2026年の世界選手権に向けた男女日本代表は、JAFAが7月3日に正式発表した。男子は12人と補欠2人、女子は14人(大会登録12人、補欠2人)という編成だ。
ここで区別しておきたいのが、4月に発表されたオリンピック強化指定選手と、7月に発表された世界選手権の日本代表メンバーである。4月の強化指定選手は男子24人・女子23人で、五輪を見据えた強化対象者のリスト。全員が世界選手権に出場したわけではない。
以下が、JAFAの2026年7月3日付発表に掲載された世界選手権代表の一覧だ。所属は発表時点のものとなる。
男子日本代表選手一覧2026年IFAF世界選手権・大会代表
- 岩井零(日本協会)
- 谷口雄仁(東京ガスクリエイターズ)
- 松尾良知(FFFC川崎フロンティアーズ)
- 内田大喜(エレコム神戸ファイニーズ)
- 鈴木晴貴(日本協会)
- 植松遼平(千里山ブラックジャガーズ)
- 奥村倖大(立命館大学)
- 奥田凌大(富士通フロンティアーズ)
- 西田健人(パナソニックインパルス)
- ブレナン翼(オービックシーガルズ)
- 川崎航(慶應義塾大学)
- 松井理己(富士通フロンティアーズ)
男子補欠
- 森凜太朗(FFFC川崎フロンティアーズ)
- 大隅俊輝(FFFC川崎フロンティアーズ)
男子は、アメリカンフットボールのXリーグで活動する選手、大学で競技に取り組む選手、フラッグフットボールを主戦場とする選手など、多様なバックグラウンドを持つメンバーで構成された。
女子日本代表選手一覧2026年IFAF世界選手権・選出メンバー14人
- 佐藤由樹(関西アイリス)
- 山本深由奈(千里山ブラックジャガーズレディース)
- 金谷明咲妃(千里山ブラックジャガーズレディース)
- 近江佑璃夏(東京ヴェルディ・ローゼス)
- 渋谷そらの(シグナス・トウキョウ)
- 中畑友里(京都ジュベナイルズ)
- 磐田千紘(カンザスウェズリアン大学)
- 渡邉結(東京ヴェルディ・ローゼス)
- 下平佳奈(東京ヴェルディ・ローゼス)
- 仲埜心葉(千里山ブラックジャガーズレディース)
- 三宅萌(関西アイリス)
- 樋口智子(千里山ブラックジャガーズレディース)
- 八木智代(東京ヴェルディ・ローゼス)
- 川口友香(名古屋フォッシル)
女子は14人が選出され、そのうち12人が大会登録、2人が補欠となる編成だった。代表発表では、近江佑璃夏や磐田千紘といった経験豊富な選手に加え、渋谷そらの、仲埜心葉、渡邉結の3人が初めて代表入りしたことも紹介されている。
なお、上記の14人全員が大会の登録選手という意味ではない。JAFAの発表は補欠2人を含む選出メンバーを掲載しているが、個別の補欠区分は一覧上で明示されていない。
【世界ランキングと世界選手権の結果】男子6位・女子10位の背景

2026年の世界選手権を評価する際には、IFAFの世界ランキングと大会最終順位を分けて考える必要がある。
IFAF公式サイトに掲載されている2025年版フラッグフットボール世界ランキングでは、日本は男子7位、女子5位。2026年7月のJAFAの発表でも、この順位が日本代表の世界ランキングとして紹介されていた。
つまり、世界選手権での男子6位は事前ランキングを上回る成績だった一方、女子10位は事前ランキングを下回る結果となった。なお、IFAFのランキングは国際大会の結果を基に年次更新されるため、2025年版の順位を2026年大会後の最新順位と混同しないことが大切だ。
日本代表の世界ランキングと大会順位出典:IFAF公式ランキング、JAFAの世界選手権結果発表。
男子日本代表はグループBを1位で突破男子はグループBでカナダ、オーストリア、ナイジェリアと対戦した。
- カナダ戦:37-28で勝利
- オーストリア戦:43-42で勝利
- ナイジェリア戦:1-0の不戦勝
ナイジェリアは査証を取得できず大会を辞退したため、日本は不戦勝を含む3勝でグループBを首位通過。特に注目されたのが、世界ランキング2位のオーストリアを43-42で破った試合だ。
準々決勝では世界ランキング1位の米国と対戦。日本は前半を30-23とリードして折り返したが、後半に逆転され、最終スコア38-45で敗れた。
その後の5~8位決定戦ではパナマを42-38で撃破。しかし、5位決定戦で米領サモアに38-48で敗れ、最終順位は6位となった。
女子日本代表は10位で大会を終了女子はグループDに入り、ブラジル、パナマ、カナダと対戦した。
- ブラジル戦:32-0で勝利
- パナマ戦:13-37で敗戦
- カナダ戦:20-34で敗戦
初戦のブラジル戦では、QB山本深由奈からWR近江佑璃夏へのタッチダウンパスが決まり、さらにQB磐田千紘も2本のタッチダウンパスを成功させた。守備陣も後半に3つのインターセプトを奪い、完封勝利を収めている。
しかし、続くパナマ戦では相手の攻撃を止められず、カナダ戦にも敗れた。順位決定戦ではフランスに40-21、イタリアに41-24で連勝したものの、9位決定戦で中国に14-27で敗戦。最終順位は10位だった。
男女の最終順位を分けた要点は、単純な得点力だけではない。男子は強豪オーストリアやカナダを破り、米国にも前半リードする競争力を示した。一方、女子は初戦で完封勝利を挙げたものの、グループリーグでの連敗が上位進出を難しくした。世界選手権の結果は、事前のランキングだけでは測れない試合ごとの対応力を浮き彫りにした。
【注目選手を解説】谷口雄仁・松尾良知・近江佑璃夏・磐田千紘
2026年の日本代表を語るうえで、男女それぞれの攻撃を支えた選手にも注目したい。
谷口雄仁:男子日本代表の司令塔QB・東京ガスクリエイターズ
谷口雄仁は男子日本代表のクォーターバック(QB)を務める選手だ。攻撃の起点としてパスを組み立て、味方の動きや相手守備の配置を読みながらプレーを選択する役割を担う。
2026年世界選手権では、グループリーグのカナダ戦で内田大喜へのタッチダウンパスを成功させた。5位決定戦でもパスによる攻撃でチームの反撃を支えたとJAFAが報告している。
米国との準々決勝で前半30点を奪った攻撃力は、日本男子の強みを示すものだった。次の大陸選手権では、強豪との接戦を最後まで勝ち切るための司令塔としての働きが注目される。
松尾良知:多彩な攻撃を生み出すWRWR/DB・FFFC川崎フロンティアーズ
松尾良知は、レシーバーとディフェンスバックの役割を担う選手。一般的なWRの役割にとどまらず、試合展開に応じた多彩な攻撃参加が特徴だ。
米国との準々決勝では、松尾のパスを効果的に使い、奥村倖大と内田大喜がそれぞれ2本のタッチダウンパスをキャッチした。5位決定戦でも松尾のランが攻撃の選択肢となった。
JAFAの大会報告でも、谷口と並んで日本男子の攻撃を支えた選手として紹介されている。
近江佑璃夏:スピードとキャッチ力が武器の女子代表WR/DB・東京ヴェルディ・ローゼス
近江佑璃夏は女子日本代表の中心選手の一人。JAFAが2026年8月4日に公開した大会直前インタビューでは、自身の強みとしてスピードとキャッチ力を挙げている。
ブラジル戦では山本深由奈からのタッチダウンパスを複数回キャッチ。初戦の完封勝利に大きく貢献した。
近江は2021年の世界選手権から日本代表として活動してきた経験も持つ。大会後のJAFAの帰国報告では、優勝したカナダとの試合について、日本が先制してリードする展開をつくれた一方、最後に勝ち切る力が課題だったと振り返っている。
磐田千紘:米国の大学で経験を積むQBQB・カンザスウェズリアン大学
磐田千紘は、米国のカンザスウェズリアン大学に所属する女子代表QBだ。米国の大学で経験を積みながら、日本代表として国際大会に参加している。
2026年のブラジル戦では2本のタッチダウンパスを決め、攻撃面で存在感を示した。山本深由奈とともにQBとして攻撃を組み立てられることは、女子日本代表にとって選択肢の広さにつながる。
近江のようなWRと、磐田や山本のようなQBの連係は、今後の日本女子の攻撃力を左右する見どころとなる。
【LA28ロサンゼルス五輪の出場条件】日本代表が残す最終予選への道
フラッグフットボールは、2028年のロサンゼルス五輪で初めて正式競技として実施される。男女それぞれ6チームが出場し、合計12チームによる大会となる。
日本は2026年8月の世界選手権で五輪出場権を獲得できなかったが、出場の可能性がなくなったわけではない。残りの枠は2027年の大陸選手権と2028年のオリンピックQシリーズで決まる。
まずは世界選手権で決まった出場国2026年の世界選手権では、開催国の米国を除いた男女各上位2チームが五輪出場権を獲得した。
- 男子:イタリア、カナダ
- 女子:カナダ、メキシコ
男子は米国が金メダル、イタリアが銀メダル、カナダが銅メダル。女子はカナダが優勝、米国が準優勝、メキシコが3位だった。
米国は開催国枠で既に出場が決まっているため、男子ではイタリアとカナダ、女子ではカナダとメキシコが世界選手権での出場権を手にした。
日本代表が進む2027年・2028年の予選スケジュール
2027年:各大陸選手権
日本にとって次の大きな関門
アジアを含む各大陸の選手権で上位2チームに入ることが目標。既に五輪出場権を獲得した国を除き、各大陸から男女各2チーム、合計10チームが最終予選に進む。
2028年6月1日~4日:モントリオール大会
オリンピックQシリーズ第1段階
男女各10チームが出場し、上位2チームずつが五輪出場権を獲得する。
2028年6月8日~11日:オーランド大会
最後の出場権を争う大会
モントリオールで出場権を獲得できなかった男女各8チームが参加し、優勝チームが男女それぞれ最後の1枠を獲得する。
2028年7月:ロサンゼルス五輪
フラッグフットボール初の五輪大会
男女各6チームが出場する歴史的な大会となる。
この仕組みでは、2027年の大陸選手権で優勝すればそのまま五輪出場が決まるわけではない。日本が目指すのは、まず大陸選手権で最終予選への出場権を獲得し、次にモントリオールまたはオーランドで五輪出場権を手にすることだ。
開催地と日程については、JAFAが2026年7月9日に公表。国際オリンピック委員会(IOC)も、モントリオールとオーランドをフラッグフットボールのオリンピックQシリーズ開催地として発表している。
世界ランキング7位・5位なら五輪に出られるのか?ここは誤解されやすいポイントだ。
IFAF世界ランキングの順位だけで、LA28の出場権が決まるわけではない。五輪出場権を左右するのは、開催国枠、世界選手権の成績、そして大陸選手権を経て進むオリンピックQシリーズの結果である。
男子7位、女子5位というランキングは、国際競争力を把握するための指標にはなる。しかし、ランキング上位だからといって最終予選を免除されるわけではない。日本は男女とも大陸選手権で結果を残す必要がある。
【プロの結論】男子6位・女子10位から日本代表が強化すべきこと
2026年の世界選手権は、日本代表にとって単なる順位争いではなかった。フラッグフットボールが初めて五輪競技となるLA28への出場権を直接争う大会だったからだ。
男子6位という結果には、世界ランキング上位国と互角に渡り合える力が表れている。特にオーストリア戦の1点差勝利、米国戦の前半リードは、世界トップクラスとの距離が決して大きくないことを示した。
ただし、米国との準々決勝では後半に逆転を許し、米領サモアとの5位決定戦でも敗れた。男子監督の岩井歩氏は大会後、強豪国との試合を通じた成長を評価する一方、接戦を重ねていく必要性を指摘している。
女子は、世界ランキング5位という事前評価に対して10位という結果だった。ブラジルを32-0で破る攻撃力と守備力を見せた一方、パナマやカナダとの試合では課題が残った。女子監督の延原典和氏も、これまでの強化を継続しながら、結果につながらなかった部分には新たなアプローチが必要との考えを示している。
今後の日本代表を評価する3つの判断基準1. 強豪国との接戦を勝ち切れるか
男子の米国戦や女子のカナダ戦は、世界のトップレベルに対してどこまで戦えるかを示した。次の大会では、前半の好内容を試合終了まで維持できるかが大きな評価ポイントになる。
2. 攻守の選手層を広げられるか
2026年4月時点で、JAFAは男子24人・女子23人をオリンピック強化指定選手に選出している。世界選手権の登録メンバーだけでなく、強化指定選手を含めた競争が続くことで、ポジションごとの選択肢を増やすことが期待される。
3. 大陸選手権を見据えた継続的な強化ができるか
世界選手権での順位が確定した後も、五輪への挑戦は続く。2027年の大陸選手権は、単に国際経験を積む場ではなく、2028年の最終予選に進めるかを決める重要な大会だ。
男子主将の植松遼平は、JAFAの帰国時の取材で、次の大陸選手権や最終予選に向けて、試合を勝ち切れるチームを目指す考えを語った。
来年の大陸選手権や再来年の最終予選では、10試合あったら10試合勝てるチームにしていきたい。 男子主将・植松遼平/JAFA掲載の帰国時コメントより
この言葉が示すのは、世界ランキングや一度の大会順位だけではなく、連戦の中で安定して勝ち続ける力を身につける必要性だ。2027年の予選に向けて、選手個人の能力だけでなく、チーム全体の完成度が問われる。
【フラッグフットボール日本代表に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:2026年のフラッグフットボール日本代表の世界ランキングは何位?
A1:IFAF公式の2025年版ランキングでは、男子が7位、女子が5位。2026年7月のJAFA発表でもこの順位が紹介されている。世界選手権の最終順位は男子6位、女子10位だった。
Q2:2026年の世界選手権で日本代表は五輪出場権を獲得した?
A2:獲得していない。男子は6位、女子は10位で大会を終えた。残る出場枠を目指し、2027年の大陸選手権から最終予選への進出を目指すことになる。
Q3:谷口雄仁・松尾良知はどんな選手?
A3:谷口雄仁は東京ガスクリエイターズ所属の男子日本代表QB、松尾良知はFFFC川崎フロンティアーズ所属のWR/DB。2026年世界選手権では、2人とも男子の攻撃を支える活躍を見せた。
Q4:女子日本代表の注目選手は誰?
A4:近江佑璃夏と磐田千紘が注目選手。近江は東京ヴェルディ・ローゼス所属のWR/DBで、スピードとキャッチ力が持ち味。磐田はカンザスウェズリアン大学所属のQBで、2026年大会のブラジル戦では2本のタッチダウンパスを決めた。
Q5:2028年ロサンゼルス五輪の最終予選はいつ、どこで開催される?
A5:2028年6月1日~4日にカナダのモントリオール、6月8日~11日に米国フロリダ州のオーランドで開催予定。モントリオールで男女各2チーム、オーランドで男女各1チームが出場権を獲得する。
Q6:2026年4月のオリンピック強化指定選手は全員日本代表なの?
A6:全員が世界選手権の日本代表というわけではない。4月の強化指定選手は男子24人・女子23人で、五輪を見据えた強化対象者。世界選手権の正式な代表メンバーは、JAFAが7月3日に別途発表した。
まとめ:フラッグフットボール日本代表のLA28挑戦はまだ続く
2026年のフラッグフットボール世界選手権で、日本代表は男子6位、女子10位という結果を残した。男子は世界ランキング上位のオーストリアを破り、米国とも接戦を演じた。女子はブラジル戦の完封勝利など、攻守の強さを示す場面があった一方、上位進出には課題を残した。
IFAF公式の2025年版世界ランキングは男子7位、女子5位。大会順位とランキングの違いを理解することが、日本代表の現在地を正確に把握する第一歩となる。
そして、最も重要なのは、2026年の結果だけで五輪出場の可能性が決まったわけではないことだ。2027年の大陸選手権、2028年6月のモントリオールとオーランドでのオリンピックQシリーズが残されている。
谷口雄仁、松尾良知、近江佑璃夏、磐田千紘らをはじめとする選手たちの成長と、新たな代表争いに注目したい。2028年ロサンゼルス五輪で男女そろって日本代表が戦う姿を実現できるか。次の2年間が、日本フラッグフットボール界にとって大きな勝負となる。
主な情報源
- 公益社団法人日本アメリカンフットボール協会(JAFA):2026年代表選手発表、世界選手権結果、帰国時コメント、五輪予選情報
- 国際アメリカンフットボール連盟(IFAF):2025年公式世界ランキング、国際大会情報
- 国際オリンピック委員会(IOC):LA28オリンピックQシリーズ開催情報・競技日程