食品アレルギー表示の基本は、食品表示法に基づく「特定原材料」と「特定原材料に準ずるもの」の2つに分かれています。
両者の最大の違いは、表示が法律上の義務なのか、事業者に対する推奨なのかという点です。
特定原材料9品目は表示義務がある2026年4月1日以降、表示が義務付けられている特定原材料は次の9品目です。
- えび
- カシューナッツ
- かに
- くるみ
- 小麦
- そば
- 卵
- 乳
- 落花生(ピーナッツ)
これらは、食物アレルギーの発症数や症状の重篤度などを考慮し、表示の必要性が特に高いと判断された食品です。
対象となる加工食品を製造・販売する事業者は、原材料として使用した場合だけでなく、原材料に含まれている場合や特定原材料由来の添加物を使用する場合にも、所定の表示を行う必要があります。
特定原材料に準ずるもの20品目は表示推奨一方、特定原材料に準ずるものは、アレルギー症状との関連が認められ、表示が望ましいものの、義務表示の対象には指定されていない食品です。
2026年4月の改正後は、次の20品目となっています。
- アーモンド
- あわび
- いか
- いくら
- オレンジ
- キウイフルーツ
- 牛肉
- ごま
- さけ
- さば
- 大豆
- 鶏肉
- バナナ
- ピスタチオ
- 豚肉
- マカダミアナッツ
- もも
- やまいも
- りんご
- ゼラチン
推奨表示は、事業者が可能な限り情報を提供するよう努める制度です。表示義務がないため、対象食品が含まれていても、必ずパッケージに記載されるとは限りません。
特に注意したいのは、推奨表示の品目が書かれていないからといって、その食品がアレルゲンを含まないと判断できるわけではないという点です。
2026年4月の改正を一覧で比較| 比較項目 | 改正前 | 2026年4月1日以降 |
|---|---|---|
| 義務表示 | 8品目 | 9品目 |
| 推奨表示 | 20品目 | 20品目 |
| カシューナッツ | 推奨表示 | 義務表示 |
| ピスタチオ | 対象外 | 推奨表示 |
| 合計対象品目 | 28品目 | 29品目 |
| カシューナッツ経過措置 | ― | 2028年3月31日まで |
今回の改正で、カシューナッツが推奨対象から義務対象へ移り、その代わりにピスタチオが推奨対象に加わりました。
つまり、単純に対象品目が1つ増えたのではありません。表示制度の分類そのものが変更された点が重要です。
【なぜ変更された?】カシューナッツ義務化とピスタチオ推奨の背景

今回の改正には、木の実類をめぐる食物アレルギーの実態が関係しています。
カシューナッツは、以前から特定原材料に準ずるものとして表示が推奨されていました。しかし、アレルギー症例数の増加や医療機関などの専門家の意見を踏まえ、より強い表示対応が必要と判断されました。
一方、ピスタチオについても症例数の増加が確認され、表示推奨の対象に追加されています。
カシューナッツはなぜ義務表示になったのか消費者庁が2026年4月に作成した加工食品向けハンドブックには、2023年の即時型食物アレルギー全国モニタリング調査の結果が掲載されています。
同資料の原因食物別データでは、6,033件の症例のうち、カシューナッツは279件、全体の4.6%を占めています。
木の実類の内訳でも、カシューナッツはクルミに次ぐ症例数となっています。
同じ資料では、ピスタチオについても50件、全体の0.8%というデータが示されています。
これらは調査対象となった即時型アレルギー症例の構成比であり、日本人全体の有病率を表す数字ではありません。ただし、木の実類のアレルギーを把握するうえで、重要な参考データです。
カシューナッツの経過措置は2028年3月31日までカシューナッツの義務表示は2026年4月1日に施行されましたが、事業者が原材料の確認や包装資材の変更を進めるため、2年間の経過措置が設けられています。
期限は2028年3月31日です。
ただし、経過措置の適用範囲は食品の種類によって異なります。
- 一般用加工食品:2028年3月31日までに製造・加工・輸入されたものが対象。
- 業務用加工食品:2028年3月31日までに販売されたものが対象。
したがって、2026年11月現在、カシューナッツを含む商品に旧表示が残っている可能性はあります。
ここで誤解してはいけないのは、経過措置があるからといって、事業者が対応を先延ばしにしてよいという意味ではないことです。自治体も、可能な限り速やかに新しい表示へ切り替えるよう事業者に呼び掛けています。
食品アレルギー表示の見直しは定期的に行われるアレルゲンの対象品目は、一度決められたら永久に固定されるものではありません。
消費者庁は、おおむね3年ごとに実施される全国の実態調査を参考に、症例数、重篤度、症例数の増加傾向などを踏まえて対象品目を見直しています。
過去の主な変更を整理すると、次のようになります。
| 時期 | 制度上の変更 | 対象食品 |
|---|---|---|
| 2019年9月 | 推奨表示に追加 | アーモンド |
| 2023年3月 | 義務表示に追加 | くるみ |
| 2024年3月 | 推奨表示を変更 | マカダミアナッツ追加、まつたけ削除 |
| 2026年4月 | 義務表示に追加 | カシューナッツ |
| 2026年4月 | 推奨表示に追加 | ピスタチオ |
この経緯からも、食品アレルギー表示は医療現場の症例や健康被害の実態を反映しながら更新されていることが分かります。
【パッケージの読み方】個別表示と一括表示の違いを解説
食品アレルギー表示を正しく理解するには、原材料名欄の確認が欠かせません。
特に知っておきたいのが、「個別表示」と「一括表示」の2種類です。
個別表示は原材料ごとにアレルゲンを記載する方式個別表示は、原材料名や添加物名の直後に、含まれているアレルゲンを括弧書きで示す方法です。
例えば、次のような表示です。
表示例・個別表示
原材料名
小麦粉、砂糖、マヨネーズ(卵を含む)、チョコレート(乳成分を含む)
読み取りポイント
- マヨネーズに卵が含まれている。
- チョコレートに乳成分が含まれている。
- どの原材料がアレルゲンに関係するのかを確認しやすい。
個別表示は、アレルゲンと原材料の関係が分かりやすいことがメリットです。
なお、添加物の場合は「卵由来」「乳由来」のように、由来を示す表記が使われます。
一括表示は最後にアレルゲンをまとめる方式一括表示は、原材料名欄の最後に、含まれるアレルゲンをまとめて記載する方法です。
例えば、次のような表示になります。
表示例・一括表示
原材料名
小麦粉、砂糖、マヨネーズ、チョコレート、(一部に小麦・卵・乳成分を含む)
読み取りポイント
- 小麦、卵、乳成分が含まれている。
- どの原材料に由来するかは、この表示だけでは特定できない。
一括表示は、パッケージの表示スペースに限りがある場合など、個別表示が難しいケースで認められる例外的な方法です。
重要なのは、個別表示と一括表示を自由に組み合わせることはできないというルールです。一括表示を採用する場合は、対象となるアレルゲンをすべて記載する必要があります。
原材料名欄で見落としやすいポイントアレルゲンは、食品そのものの名称だけでなく、複合原材料や添加物に含まれていることもあります。
例えば、次のような食品は注意が必要です。
- パン:小麦、卵、乳成分など。
- ドレッシング:卵、大豆、ごまなど。
- チョコレート菓子:乳成分、大豆など。
- 加工肉製品:卵、乳成分、小麦など。
特に、加工食品の原材料には、家庭で普段使わない調味料や添加物も含まれます。
食品名や商品名だけで判断せず、原材料名欄と添加物欄の両方を確認する習慣が必要です。
また、同じアレルゲンが複数の原材料に含まれている場合、個別表示では重複して記載しなくてもよいケースがあります。表示の回数だけで含有の有無を判断しないことも大切です。
【加工食品と外食は違う】アレルギー表示義務が適用される範囲
食品アレルギー表示で混乱しやすいのが、スーパーやコンビニの商品と、飲食店で提供される料理の違いです。
同じ食品でも、販売方法や提供方法によって表示制度の適用範囲が変わります。
加工食品は容器包装された商品が基本的な対象表示義務の中心となるのは、容器包装された加工食品です。
例えば、次のような商品が該当します。
- スーパーで販売される袋入りパン
- コンビニの包装済み弁当
- 市販の冷凍食品
- レトルト食品
- 袋入りのお菓子
- 容器包装された調味料
これらの商品では、義務表示対象の特定原材料を含む場合、所定のアレルギー表示が必要です。
一方、次のような食品は、原則として通常の加工食品のアレルギー表示義務の対象外です。
- 店頭で容器包装せずに販売する食品
- ばら売り・量り売りの商品
- 飲食店で調理して提供する料理
- 出前などの飲食サービスとして提供される料理
ただし、飲食店が容器包装された加工食品を販売する場合など、販売形態によっては表示義務が生じます。
外食・中食ではアレルギー情報の提供が重要レストラン、ファストフード、弁当店、惣菜店などの外食・中食事業者には、容器包装された加工食品と同じアレルギー表示義務が一律に適用されるわけではありません。
その理由として、消費者庁や農林水産省は、飲食サービスの多様性を挙げています。
例えば、同じ料理でも仕入れ先の変更によって原材料が変わることがあります。また、厨房では複数の料理を同じ調理器具や設備で作るため、アレルゲンの混入を完全に防ぐことが難しい場合もあります。
そのため、外食・中食では、事業者による自主的な情報提供の充実が課題となっています。
2026年の消費者庁調査から見える課題外食・中食の情報提供について、消費者庁は2026年5月1日、実態調査報告書を公表しました。
この調査は、食物アレルギー患者団体を対象に実施されたもので、有効回答は38団体。2025年9月から10月にかけてアンケートを行い、さらに10団体へのヒアリングも実施しています。
報告書では、微量のアレルゲン摂取でも症状が出る人を対象とした団体の回答で、次の情報が特に必要とされています。
- 83.3%:コンタミネーションの可能性
- 83.3%:アレルギー情報の更新日
- 80.0%:アレルギー対応のための食品持ち込みの可否
- 80.0%:提供料理に使用している原材料のうちアレルゲンの情報
これらは該当する患者団体の回答割合であり、全国の患者全員を対象とした調査結果ではありません。それでも、メニューにアレルゲンの有無を記載するだけでは、十分な情報提供にならないケースがあることを示しています。
2026年9月30日には、消費者庁が外食・中食事業者向けの追加アンケートを開始しました。回答期限は同年11月27日です。今後の情報提供施策を検討するための基礎資料として活用される予定です。
【見落とし厳禁】コンタミネーションと食品アレルギー表示の注意点
食品アレルギー表示を確認するとき、もう一つ知っておきたいのが「コンタミネーション」です。
これは、製造や調理の過程で、原材料として使用していないアレルゲンが意図せず食品に混入することを指します。
コンタミネーションとは何か例えば、同じ製造ラインで卵を含む商品と卵を使用しない商品を製造しているケースです。
製造設備を洗浄していても、アレルゲンが意図せず混入する可能性があります。
このような事態を防ぐため、事業者には次のような管理が大切です。
- 製造ラインや器具を十分に洗浄する。
- アレルゲンを含まない商品から先に製造する。
- 必要に応じて専用の器具を使用する。
- 原材料の保管場所や製造工程を管理する。
それでも混入の可能性を排除できない場合には、注意喚起表示を行うことが認められています。
注意喚起表示の具体例パッケージには、次のような記載がされることがあります。
表示例
「本品製造工場では、卵を含む製品を生産しています。」
「卵を使用した設備で製造しています。」
同一製造ライン・設備の使用による注意喚起の例
ここで重要なのは、こうした表示は原材料として使用したことを示す通常のアレルギー表示とは別のものだという点です。
また、日本の表示ルールでは、単に「入っているかもしれない」「入っている場合があります」といった曖昧な可能性表示は認められていません。
注意喚起表示がない商品なら安全なのかこれは誤解しやすいポイントです。
注意喚起表示がないことは、あらゆる意図しない混入が絶対に起こらないことを保証するものではありません。
特に重いアレルギー症状がある人や、微量の摂取でも反応する人は、商品表示だけでなく、必要に応じて製造事業者へ確認することが大切です。
外食の場合も同様で、アレルゲンの使用状況だけでなく、調理器具や揚げ油の共用、厨房での混入防止策について確認する必要があります。
【実践ガイド】食品アレルギー表示の確認方法と失敗しない選び方
制度を理解しても、実際の買い物や外食で確認できなければ意味がありません。
食品を選ぶ際には、次の順番でチェックすると判断しやすくなります。
スーパー・コンビニで購入するときの確認手順1.パッケージの原材料名欄を確認する
商品名や表面のキャッチコピーではなく、裏面などに記載された原材料名欄を確認します。
2.特定原材料9品目を確認する
自分や家族に該当するアレルゲンがないかをチェックします。
3.推奨表示20品目も確認する
推奨表示の対象品目は、表示が省略される可能性があります。必要に応じてメーカーへの問い合わせも検討します。
4.一括表示と個別表示を見分ける
原材料名の途中に括弧書きがあるか、最後に「一部に○○を含む」とまとめられているかを確認します。
5.注意喚起表示も読む
製造ラインや設備の共用に関する情報が記載されていないか確認します。
外食・中食を利用するときの確認手順飲食店では、メニュー表に記載された情報だけでは判断できない場合があります。
次の点を確認すると、情報の不足を補いやすくなります。
- メニューのアレルゲン情報はいつ更新されたか。
- どの品目まで情報提供されているか。
- ソースや調味料に含まれるアレルゲンは何か。
- 揚げ油や調理器具を共用しているか。
- 別の調理器具や専用スペースを利用できるか。
- アレルギー対応が難しい場合、事前に説明してもらえるか。
特に、ウェブサイトにアレルゲン一覧が掲載されている場合は、対象品目の範囲と更新日を確認してください。
情報が古い場合や、調理工程まで把握できない場合には、店舗へ直接問い合わせることが大切です。
商品選びで避けたい3つの思い込み思い込み1:推奨表示がない食品にはアレルゲンが入っていない
推奨表示は義務ではありません。記載がないことだけで安全とは判断できません。
思い込み2:2026年4月以降の商品はすべて新表示になっている
カシューナッツには2028年3月31日までの経過措置があります。2026年11月時点では、旧表示の商品が流通している可能性があります。
思い込み3:飲食店のアレルギー対応メニューなら完全に除去されている
アレルギー対応メニューであっても、調理設備や器具の共用による混入リスクが残ることがあります。どの範囲まで対応できるのかを確認する必要があります。
食物アレルギーは、反応する量や症状の程度に個人差があります。食べられるかどうかの判断については、医師の指導も踏まえて対応してください。
【食品アレルギー表示】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年4月からカシューナッツの表示は義務になった?
A1:はい。2026年4月1日から、カシューナッツは特定原材料に移行し、義務表示の対象となりました。ただし、経過措置は2028年3月31日まで設けられています。
Q2:ピスタチオも表示義務がある?
A2:いいえ。ピスタチオは2026年4月1日から特定原材料に準ずるものに追加されました。表示は推奨されていますが、義務ではありません。
Q3:特定原材料9品目と推奨20品目は全部表示される?
A3:義務対象の9品目は、対象となる加工食品に含まれている場合、原則として表示が必要です。一方、推奨20品目は表示が任意のため、記載されていないことがあります。
Q4:外食やレストランでもアレルギー表示は義務?
A4:飲食店で調理・提供される料理は、一般的な容器包装された加工食品と同じアレルギー表示義務の対象ではありません。ただし、事業者による情報提供の取り組みが進められています。利用時には店舗へ確認してください。
Q5:一括表示と個別表示はどちらが正しい?
A5:どちらも制度上認められた表示方法です。原則は個別表示ですが、表示面積などの事情によって一括表示も認められています。両方を併用することはできません。
Q6:コンタミネーションの注意書きがなければ食べても大丈夫?
A6:注意書きがないことだけで、意図しない混入が絶対にないとは判断できません。重いアレルギーがある場合は、メーカーや飲食店に製造・調理環境を確認してください。
まとめ:2026年の食品アレルギー表示と失敗しないための判断基準
2026年4月1日の食品表示基準の改正によって、食品アレルギー表示は大きな転換点を迎えました。
今回の改正で押さえておきたい要点は次のとおりです。
- 特定原材料は8品目から9品目に変更。
- カシューナッツが義務表示対象に追加。
- ピスタチオが推奨表示対象に追加。
- 推奨表示の対象は20品目で、合計29品目に。
- カシューナッツの経過措置は2028年3月31日まで。
- 外食・中食では加工食品と同じ表示義務が適用されない。
- 個別表示、一括表示、コンタミネーションの違いを理解することが大切。
食品アレルギー表示の本質は、単にアレルゲンの名前を並べることではありません。食物アレルギーを持つ人が、健康被害を避けながら食品を選択できるようにするための情報制度です。
特に2026年は、カシューナッツの義務表示化によって、これまで推奨表示だった食品が義務対象へ移行するという大きな変化がありました。
一方、ピスタチオを含む推奨表示20品目は、表示されない可能性があります。加えて、外食では原材料情報だけでなく、調理環境やコンタミネーションへの対応も確認しなければなりません。
消費者にとって最も確実な判断基準は、次の3つです。
1. 市販品では原材料名欄とアレルゲン表示を毎回確認する。
2. 推奨表示対象や経過措置中の食品は、表示だけで判断せず必要に応じてメーカーへ確認する。
3. 外食では原材料、調理器具、製造・調理環境まで確認する。
食品アレルギー表示の対象品目は、今後も健康被害の実態や医学的な知見に応じて見直される可能性があります。
消費者庁が公開する「加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック」の2026年4月版や最新の制度情報を確認しながら、日々の食品選びに役立てることが大切です。
情報基準日:2026年11月2日