「努めてまいります」は、今後も努力を続け、目標の達成や課題の改善に向けて取り組む意思を丁寧に伝えるビジネス表現です。上司や取引先への挨拶、ビジネスメール、謝罪文、履歴書など、幅広い場面で使われています。
一方で、「努めてまいります」は正しい敬語なのか、「努めて参ります」と漢字で書いてもよいのか、「務めて」「勤めて」とは何が違うのかなど、表記や使い方に迷う人も少なくありません。特に目上の人に使う場合は、敬語の成り立ちと文章全体のバランスを理解しておく必要があります。
この記事では、2026年時点の文化庁の敬語資料や国語辞典の説明を踏まえ、意味、敬語の仕組み、正しい漢字表記、ビジネスメールの例文、言い換え、謝罪文や履歴書での活用方法まで詳しく解説します。
【意味を正しく理解】「努めてまいります」はどんな場面で使う言葉?

「努めてまいります」とは、これからも努力を続け、目標や課題の実現・解決に向けて取り組んでいきますという意思を表す言葉です。
「努める」は、力を尽くして物事に取り組むことや、目的を達成するために努力することを意味します。
そこに「まいります」を組み合わせることで、単に「努力します」と伝えるよりも、改まった丁寧な印象になります。
例えば、次のような使い方があります。
- 今後もサービスの品質向上に努めてまいります。
- お客様にご満足いただけるよう努めてまいります。
- 皆様のご期待に添えるよう、誠心誠意努めてまいります。
- 業務の効率化と改善に努めてまいります。
いずれも、自分自身や自社が今後も継続して努力する意思を伝えています。
「努めてまいります」は約束や保証と同じ意味ではないここで理解しておきたいのが、「努めてまいります」と「必ず実現いたします」の違いです。
「努めてまいります」は、目標に向かって努力する姿勢を示す言葉です。必ずしも結果を保証する表現ではありません。
例えば、顧客からサービス改善を求められた場合、次の2つにはニュアンスの違いがあります。
- 「サービスの改善に努めてまいります」:改善に向けて継続的に努力する意思を示す。
- 「サービスを改善いたします」:改善を実行する意思をより明確に示す。
実現することが決定している場合には、後者のように具体的な行動を示した方が適切です。
反対に、まだ検討や調整が必要な段階では、「改善に努めてまいります」という表現が自然です。
ビジネスでよく使われる理由この表現がビジネスシーンで重宝される理由は、相手に対する敬意と、自分側の継続的な努力を一つの文章で伝えられるためです。
特に、次のような場面に適しています。
- 新しい部署や職場に着任したとき
- 取引先に今後の方針を伝えるとき
- 顧客から意見や要望を受けたとき
- 業務改善や品質向上を表明するとき
- 失敗やトラブルの再発防止を伝えるとき
ただし、何度も同じ表現を繰り返すと形式的な印象になります。何に対して努力するのかを具体的に添えることが、伝わる文章にするポイントです。
【敬語の仕組みを解説】「努めてまいります」は目上の人にも正しい?
「努める」と「まいります」の組み合わせ「努めてまいります」は、敬語として正しく使える表現です。
構成を分解すると、次のようになります。
1.努める
努力する、力を尽くすという意味を持つ動詞です。
2.まいる
「行く」「来る」の謙譲語である「参る」に由来する表現です。補助動詞として使う場合には、自分の行為を丁重に述べる働きがあります。
3.ます
文末に付く丁寧語です。
文化庁の「敬語の指針」では、敬語を尊敬語、謙譲語Ⅰ、謙譲語Ⅱ(丁重語)、丁寧語、美化語の5種類に分類しています。
このうち「参る」は謙譲語Ⅱ、すなわち丁重語に分類されています。
丁重語とは、自分側の行為や物事を、話や文章の相手に対して丁寧に述べる敬語です。
したがって、「努めてまいります」は、自分の努力を相手に対して改まった形で伝える表現として適切です。
二重敬語ではないの?「努めてまいります」は、二重敬語ではありません。
二重敬語とは、一つの言葉に同じ種類の敬語を重ねることです。
例えば、文化庁が説明する「お読みになられる」は、「お読みになる」という尊敬語に、さらに尊敬語の「れる」を加えた形です。
一方、「努めてまいります」は、通常の動詞「努める」に丁重な表現の「まいる」を組み合わせています。
異なる働きを持つ要素を組み合わせているため、二重敬語には当たりません。
丁寧さを高めるために不自然な敬語を重ねる必要はなく、このまま使用できます。
上司や目上の人に使っても失礼ではない?基本的に問題ありません。
例えば、上司に対する業務報告や異動の挨拶では、次のように使用できます。
- 今後は担当業務への理解をさらに深め、より一層努めてまいります。
- チーム全体の成果につながるよう、日々の業務に努めてまいります。
- ご指導いただいたことを生かし、今後も業務の改善に努めてまいります。
取引先や顧客に対しても使用できます。
ただし、直属の上司との日常的な会話では、少し改まった印象になる場合があります。
普段の会話なら「引き続き努力します」「改善に取り組みます」などでも十分です。
大切なのは、相手との関係性や会話の場面に合わせて敬語の程度を調整することです。
【漢字の違いを徹底比較】「努めて・務めて・勤めて」と「まいります・参ります」
「つとめてまいります」を漢字に変換するとき、特に注意したいのが「努める」「務める」「勤める」の使い分けです。
読み方は同じでも、それぞれ意味が異なります。
「努める」「務める」「勤める」の違い公益財団法人日本漢字能力検定協会の漢字ペディアでは、3つの漢字を次のように区別しています。
「努める」は努力、「務める」は役割、「勤める」は勤務と覚えると区別しやすくなります。
例えば、次の文章を比較してください。
- お客様への対応品質の向上に努めてまいります。
- プロジェクトリーダーを務めてまいります。
- 今後も同じ会社に勤めてまいります。
いずれも文法的には成立しますが、伝えている内容は異なります。
「努めてまいります」を使いたい場面で「務めてまいります」と書くと、努力するという意味が正しく伝わらなくなるため注意しましょう。
「まいります」と「参ります」はどちらが正しい?結論からいうと、どちらも使われますが、文中での役割によって使い分けます。
ひらがなの「まいります」
補助動詞として、前の動詞に続けて使用する場合です。
- 今後も努力してまいります。
- サービスの改善に取り組んでまいります。
- 皆様の期待に応えられるよう精進してまいります。
漢字の「参ります」
「行く」「来る」という具体的な移動を表す動詞として使用する場合です。
- 明日の会議には私が参ります。
- これから本社へ参ります。
- 午後から取引先に参ります。
つまり、今回のキーワードである「努めてまいります」では、ひらがな表記が自然です。
文化庁の「公用文作成の考え方」など、公的な文章作成の指針を参考にすると、補助動詞と本来の動詞を区別して表記することが、読みやすい文章につながります。
なお、公用文の表記基準が民間企業のすべての文章に一律に適用されるわけではありません。企業独自の表記ルールがある場合は、それに合わせるとよいでしょう。
【そのまま使える例文集】ビジネスメール・挨拶での正しい使い方
「努めてまいります」は、前後にどのような言葉を置くかによって、相手に伝わる印象が変わります。
ここでは、実際のビジネスシーンを想定した例文を紹介します。
1.取引先へのビジネスメール新しい取引が始まったときや、今後の協力関係について挨拶するときに適しています。
例文
「このたびはお取引の機会をいただき、誠にありがとうございます。今後とも貴社のご期待に添えるよう、サービスの品質向上に努めてまいります。引き続き、よろしくお願い申し上げます。」
この文章では、感謝を伝えた後に、今後の努力の方向性を示しています。
単に「努めてまいります」と書くよりも、何を改善するのかが明確になります。
2.上司への報告や業務上の挨拶異動や昇進、新しい担当業務を任された際に使えます。
例文
「このたび、新たな業務を担当することになりました。まだ至らない点もございますが、一日も早く業務に慣れ、チームに貢献できるよう努めてまいります。今後ともご指導のほど、よろしくお願いいたします。」
上司に対して、謙虚な姿勢と仕事への意欲を同時に伝えられる文章です。
3.新入社員や転職者の着任挨拶新しい職場で自己紹介をするときにも自然に使えます。
例文
「本日より営業部に配属となりました。これまでの経験を生かしながら、新しい知識や技術を積極的に身につけ、皆様のお役に立てるよう努めてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。」
経験を生かすことと、これから学ぶ姿勢を組み合わせることで、前向きな印象になります。
4.顧客から要望や改善意見を受けたとき顧客への返信では、要望を受け止めたうえで、改善への意思を示すことが大切です。
例文
「貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございます。いただいたご指摘を社内で共有し、今後のサービス改善と品質向上に努めてまいります。引き続き、皆様に安心してご利用いただけるサービスを目指してまいります。」
ただし、顧客から具体的な対応期限を求められている場合は、期限や対応内容も併記する方が親切です。
5.会社の代表挨拶やホームページ企業としての方針を示す文章にも適しています。
例文
「弊社は、お客様との信頼関係を大切にし、より良い商品とサービスの提供に努めてまいります。これからも社会の変化やお客様のニーズに柔軟に対応し、持続的な成長を目指してまいります。」
企業の代表メッセージでは、「努めてまいります」を使うことで、継続的な改善への姿勢を表現できます。
履歴書の志望動機に「努めてまいります」は使える?履歴書でも問題なく使用できます。
特に、志望動機や自己PRの最後に、入社後の意欲を伝える表現として適しています。
ただし、「頑張ります」という気持ちだけでは、採用担当者に具体的な能力や仕事への適性が伝わりません。
これまでの経験やスキルと結び付けて書くことが大切です。
履歴書の例文①:経験を生かす場合
「前職で培った顧客対応の経験を生かし、貴社の営業活動に貢献できるよう努めてまいります。」
履歴書の例文②:未経験の職種に応募する場合
「未経験の分野ではございますが、これまで培ってきたコミュニケーション能力を生かし、必要な知識と技術を積極的に習得することで、一日も早く貴社に貢献できるよう努めてまいります。」
履歴書の例文③:専門スキルをアピールする場合
「これまでの業務で身につけたデータ分析の知識を生かし、業務効率の改善と成果の向上に努めてまいります。」
厚生労働省の「応募書類の作り方」でも、履歴書は採用判断に使われる書類として位置付けられ、読み手に伝わりやすい丁寧な記載が推奨されています。
そのため、意欲を表す言葉だけでなく、過去の経験や入社後に取り組みたい内容を具体的に記載が必要です。
謝罪文で「努めてまいります」を使う場合謝罪文でも使用できます。
特に、ミスやトラブルが発生した後、再発防止や業務改善の意思を伝える際に適しています。
ただし、注意したいのは、謝罪そのものと今後の努力を混同しないことです。
「努めてまいります」と書くだけでは、相手に謝罪したことにはなりません。
基本的には、次の順番で構成すると自然です。
1. 迷惑をかけたことへの謝罪
2. 発生した問題への対応
3. 再発防止策
4. 今後の改善に向けた意思
謝罪文の例文
「このたびは、弊社の不手際によりご迷惑をおかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます。
今回の件を真摯に受け止め、発生原因の確認と業務手順の見直しを進めております。
今後は確認体制を強化し、同様の問題が発生しないよう再発防止に努めてまいります。
このたびは誠に申し訳ございませんでした。」
このように、具体的な改善策と組み合わせることで、言葉だけの謝罪ではなく、行動を伴う姿勢を伝えられます。
謝罪文で避けたい使い方次のような文章は、相手に誠意が伝わりにくくなる可能性があります。
「今後は十分に注意し、改善に努めてまいります。」
これだけでは、何を改善するのかが分かりません。
例えば、確認不足が原因なら「確認工程を見直す」、連絡の遅れが原因なら「報告手順を明確にする」といった具体策を添えると、より説得力のある謝罪文になります。
【言い換え・類語を比較】「精進してまいります」「尽力してまいります」との違い
「努めてまいります」は便利な表現ですが、同じ言葉を何度も使用すると文章が単調になります。
場面に応じて類語を使い分けると、より自然で伝わりやすい文章になります。
「努めてまいります」の主な言い換え表現| 言い換え | ニュアンス | 適した場面 |
|---|---|---|
| 努力してまいります | 継続して努力する | 一般的な業務報告 |
| 取り組んでまいります | 課題に向き合う | 業務改善・新規事業 |
| 精進してまいります | 自己成長や技術向上に励む | 着任挨拶・決意表明 |
| 尽力してまいります | 目標達成に力を尽くす | 重要なプロジェクト |
| 励んでまいります | 前向きに取り組む | 日常業務・挨拶 |
| 最善を尽くしてまいります | できる限りの対応をする | 顧客対応・問題解決 |
| 邁進してまいります | 目標に向かって力強く進む | 経営方針・抱負 |
それぞれの表現には微妙な違いがあります。
「精進してまいります」との違い「精進してまいります」は、技術や能力を高めるために、ひたむきに努力し続ける意思を表します。
もともと「精進」は仏教に由来する言葉で、一つのことに専念して励むという意味があります。現在では、仕事や学業に一生懸命取り組むという意味でも使われます。
例えば、
「皆様のお役に立てるよう、今後も精進してまいります。」
という文章は、自己成長や仕事の能力向上を目指す姿勢を伝えています。
一方、
「業務の効率化とサービス改善に努めてまいります。」
は、具体的な課題に対して努力する意思を示しています。
使い分けの目安
- 努めてまいります:仕事や課題に対する継続的な努力。
- 精進してまいります:自分自身の成長や能力向上への努力。
「尽力してまいります」は、目標達成のために持てる力を尽くすという意味です。
「努めてまいります」と比べると、特定の目的に対して力を注ぐニュアンスが強くなります。
例えば、
「プロジェクトの成功に向けて尽力してまいります。」
という表現は、プロジェクトを成功させるために積極的に力を尽くす意思を示しています。
一方、
「プロジェクトの円滑な進行に努めてまいります。」
は、進行管理や日々の改善を継続する姿勢を伝える表現です。
また、「尽力」は自分側の努力に使う言葉です。
相手の努力や支援に対しては「ご尽力いただき、ありがとうございます」「ご尽力に感謝申し上げます」と表現します。
「相手が尽力してまいります」といった使い方は、相手側の行為を自分側の丁重語で表現することになるため、通常は避けます。
「努めてまいります」を使わない方がよい場面丁寧な言葉だからといって、どの場面でも最適とは限りません。
次のようなケースでは、別の表現を検討しましょう。
- 具体的な実行を約束するとき:「必ず対応いたします」
- 決定済みの改善策を伝えるとき:「〇月〇日までに改善いたします」
- 日常的な社内会話:「引き続き取り組みます」
- 相手に協力を依頼するとき:「ご協力いただけますと幸いです」
また、「努めてまいります」を使う場合でも、何に取り組むのかが分からない文章は避けたいところです。
例えば、「今後も努めてまいります」だけでは、努力の対象が曖昧です。
「今後も納期管理の徹底に努めてまいります」とすれば、相手に伝わる情報が増えます。
【プロの結論】「努めてまいります」は具体的な行動と組み合わせるのが正解
「努めてまいります」は、努力を継続する意思を丁寧に伝えられる、実用性の高いビジネス表現です。
ただし、印象のよい文章にするためには、言葉の丁寧さだけでなく、何を目指し、どのように努力するのかを明確にする必要があります。
特に意識したいのは、次の3点です。
1.正しい漢字を選ぶ
努力する意味なら「努める」、役割を果たすなら「務める」、会社などで働くなら「勤める」を使います。
2.補助動詞の「まいります」はひらがなにする
「努力してまいります」「改善に努めてまいります」のように、補助動詞として使う場合はひらがな表記が自然です。
3.努力の対象を具体的に示す
「業務改善に努めてまいります」「品質向上に努めてまいります」のように、目的を添えることで文章の説得力が高まります。
ビジネスにおいて、丁寧な言葉遣いは相手への配慮を示す大切な要素です。しかし、最終的に信頼につながるのは、表現と実際の行動が一致していることです。
「努めてまいります」という言葉を使うときは、その後に続く具体的な取り組みまで意識してみてください。
【努めてまいりますに関するよくある質問(FAQ)】
Q1:「努めてまいります」は上司や目上の人に使っても大丈夫ですか?
A1:問題ありません。丁重語と丁寧語を含む表現であり、上司や取引先に対して自分の努力や今後の方針を伝える際に適しています。
Q2:「努めて参ります」と漢字で書くのは間違いですか?
A2:一般的な文章では「努めてまいります」というひらがな表記がおすすめです。「まいる」が補助動詞として使われているためです。
Q3:「努めてまいります」と「努力してまいります」はどちらが正しいですか?
A3:どちらも正しい表現です。「努めてまいります」は簡潔で改まった印象があり、「努力してまいります」は努力する意思を直接的に伝えられます。
Q4:「努めてまいります」と「精進してまいります」の違いは何ですか?
A4:「努めてまいります」は仕事や課題に対する継続的な努力、「精進してまいります」は自己成長や能力向上に励む姿勢を強く表します。
Q5:謝罪文で「努めてまいります」を使ってもよいですか?
A5:使用できます。「今後は同様の問題が発生しないよう、確認体制の強化と再発防止に努めてまいります」のように、具体的な改善策と一緒に使うと自然です。
まとめ:「努めてまいります」は意味と場面を理解して正しく使おう
「努めてまいります」は、今後も努力を継続する意思を丁寧に伝える敬語表現です。
上司への挨拶、取引先へのメール、履歴書、謝罪文、企業の代表メッセージなど、幅広い場面で活用できます。
特に重要なのは、「努める」「務める」「勤める」の漢字の使い分けと、補助動詞としての「まいります」のひらがな表記です。
また、「精進してまいります」「尽力してまいります」などの類語も、意味やニュアンスを理解して使い分けることで、文章の表現力が高まります。
丁寧な言葉で努力を伝えるだけでなく、具体的な行動によってその意思を示すこと。 それが「努めてまいります」をビジネスの場で効果的に使うための基本です。