ヨウ素は不足を避けるだけでなく、摂り過ぎにも気をつけたい栄養素です。
厚生労働省が公表した「日本人の食事摂取基準(2025年版)」は、2025年度から2029年度までの5年間に使用される基準です。ヨウ素についても、年齢別に推奨量と耐容上限量が設定されています。
成人のヨウ素推奨量は1日140μg18歳以上の成人では、男女ともに以下の基準です。
1日の推奨量140μg

男女共通
1日の耐容上限量3,000μg
男女共通
推定平均必要量
100μg/日
推奨量
140μg/日
耐容上限量
3,000μg/日
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」18歳以上。
推奨量とは、対象集団のほとんどの人(97〜98%)が必要量を満たすと推定される摂取量です。一方、耐容上限量は、習慣的に摂取しても健康障害のリスクがないとみなされる上限です。
つまり、3,000μgを目指して食べる必要はありません。140μgを満たすことを基本に、過剰摂取を避ける考え方が大切です。
年齢によって推奨量と上限量は変わる| 年齢 | 推奨量(男女共通) | 耐容上限量 |
|---|---|---|
| 1〜2歳 | 50μg | 600μg |
| 3〜5歳 | 60μg | 900μg |
| 6〜7歳 | 75μg | 1,200μg |
| 8〜9歳 | 90μg | 1,500μg |
| 10〜11歳 | 110μg | 2,000μg |
| 12〜14歳 | 140μg | 2,500μg |
| 15〜17歳 | 140μg | 3,000μg |
| 18歳以上 | 140μg | 3,000μg |
乳児については推奨量ではなく目安量が設定されており、0〜5か月は100μg、6〜11か月は130μgです。
妊娠中・授乳中は別の基準に注意妊娠中と授乳中は、通常の成人女性とは追加量が異なります。
- 妊婦:推奨量の付加量は110μg/日
- 授乳婦:推奨量の付加量は140μg/日
- 妊婦・授乳婦の耐容上限量:2,000μg/日
妊娠中は胎児の発育、授乳中は母乳へのヨウ素移行も考慮する必要があります。海藻類を健康によい食品として積極的に大量摂取するのではなく、通常の食事を基本に医師や管理栄養士に相談してください。
【過剰摂取】ヨウ素の摂り過ぎは甲状腺にどんな影響を与える?
ヨウ素の摂取で特に気をつけたいのが、甲状腺への影響です。
ヨウ素は甲状腺ホルモンを作るために必要な成分です。しかし、必要量を超えて大量に摂り続けると、甲状腺ホルモンの合成や分泌に異常が生じる場合があります。
ヨウ素が甲状腺ホルモンに関係する理由甲状腺は、喉の前側にある内分泌器官です。
ヨウ素は甲状腺ホルモンであるサイロキシン(T4)やトリヨードサイロニン(T3)の構成成分として使われます。
これらのホルモンは、次のような働きに関係しています。
- 全身のエネルギー代謝の調節
- 細胞の活動や成長
- 神経系の発達
- たんぱく質の合成
- 体温や身体機能の調節
ヨウ素が不足しても、反対に過剰になっても、甲状腺の正常な働きが妨げられる可能性があります。
ヨウ素の過剰摂取で起こり得る健康への影響国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報では、ヨウ素の長期的な過剰摂取によって、以下のような健康障害が起こる可能性が説明されています。
1. 甲状腺機能低下症
ヨウ素の過剰摂取によって甲状腺ホルモンの合成が抑制され、甲状腺機能が低下する場合があります。
主な症状には、疲れやすさ、寒がり、便秘、むくみ、体重増加などがあります。
2. 甲状腺腫
甲状腺が大きくなる状態です。ヨウ素の不足だけでなく、過剰摂取によっても発生する可能性があります。
3. 甲状腺中毒症
甲状腺ホルモンが過剰になる状態です。動悸、頻脈、体重減少、手の震え、発汗増加などがみられることがあります。
また、ヨウ素の摂取量が非常に少ない状態から急激に大量摂取した場合には、甲状腺機能亢進症につながる可能性もあります。
昆布を毎日食べる場合はどうすればよい?昆布そのものだけでなく、昆布だし、昆布茶、昆布の佃煮などを同じ日に重ねて摂取していないか確認することが大切です。
特に気をつけたいのは、健康目的で昆布を大量に食べたり、ヨウ素を含むサプリメントを追加したりする習慣です。
通常の食事で海藻を楽しむことと、ヨウ素を意図的に大量摂取することは別の問題です。
甲状腺疾患の治療中の人や、甲状腺ホルモンに関係する薬を服用している人は、自己判断で海藻の摂取量を大幅に増減させず、主治医に確認してください。
【不足症状】ヨウ素が足りないとどうなる?不足しやすい人の特徴
過剰摂取が注目されがちなヨウ素ですが、不足も健康に影響します。
ヨウ素が不足すると、甲状腺ホルモンを十分に作れなくなる可能性があります。その結果、甲状腺の肥大や甲状腺機能低下などにつながることがあります。
ヨウ素不足で現れる主な症状代表的な影響は次のとおりです。
- 甲状腺の肥大・甲状腺腫
- 甲状腺ホルモンの生成低下
- 疲労感や倦怠感
- 寒がりになる
- 便秘
- 体重増加
- むくみ
- 記憶力や集中力の低下
これらの症状は、ヨウ素不足だけで起こるものではありません。ほかの病気でもみられるため、症状だけで栄養不足と判断することはできません。
特に妊娠中や乳幼児期は、ヨウ素不足による甲状腺ホルモンの生成低下が、胎児や子どもの成長・神経発達に影響する可能性があります。
日本人はヨウ素不足になりやすい?日本は海藻類や魚介類を食べる食文化があり、一般的な食生活ではヨウ素不足が問題になりにくいとされています。
国立健康・栄養研究所も、日本では伝統的な食習慣によってヨウ素摂取量が必要量を上回る傾向を説明しています。
ただし、食生活が極端に偏っている場合や、海藻・魚介類をほとんど食べない場合には、摂取不足の可能性があります。
厚生労働省の2025年版でも、日本人の習慣的なヨウ素摂取量の分布や健康影響について、今後さらにデータを集める必要性が指摘されています。
【適切な摂り方】ヨウ素を過不足なく摂取するための食事のポイント
ヨウ素を適切に摂るためには、昆布だけに頼らず、食品の種類や食べる量を考えることが大切です。
1. 海藻類は種類と量を意識する昆布、ひじき、わかめ、のりは、それぞれヨウ素含有量が異なります。
特に昆布は突出して多いため、毎日の食事に大量に取り入れる必要はありません。
わかめや焼きのりなども含め、さまざまな食品を組み合わせると、特定の食品に偏ることを防げます。
2. 昆布だしや昆布茶の重複に注意するヨウ素の摂取量を考える際には、海藻を食べた量だけでなく、調味料や飲料にも目を向けてください。
例えば、次のような食事が重なるケースです。
- 朝食:昆布だしの味噌汁
- 昼食:昆布茶
- 夕食:昆布の煮物とわかめの味噌汁
それぞれを別の食品として考えてしまうと、1日の総摂取量を把握しにくくなります。
昆布を多く使った料理が重なる日は、ほかの海藻類を控えめにするなど、食事全体で調整するとよいでしょう。
3. ヨウ素サプリメントを安易に追加しない日本では通常の食事からヨウ素を摂取できる機会が多いため、ヨウ素を補う目的だけでサプリメントを追加する必要性は慎重に考えるべきです。
特に昆布由来の濃縮成分を使った商品は、通常の食事とは摂取量が異なる場合があります。
甲状腺に疾患がある人、妊婦、授乳婦は、サプリメントの利用前に医師や管理栄養士に相談してください。
4. 100g当たりの数値ではなく実際の食事量を見る食品成分表の100g当たりの数値は、食品同士を比較するための基準です。
乾燥昆布を100g食べる人は通常ほとんどいません。実際の食事量や調理方法を考慮しなければ、摂取量を正しく評価できません。
また、食品に含まれるヨウ素は、産地などの条件によって変動する場合があります。成分表の数値は標準的な目安として利用してください。
【ヨウ素が多い食品】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ヨウ素が最も多い食品は何ですか?
刻み昆布です。文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」では、可食部100g当たり230,000μgです。まこんぶの乾燥品も200,000μgと非常に多く含まれています。
Q2:ひじきとわかめではどちらがヨウ素を多く含みますか?
乾燥品同士で比較すると、ひじきは45,000μg、わかめは10,000μgで、乾燥ひじきのほうが多い数値です。ただし、ゆでたひじきは960μgとなるため、調理状態をそろえて比較する必要があります。
Q3:焼きのりにもヨウ素は含まれていますか?
含まれています。焼きのりは可食部100g当たり2,100μgです。一般的な1食分として3gを食べた場合、約63μgを摂取する計算になります。
Q4:昆布だしにもヨウ素は含まれていますか?
含まれています。文部科学省の食品成分データベースでは、煮出し昆布だしは100g当たり11,000μg、水出し昆布だしは5,300μgです。液体だから含有量が少ないとは限りません。
Q5:ヨウ素の1日の推奨量と上限量はいくらですか?
2025年版の基準では、18歳以上の男女ともに推奨量は140μg、耐容上限量は3,000μgです。妊婦と授乳婦は耐容上限量が2,000μgに設定されています。
Q6:ヨウ素を摂り過ぎると甲状腺に悪影響がありますか?
あります。長期的な過剰摂取によって、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、甲状腺中毒症などが起こる可能性があります。特に昆布や昆布だしを大量に摂取する習慣には注意が必要です。
まとめ:ヨウ素が多い食品は適量を守り、昆布の重複摂取に注意
ヨウ素が多い食品の中心は、昆布、ひじき、わかめなどの海藻類です。なかでも昆布は含有量が突出しており、昆布だしや昆布茶からも相当量を摂取する可能性があります。
2026年時点で確認できる公的な食品成分データと、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」を照らし合わせると、覚えておきたい基準は次の3点です。
- 成人の推奨量:1日140μg
- 成人の耐容上限量:1日3,000μg
- 妊婦・授乳婦の耐容上限量:1日2,000μg
大切なのは、ヨウ素を多く摂取することではなく、必要量を確保しながら過剰摂取を防ぐことです。
昆布を使った料理を楽しみつつ、ひじき、わかめ、のり、魚介類なども組み合わせ、1日の食事全体でバランスを整えましょう。甲状腺疾患がある場合は、自己判断で食事制限やサプリメントの追加を行わず、医療機関の指導を優先してください。