子機器を特徴としている。
J-20は、制空任務や長距離での航空作戦などに関係する重要な装備だ。米国防総省の2025年報告書も、J-20やJ-16などの高度な航空機が増加していることを指摘している。
また、福建艦の艦載機候補であるJ-35は、空母航空戦力の近代化を象徴する機体だ。陸上基地を中心に運用されるJ-20と、空母運用を視野に入れたJ-35では、求められる役割や運用環境が異なる。
中国空軍の強みは、戦闘機の開発だけではない。早期警戒管制機、空中給油機、電子戦機、無人航空機を含めた航空作戦全体の能力を高めている点にもある。
ロケット軍:通常ミサイルから核抑止まで担う中国人民解放軍ロケット軍は、弾道ミサイルや巡航ミサイルなどを運用する戦略的な軍事組織だ。
その役割は、核抑止だけに限らない。通常弾頭を搭載したミサイルによって、地域的な軍事バランスに影響を及ぼす能力も持つ。
代表的なミサイルには、次のようなものがある。
- DF-17:極超音速滑空体を組み合わせた中距離ミサイルシステム。
- DF-21D:対艦弾道ミサイルとして知られるシステム。
- DF-26:中距離弾道ミサイル。通常・核の双方に関係する能力を持つ。
- DF-41:長距離の大陸間弾道ミサイル。
これらのミサイル戦力は、米軍の空母や前方展開基地などの行動を制約する能力、いわゆる接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略と関係している。
CSISのミサイル脅威プロジェクトは2026年3月、中国が弾道ミサイル、巡航ミサイル、極超音速兵器などを含む高度なミサイル体系を構築していると分析した。
中国の核戦力と核兵器保有数核戦力も中国の軍事力を評価するうえで欠かせない要素だ。
SIPRIの2026年版年鑑によれば、2026年1月時点で中国の核弾頭保有数は約620発と推計されている。このうち配備済みと分類されるものは約34発で、残りは非配備の備蓄に分類されている。
この620発という数字は、中国政府が公式に公表した確定値ではなく、公開情報に基づく専門機関の推計である。
米国防総省の2025年報告書も、中国の核弾頭備蓄が2024年末までに600発台前半に達したと評価している。生産ペースには以前と比べて減速がみられたものの、同報告書は2030年までに1,000発を超える可能性を指摘した。
中国は陸上配備型ミサイルだけでなく、潜水艦発射弾道ミサイルや核搭載能力を持つ航空戦力の近代化も進めている。核戦力の規模と構成が変化すれば、アメリカやロシアを含む国際的な核抑止のバランスにも影響する。
【米国・日本と徹底比較】中国の軍事力はどこが強いのか
中国とアメリカ、日本を比較すると、軍事費や兵力の規模だけでは見えてこない違いが浮かび上がる。
アメリカは世界規模の展開能力、中国は東アジア周辺での戦力集中、日本は海空防衛と同盟による抑止力に特徴がある。
3カ国の軍事力・予算・主要組織の比較| 対象・組織 | 2026年の評価・関連データ | 主な能力・役割 | 中国との関係・比較ポイント |
|---|---|---|---|
| アメリカ | GFP世界1位。SIPRIの2025年軍事支出は9,540億ドル | 世界規模の軍事展開、空母、戦略爆撃機、核戦力、同盟網 | 総合的な軍事力と世界規模の兵站で中国を上回る |
| 中国 | GFP世界3位。SIPRIの2025年推計は3,360億ドル。2026年公式中央国防予算は1兆9,100億元 | 大規模な陸海空戦力、ミサイル、核抑止、国内造船産業 | 東アジア周辺での戦力集中とミサイル能力が強み |
| 日本 | GFP世界7位。SIPRIの2025年軍事支出は622億ドル。2026年度防衛関係費は8兆8,093億円 | 海上・航空防衛、対潜水艦戦、ミサイル防衛、日米同盟 | 予算規模では中国に及ばないが、地理的条件と同盟が重要 |
| 人民解放軍陸軍 | 中央軍事委員会の指揮下 | 戦車、装甲車、砲兵、水陸両用部隊、空挺部隊 | 台湾周辺の地上作戦や本土防衛を担う |
| 人民解放軍海軍 | 空母3隻体制 | 福建艦、駆逐艦、潜水艦、揚陸艦 | 東シナ海、南シナ海、西太平洋での海上活動を拡大 |
| 人民解放軍空軍 | J-20などの近代化を推進 | ステルス戦闘機、早期警戒管制機、無人機 | 制空能力と遠距離航空作戦能力を強化 |
| 人民解放軍ロケット軍 | 核・通常ミサイル戦力を保有 | DF-17、DF-21、DF-26、DF-41など | 地域的な抑止と米軍の介入を制約する能力に関係 |
※軍事費はSIPRIの2025年推計と各国の2026年公式予算を区別して掲載。GFPの順位は通常戦力を中心とした独自評価であり、実戦能力の絶対的な順位ではない。
アメリカとの比較:中国が優位になり得る地域はどこかアメリカと中国の軍事費を比較すると、SIPRIの2025年推計ではアメリカが約9,540億ドル、中国が約3,360億ドル。アメリカは中国の約2.8倍の軍事支出を持つ。
アメリカの優位性は、単純な予算額だけではない。原子力空母、長距離爆撃機、戦略潜水艦、海外基地、同盟国との共同作戦などを組み合わせられる点にある。
しかし、中国本土に近い東アジアでは事情が異なる。中国は陸上基地から戦闘機やミサイルを運用できるうえ、沿岸部に海軍・空軍の拠点を集中させている。
アメリカが遠方から戦力を移動させる必要がある地域では、中国側が地理的な条件を利用できる。このため、世界規模の軍事力ではアメリカが優位でも、台湾海峡周辺の局地的な軍事バランスは別の評価が必要になる。
日本との比較:中国の軍事力は何倍なのか日本との比較では、まず予算の違いが目立つ。
SIPRIの2025年推計では、中国の軍事支出は日本の約5.4倍だ。中国は広大な国土と長い海岸線を持ち、陸海空の全領域で軍事力を整備しているため、支出規模にも大きな差が生じている。
一方、日本の防衛力は単純な兵器の保有数だけでは評価できない。海上自衛隊の対潜水艦戦能力、航空自衛隊の防空能力、南西諸島の防衛体制、アメリカとの共同運用が重要な要素となる。
防衛省の令和8年版防衛白書によると、2026年度の防衛力整備計画対象経費は8兆8,093億円。前年度から3.9%増加した。
日本が重視しているのは、スタンド・オフ防衛能力や無人アセットの活用などを含む防衛力の強化だ。中国と同じ規模の軍隊を持つことではなく、周辺海空域での抑止力を高め、日米同盟を通じて地域の安全保障を維持することが基本となる。
したがって、中国の軍事力が日本を大きく上回るという評価と、日本が防衛能力を持たないという評価は、まったく別の話である。
【台湾有事の現実】中国の軍事力が台湾海峡と日本に及ぼす影響
中国の軍事力を考えるうえで、最も重要な地域的な焦点の一つが台湾海峡だ。
中国政府は台湾を自国の一部と位置づけ、統一を国家的な目標としている。一方、台湾は独自の政府と軍を持ち、現状の維持を重視している。この政治的な対立に、中国の軍事的な近代化が重なっている。
台湾周辺で増加する中国軍の活動防衛省の令和8年版防衛白書は、台湾周辺における中国軍の活動が2025年も活発化したと分析している。
台湾当局の発表を引用した同白書によると、台湾周辺の防空識別圏(ADIZ)への中国軍機の進入は、2025年に延べ3,700機以上に達した。また、台湾周辺海域で確認された中国艦艇は約2,600隻だった。
ここでいうADIZへの進入は、台湾の領空への侵犯と同じ意味ではない。防空識別圏は航空機の識別や監視を目的とする区域であり、領空とは法的な位置づけが異なる。
それでも、軍用機や艦艇が継続的に周辺で活動する状況は、台湾側の警戒監視や防衛運用に負担を与える。
中国軍は2025年4月や12月にも台湾周辺で軍事演習を実施した。防衛白書は、こうした演習について、台湾の封鎖に関連する行動や実戦能力の向上を意識した活動が含まれると分析している。
台湾有事で中国が持つ軍事的な強み中国が台湾周辺で大きな軍事的影響力を持つ理由は、陸海空の戦力を比較的近い地域に集中できることだ。
陸上基地から航空機を運用できるほか、海軍艦艇やミサイル戦力を組み合わせることで、台湾周辺の軍事バランスに強い圧力をかけられる。
また、中国海警局などの準軍事的な組織を含む活動も重要になっている。軍隊による直接的な武力行使だけでなく、海警船を通じた圧力など、いわゆるグレーゾーンの活動が地域の緊張を高める要因となる。
防衛省は、中国が海警船の役割を重視し、台湾周辺での活動を通じて軍事的な圧力を常態化させようとしている可能性を指摘している。
中国が軍事力で台湾を必ず制圧できるわけではない中国の軍事力が大きいことと、台湾への軍事作戦が確実に成功することは同義ではない。
台湾海峡を越える大規模な軍事作戦には、航空・海上戦力だけでなく、輸送、補給、部隊の統合運用、継続的な兵站など、極めて多くの条件が必要になる。
島への上陸作戦は、通常の陸上戦とは異なる難しさを持つ。天候や海象、台湾側の防衛能力、国際社会の反応など、複数の要素が結果を左右する。
加えて、アメリカの関与や日本を含む周辺国の対応によって、軍事的・経済的なコストが大きく変わる可能性がある。
米国防総省の2025年報告書も、中国指導部が台湾に対する軍事的な選択肢を検討している一方、アメリカの関与を受けながら台湾を確実に占領できるかについては、不確実性が残ると評価している。
日本への影響は台湾海峡だけにとどまらない台湾海峡の緊張は、日本の安全保障とも直接結びついている。
台湾は沖縄県の与那国島から近い位置にあり、台湾周辺で大規模な軍事的緊張が発生すれば、南西諸島周辺の海空域にも影響が及ぶ可能性がある。
防衛省の令和8年版防衛白書は、2025年に中国空母が太平洋上で活動を拡大し、空母による太平洋上の発着艦回数が年間1,400回を超えたと説明している。
また、同年6月には空母2隻の太平洋上での活動が確認され、12月には沖縄本島東方から奄美大島東方にかけて空母が活動した。
中国軍機による自衛隊機への特異な接近や、約30分にわたる断続的なレーダー照射も報告されている。こうした事案は、偶発的な衝突や誤認による危機拡大を防ぐための連絡体制の重要性を浮き彫りにする。
日本にとって台湾海峡の安定は、シーレーンの安全、エネルギー輸送、地域経済、南西諸島の防衛に関係する問題だ。
【2035年の軍事近代化】中国の強さを左右する課題と今後の展望
中国の軍事近代化には、明確な長期目標が設定されている。習近平政権は2027年、2035年、2049年という節目を意識しながら、人民解放軍の組織や装備を改革している。
2027年・2035年・2049年の目標米国防総省の2025年中国軍事力報告書は、中国の軍事近代化に関する主な目標を整理している。
- 2027年:機械化・情報化・智能化の一体的な発展を加速させ、軍の組織、装備、理論、人的能力を強化する。
- 2035年:軍事理論、組織構造、軍人、兵器・装備などの近代化を基本的に完成させる。
- 2049年:建国100周年に向けて、世界水準の軍隊を構築するという長期的な構想を掲げる。
特に2035年は、中国の軍事力を評価するうえで重要な節目だ。
中国は陸海空の装備を新しくするだけでなく、宇宙、サイバー、人工知能、無人システム、情報ネットワークを統合した軍隊を目指している。
その背景には、現代の軍事作戦では個々の兵器の性能だけでなく、情報収集から指揮、通信、部隊運用までを連携させる能力が重要になっているという事情がある。
中国軍の弱点として指摘される腐敗と実戦経験中国軍には大きな予算と先端装備がある一方、課題も残されている。
その一つが軍内部の腐敗問題だ。
米国防総省の2025年報告書によれば、人民解放軍では複数の軍種にまたがる汚職調査が続き、数十人の将官が職を失った。軍事装備の調達や防衛産業の幹部にも調査が及んでいる。
同報告書は、こうした問題が短期的には軍の作戦遂行能力を損なう可能性がある一方、長期的には組織改革につながる可能性も指摘している。
もう一つの課題は、大規模な現代戦における実戦経験だ。
中国軍は大規模な演習や共同訓練を重ねているが、先進的な装備を実際の戦場で統合運用する経験には限界がある。特に複数の軍種が参加する作戦では、通信、指揮系統、情報共有、補給などの能力が問われる。
装備が新しいことと、それを使って長期間にわたる複雑な作戦を遂行できることは別の問題である。
【プロの結論】中国の軍事力を評価するための4つの判断基準中国の軍事力を正しく理解するには、単純な順位や兵器の保有数だけで判断しないことが大切だ。特に次の4点が重要になる。
1.軍事費の実態を確認する
公式予算とSIPRIなどの推計を区別する。公表額だけでは研究開発や関連支出を含む軍事投資の全体像が見えにくい。
2.兵器の保有数と実際の運用能力を分ける
空母の就役、ステルス戦闘機の配備、ミサイルの開発は重要な進歩だが、整備や訓練、補給、部隊間の連携まで完成して初めて実戦的な能力となる。
3.世界全体と東アジアの軍事バランスを区別する
アメリカは世界規模の展開能力で優位に立つ一方、中国は自国周辺での戦力集中に強みを持つ。どの地域を想定するかによって、軍事的な評価は変わる。
4.軍事力の増強が地域の安定に与える影響を考える
台湾海峡、東シナ海、南シナ海での軍事活動は、日本の安全保障や国際物流にも関係する。軍事力の増大だけでなく、偶発的な衝突を防ぐ外交・危機管理体制も重要だ。
中国はすでに世界有数の軍事大国であり、2035年に向けてさらなる能力向上を目指している。しかし、軍事費、装備の性能、部隊の練度、実戦経験、同盟関係は、それぞれ異なる尺度で評価する必要がある。
【中国の軍事力】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:中国の軍事力は2026年に世界何位ですか?
A1:Global Firepowerの2026年軍事力ランキングでは、145カ国中3位です。アメリカが1位、ロシアが2位、日本は7位となっています。
Q2:中国の2026年の国防費はいくらですか?
A2:中国の2026年公式国防支出は、中央政府ベースで約1兆9,100億元です。前年比7%増となっています。なお、SIPRIが推計した2025年の軍事支出は約3,360億ドルです。
Q3:中国の核兵器は何発ありますか?
A3:SIPRIの2026年版年鑑では、2026年1月時点の中国の核弾頭保有数を約620発と推計しています。中国政府が公式に公表した確定値ではありません。
Q4:中国の軍事力はアメリカより強いですか?
A4:世界規模の軍事展開能力や総合的な兵站、同盟網ではアメリカが優位です。一方、中国は台湾海峡や東シナ海など、自国周辺での戦力集中に強みを持っています。
Q5:中国の軍事力は日本より強いですか?
A5:軍事費や陸海空の戦力規模では中国が大きく上回ります。ただし、日本には海上・航空防衛能力や日米同盟があり、単純な兵器数だけで防衛能力を判断することはできません。
Q6:中国は2035年までに軍事大国として完成しますか?
A6:中国は2035年までに国防と軍隊の近代化を基本的に完成させる目標を掲げています。ただし、技術開発、軍内部の腐敗、指揮能力、経済状況などの要因によって、実際の達成度は変わります。
まとめ:中国の軍事力は世界トップクラス、2035年までの動向が焦点
2026年の中国は、Global Firepowerの軍事力ランキングで世界3位、SIPRIの2025年軍事支出では世界2位という、極めて大きな軍事力を持つ国だ。
約1兆9,100億元の2026年公式国防予算を背景に、人民解放軍は陸軍、海軍、空軍、ロケット軍の各分野で近代化を進めている。福建艦の就役、J-20ステルス戦闘機、極超音速兵器を含むミサイル体系、約620発と推計される核戦力は、その象徴といえる。
一方、アメリカとの世界規模の軍事力の差、軍内部の腐敗、実戦経験、統合作戦能力など、解決すべき課題も残されている。
日本にとって特に重要なのは、台湾海峡と東シナ海をめぐる動向だ。中国の軍事力は日本周辺の安全保障環境に直接影響を与えており、今後も防衛力の整備や日米同盟、地域の外交的な安定が重要になる。
中国の軍事力を評価する際は、世界ランキングだけでなく、国防費の算定方法、実際の装備運用能力、地理的条件、核戦力、地域情勢を総合的に見る必要がある。
2035年の近代化目標に向けて中国軍がどこまで能力を高めるのか。それが今後のアジア太平洋地域、そして日本の安全保障を左右する大きな焦点となる。
主な参照資料・データ: SIPRI「Trends in World Military Expenditure, 2025」「SIPRI Yearbook 2026」、中国国防部の2026年国防支出発表、米国防総省「2025 China Military Power Report」、防衛省「令和8年版防衛白書」、Global Firepower 2026、CSIS Missile Threat、Federation of American Scientistsの核戦力推計。