生活保護を受給しながらアルバイトをした場合、収入を申告しなければ不正受給になるのか。預貯金や生命保険、親族からの仕送り、同居人の存在を申告していなかった場合はどう判断されるのか。こうした疑問に関わるのが、生活保護法第61条の届出義務と、第63条・第78条による費用返還や徴収の仕組みだ。
厚生労働省が2026年1月に公表した最新の全国集計資料によると、令和6年度の生活保護法第78条に基づく不正受給件数は2万5,907件、金額は約114億円に上った。特に目立つのが就労収入の未申告で、全体の51.6%を占めている。発覚のきっかけも、通報より福祉事務所による照会・調査が圧倒的に多い。2026年現在の法律と行政実務を踏まえ、どこから不正受給に該当するのか、発覚後に何が起きるのかを整理する。
【判断基準】生活保護不正受給はどこから該当する?申告漏れとの違い

生活保護不正受給とは、虚偽の申請や必要な事項の故意の隠蔽など、不正な手段によって本来受け取るべき金額を超えて生活保護費を受給することを指す。
重要なのは、単に収入があったことだけで不正受給と決まるわけではないという点だ。生活保護制度では、世帯の収入や資産などを踏まえて保護費を計算するため、収入が発生した場合には原則として申告が必要になる。一方、申告漏れがあった場合も、その原因や本人の認識、具体的な状況によって適用される法律が異なる。
1.アルバイト・副業・現金収入を申告しなかった場合生活保護を受給しながら働くこと自体は禁止されていない。アルバイトやパート、自営業、日雇い労働などによる収入があっても、適切に申告し、必要な収入認定を受ければ受給を継続できる場合がある。
問題になるのは、働いて得た収入を申告しなかったり、実際より少ない金額を申告したりするケースだ。
代表的な対象には、次のようなものがある。
- アルバイトやパートの給与
- 日雇い労働や単発の仕事による報酬
- 副業や個人事業による収入
- 賞与や臨時ボーナス
- 年金や雇用保険の給付金
- 生命保険の解約返戻金や保険金
- 交通事故による補償金や示談金
- 親族や知人からの仕送りなど
少額だから申告しなくてもよい、現金手渡しだから分からない、短期間の仕事だから対象外という考え方は適切ではない。収入の種類によって認定方法や控除の扱いは異なるため、判断に迷う場合は担当ケースワーカーに確認する必要がある。
2.就労収入の申告義務はいつ発生する?生活保護法第61条では、収入や支出など生計の状況に変動があった場合、または居住地や世帯構成に異動があった場合、速やかに福祉事務所へ届け出ることを定めている。
厚生労働省の実施要領では、就労可能と判断される受給者について、収入の有無にかかわらず原則として毎月、収入申告を行う運用が示されている。収入がない月でも申告が必要になる場合がある。
高校生のアルバイト収入についても、原則として申告対象になる。ただし、進学や就職に向けた自立更生に使うなど、一定の要件を満たす場合には収入認定から除外される取り扱いもある。
また、収入が発生したことと、その全額がそのまま保護費から差し引かれることは同じではない。勤労収入には必要経費や勤労控除などの仕組みがあり、実際の収入認定額は個別に計算される。
3.預貯金や資産を隠していた場合生活保護では、利用できる資産を最低生活の維持に活用することが原則となっている。そのため、申請時や受給中に預貯金、不動産、生命保険、有価証券などの状況を正しく申告する必要がある。
特に問題になりやすいのは、次のようなケースだ。
- 別の銀行口座に預貯金があることを申告しない
- 相続によって取得した財産を届け出ない
- 生命保険の解約返戻金を隠す
- 不動産や有価証券などの保有状況を偽る
- 資産を売却して得た代金を申告しない
ただし、生活保護受給中に預貯金ができたからといって、直ちに不正受給になるわけではない。厚生労働省の実施要領では、支給された保護費をやり繰りして生じた預貯金について、不正な収入によるものではなく、使用目的も生活保護の趣旨に反しないと判断される場合には、保有を認める取り扱いが示されている。
つまり、預金残高だけで不正受給を判断するのではなく、資金の出所や形成された経緯、使い道などを総合的に確認することが重要だ。
4.同居人や世帯員を申告しなかった場合生活保護は原則として世帯単位で判断される。本人だけでなく、同じ世帯に属する人の収入や生活状況も保護費の算定に関係する。
例えば、受給中にパートナーが実際に同居するようになった場合や、親族が継続的に生活費を負担するようになった場合には、世帯状況や収入の変化について福祉事務所に届け出る必要がある。
一方、住民票が同じだから必ず同一世帯になる、住民票が別だから絶対に別世帯になるという単純な仕組みではない。厚生労働省の世帯認定に関する実施要領では、同じ住居で暮らし、生計を一にする者を原則として同一世帯とする一方、住居が異なっていても同一世帯と判断される場合がある。
実際の居住状況や家計の共有、生活費の負担関係などが判断材料になるため、同居や別居の実態に変化があれば、早めに届け出ることが必要だ。
【発覚の仕組み】未申告収入・預貯金・同居実態はどう調査される?
生活保護の調査は、福祉事務所の担当者が行う。調査の法的根拠となるのが生活保護法第28条と第29条だ。
第28条では、必要に応じて本人への報告要求や居住場所への立ち入り調査などを認めている。第29条では、官公署、金融機関、雇用主などの関係先に対して資料の提供や報告を求めることができる。
1.福祉事務所の課税調査不正受給の発覚につながる代表的な調査が、自治体の税務部門などを通じた課税情報の確認だ。
住民税の課税情報や所得情報と、本人が提出した収入申告書の内容を照合することで、申告されていない給与所得や事業所得などが判明する場合がある。
例えば、本人が収入なしと申告しているにもかかわらず、課税情報には給与所得が記録されていれば、福祉事務所は勤務先や収入の詳細を確認することになる。
課税情報だけで直ちに不正受給が確定するわけではない。対象となる期間や収入の種類、実際の受給額との関係を調べたうえで判断される。
2.預貯金・金融資産の調査生活保護法第29条に基づき、必要がある場合には金融機関に対して預貯金の保有状況などを照会できる。
調査対象となる資産には、次のようなものが含まれる。
- 普通預金・定期預金
- 生命保険の加入状況や解約返戻金
- 不動産の保有状況や評価額
- 自動車などの保有状況
- 株式・投資信託などの金融資産
申告内容と金融機関などから得られた情報に相違があれば、担当者から説明や追加資料の提出を求められることがある。
なお、2026年4月に内閣官房が公表した資産調査に関する資料でも、生活保護の資産調査は自治体職員が個別の必要性に応じて行うものであり、行政があらゆる資産を常時網羅的に把握しているわけではないと整理されている。
3.勤務先・年金・保険会社への照会給与収入に疑義がある場合、福祉事務所は勤務先などに対して、就労状況や賃金に関する報告を求めることができる。
年金については日本年金機構など、雇用保険については関係する行政機関、生命保険については保険会社などが調査先となる。
本人が提出した給与明細や収入申告書と、関係先の資料を照合することで、実際の収入額と申告額の違いを確認する仕組みだ。
4.家庭訪問や同居実態の確認ケースワーカーによる家庭訪問も、生活状況を把握するための調査の一つだ。
訪問では、実際の居住状況や世帯構成、生活の様子などが確認される。申告された世帯員と実際に生活している人が異なる場合には、誰が居住し、どのように家計を支えているのかについて説明を求められることがある。
ただし、生活保護法第28条第4項では、立入調査の権限を犯罪捜査のための権限と解釈してはならないと定めている。福祉事務所の調査と、警察による犯罪捜査は法的に異なる手続きだ。
5.通報・情報提供による発覚第三者からの情報提供や通報も、不正受給が判明するきっかけになる。
ただし、通報内容だけで不正受給が確定するわけではない。福祉事務所は、客観的な資料や本人への聞き取りなどを通じて事実関係を確認する必要がある。
【法律比較】生活保護法63条・78条・85条の違いと40%加算徴収
生活保護の不正受給を理解するうえで、特に重要なのが第63条、第78条、第85条の違いだ。
この3つは同じ問題に関係しているが、法律上の役割は異なる。第63条は費用返還、第78条は不正受給に対する費用徴収、第85条は刑事罰を定めている。
| 法律 | 主な適用場面 | 金銭的な対応 | 刑事罰 |
|---|---|---|---|
| 第63条 | 資力があるのに保護を受けた場合など、不正手段による受給と認められないケース | 受けた保護金品に相当する範囲内で返還 | 条文自体に刑事罰なし |
| 第78条 | 虚偽申請や故意の隠蔽など、不正な手段による受給 | 保護費の全部または一部の徴収と、最大40%の加算徴収 | 同条自体は行政上の徴収規定 |
| 第85条 | 不実の申請その他不正な手段による受給 | 第78条などによる徴収とは別の手続き | 3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
第63条は、急迫した状況などで資力があるにもかかわらず保護を受けた場合、受け取った保護金品に相当する金額の範囲内で、福祉事務所が定めた額を返還することを求める規定だ。
例えば、生活保護を開始した時点では換金できなかった資産が後から現金化された場合や、予想していなかった収入が判明した場合などが考えられる。
第63条の特徴は、受給者に不正受給の意図があったことが認められないケースなどでも適用され得る点だ。
また、返還額は受け取った保護金品に相当する範囲内で決定される。第78条のような40%の加算徴収は設けられていない。
2.生活保護法第78条は不正受給に対する徴収規定第78条は、不実の申請やその他の不正な手段によって保護を受けた場合に適用される。
例えば、就労収入があることを理解しながら申告しなかったり、収入を少なく見せたり、資産の存在を意図的に隠したりする行為が問題となる。
この場合、自治体は保護費の全部または一部を徴収できるほか、徴収する額に対して最大40%の加算額を上乗せできる。
例えば、第78条による徴収対象額が100万円と決定され、40%の加算徴収が行われた場合、返還・徴収額は合計140万円になる。
ただし、40%は一律に必ず加算されるという意味ではない。法律上は40%以下とされており、実際の加算額は自治体の判断によって決まる。
3.生活保護法第85条は刑事罰を定めている第85条では、不実の申請その他の不正な手段によって保護を受けた者に対し、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金を定めている。
第78条が行政上の金銭徴収を定めているのに対し、第85条は刑事責任に関する規定だ。
なお、2025年6月1日には刑法改正によって懲役刑と禁錮刑が廃止され、拘禁刑が新設された。そのため、2026年現在の条文では、従来の「3年以下の懲役」ではなく「3年以下の拘禁刑」という表記が用いられている。
また、不正な手段による受給について刑法上の詐欺罪などが成立する場合には、刑法の規定によって処罰される可能性もある。
4.未申告があれば必ず第78条になるわけではないここは誤解されやすい部分だ。収入を申告しなかった事実があっても、すべてのケースが自動的に第78条の不正受給として処理されるわけではない。
判断の参考になるのが、2018年2月9日の神戸地方裁判所の判決だ。
この事件では、受給者がボランティア活動に対する謝礼や就労収入を申告していなかったことを理由に、神戸市が第78条に基づく費用徴収を決定していた。
裁判所は、謝礼が申告すべき収入に当たることを認める一方、収入を故意に隠蔽して生活保護制度を悪用しようとした意図があったとは認められないと判断。第78条による徴収決定を取り消した。
この判決から分かるのは、未申告という客観的事実だけでなく、申告しなかった際の具体的状況や本人の目的なども判断材料になるということだ。
もっとも、この判決は個別事件に対する地方裁判所の判断であり、あらゆる申告漏れが第63条になるという意味ではない。故意の隠蔽や虚偽説明などが認められれば、第78条が適用される可能性がある。
【発覚後の流れ】返還請求・保護停止・告訴や刑事告発はどう進む?
生活保護の不正受給が疑われた場合、一般的には福祉事務所による事実確認から始まり、必要に応じて返還・徴収の決定や刑事手続きへ進む。
1.福祉事務所から事情説明や資料提出を求められる課税調査や金融機関への照会などによって申告内容との相違が見つかると、担当ケースワーカーから事情を確認される場合がある。
この段階では、収入が発生した時期、金額、勤務先、資産の取得経緯、世帯状況の変化などを確認することになる。
給与明細や通帳、振込記録、契約書など、事実関係を説明できる資料があれば提出を求められることもある。
2.不正受給額や返還対象期間が計算される収入や資産の状況が確認された後、福祉事務所は本来支給されるべきだった保護費と、実際に支給された金額を比較する。
その結果、過大に支給された金額や対象期間が算定され、第63条または第78条の適用が検討される。
どちらの条文を適用するかは、収入の未申告が生じた事情や不正な手段に該当するかどうかなどによって判断される。
3.返還・徴収命令や保護費の変更が行われる第63条または第78条に基づく返還・徴収が決定された場合、本人には決定内容や金額が通知される。
第78条の場合は、返還対象となる保護費に加えて、最大40%の加算徴収が行われる可能性がある。
また、不正受給の内容や世帯の収入状況などによっては、保護費の変更、停止、廃止といった行政上の措置が検討されることもある。ただし、不正受給が疑われただけで、必ず生活保護が廃止されるわけではない。
4.悪質なケースでは警察への告訴・刑事告発もある不正受給の金額や期間、虚偽申告の内容、隠蔽の方法などを踏まえ、悪質性が高いと判断された場合には、福祉事務所が警察への告訴や刑事告発などを検討することがある。
その後は警察による捜査や検察による判断を経て、起訴された場合には刑事裁判へ進む可能性がある。
ここで注意したいのは、行政上の返還・徴収決定と刑事裁判は別の手続きだという点だ。第78条による徴収決定があったからといって、その時点で第85条の刑事罰が確定するわけではない。
また、告訴や告発が行われたことと、有罪判決が確定したことも同じではない。刑事責任は捜査や裁判を通じて判断される。
【2026年最新データ】生活保護不正受給の件数・金額と厚生労働省の対策
生活保護の不正受給は、個別の自治体だけの問題ではない。厚生労働省が2026年1月に公表した全国厚生労働関係部局長会議の資料には、令和6年度までの全国的な不正受給状況が掲載されている。
1.令和6年度の不正受給は2万5,907件厚生労働省の資料によると、令和6年度の第78条適用件数は2万5,907件で、徴収対象となった金額は約114億円だった。
前年度の令和5年度は2万3,786件、約97億円だったため、件数・金額ともに増加している。
令和6年度の1件当たりの金額は約44万円。告発等の件数は162件となっている。
なお、この統計は第78条に基づく不正受給の適用状況を集計したものであり、刑事事件の有罪判決数を表したものではない。
2.最も多いのは就労収入の未申告令和6年度の不正内容を見ると、最も大きな割合を占めたのは稼働収入の無申告だった。
具体的な内訳は次のとおりだ。
- 稼働収入の無申告:1万3,357件、51.6%
- 稼働収入の過小申告:2,559件、9.9%
- 各種年金等の無申告:3,199件、12.3%
- 保険金等の無申告:540件、2.1%
- 預貯金等の無申告:292件、1.1%
- 交通事故に係る収入の無申告:236件、0.9%
- その他:5,724件、22.1%
稼働収入の無申告と過小申告を合計すると、全体の61.5%に達する。生活保護不正受給の大きな課題が、就労による収入の適正な申告にあることが分かる。
3.発覚の88.6%は照会・調査がきっかけ特に注目したいのが、不正受給が発覚したきっかけだ。
令和6年度の内訳は、照会・調査が2万2,962件で88.6%、通報・投書が1,599件で6.2%、その他が1,346件で5.2%となっている。
この数字からも、第三者からの通報だけに依存しているわけではなく、行政による関係先への照会や資料確認が大きな役割を担っていることが分かる。
不正受給対策を考える際には、通報制度だけでなく、課税情報や収入申告書、金融機関の資料などを適切に照合する行政実務が重要になる。
4.厚生労働省が進める2026年の不正受給対策厚生労働省は、生活保護制度の適正な運用に向けて、自治体の調査体制やケースワーカーの業務環境の改善にも取り組んでいる。
2026年1月の全国会議資料では、ケースワーカーの業務負担軽減を進めるため、収入・資産申告書の徴取や関係先調査、生活保護法63条の返還金・78条の徴収金の債権管理などを担う人員確保の方針が示された。
これは単に不正受給者への処分を強化するだけではなく、調査や事務処理の負担を軽減し、受給者一人ひとりに対する自立支援の時間を確保することも目的としている。
2026年時点で押さえておきたいのは、生活保護の不正受給対策が、法律上の徴収・罰則と、行政の調査能力・支援体制の両面から進められているという点だ。
生活保護不正受給を正しく理解するためには、単に「収入を申告していなかった」という事実だけを見るのでは不十分だ。実際の制度運用では、申告義務の内容、収入や資産の実態、不正な手段に該当するかどうかを分けて考える必要がある。
ポイント1:収入があることと不正受給は同じではない生活保護を受給しながら働くことは認められている。就労収入がある場合も、必要な申告と収入認定を受ければ、保護費を調整しながら生活を続けられる場合がある。
そのため、働いている人を一律に不正受給者と判断することはできない。問題になるのは、収入を隠したり虚偽の申告をしたりして、本来の支給額を超える保護費を受け取ることだ。
ポイント2:第63条と第78条の区別が非常に重要返還義務が発生したとしても、必ずしも不正受給として扱われるとは限らない。
不正な手段による受給と認められない場合には第63条による返還が検討される一方、故意の隠蔽や虚偽申告などが認められれば第78条による徴収や40%以下の加算徴収が問題になる。
この違いは金銭的な負担だけでなく、刑事責任の可能性にも関係するため、行政から通知を受けた場合には、適用条文と判断理由を確認することが大切だ。
ポイント3:申告漏れに気づいたら早期に訂正する収入の申告を忘れていた場合や、資産・世帯状況の変更を届け出ていなかった場合には、そのまま放置しないことが重要だ。
担当ケースワーカーに速やかに相談し、収入の発生時期や金額、資金の出所、申告できなかった事情などを説明する。給与明細や通帳などの資料を整理しておけば、事実関係の確認にも役立つ。
返還額や適用条文に納得できない場合には、決定通知に記載された理由や不服申立ての案内を確認し、必要に応じて弁護士や法律相談窓口に相談する方法もある。
生活保護は、困窮した人の最低限度の生活を保障し、自立を支援するための制度だ。不正受給への対応と同時に、正しく申告した人が安心して制度を利用できる環境を整えることも欠かせない。
【生活保護不正受給】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:生活保護を受給しながらアルバイトをすると不正受給になりますか?
A1:アルバイトをすること自体は禁止されていない。給与や賞与などの収入を適切に申告し、福祉事務所による収入認定を受ければ、保護費を調整しながら受給を継続できる場合がある。無申告や虚偽申告は問題になる可能性がある。
Q2:生活保護の不正受給が発覚すると必ず40%を加算されますか?
A2:必ず40%が加算されるわけではない。第78条では、徴収する額に対して40%以下の金額を加算徴収できると定められている。実際の加算額は個別の事情や自治体の判断による。
Q3:生活保護を受けながら貯金すると不正受給になりますか?
A3:貯金があることだけで直ちに不正受給になるわけではない。支給された保護費をやり繰りして貯蓄した場合など、使用目的や形成経緯によって保有が認められることもある。ただし、未申告収入によって蓄えた資金などは別途確認が必要になる。
Q4:生活保護不正受給で逮捕されることはありますか?
A4:悪質な虚偽申告や意図的な隠蔽などが疑われる場合、警察への告訴・刑事告発などに進む可能性がある。生活保護法第85条では3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められている。ただし、行政上の返還請求だけで自動的に逮捕や有罪判決になるわけではない。
Q5:同居人の収入を申告しなかった場合も不正受給になりますか?
A5:同居人が生活保護上の同一世帯員に該当するかどうかによる。実際の居住状況や生計の共有状況などを踏まえて判断されるため、同居や世帯構成に変化があった場合には福祉事務所への届出が必要になる。
まとめ:生活保護不正受給は申告義務と故意の有無が判断の分かれ目
2026年現在、生活保護不正受給の判断には、生活保護法第61条の届出義務、第63条の費用返還義務、第78条の不正受給に対する徴収、第85条の刑事罰という複数の規定が関係している。
特に重要なのは、未申告収入が見つかった場合でも、すべてが同じ法律で処理されるわけではないことだ。不正の意図が認められない場合などには第63条による返還が検討される一方、故意の隠蔽や虚偽申告などがあれば第78条による徴収、さらに第85条による刑事責任につながる可能性がある。
厚生労働省の令和6年度統計では、不正受給は2万5,907件、約114億円に達し、その過半数を就労収入の無申告が占めた。調査による発覚も88.6%に上っている。
今後も課税情報や金融機関への照会など、生活保護制度の適正な運用を支える調査体制の重要性は高い。一方で、生活保護は本来、経済的に困窮した人の生活を守るための制度であり、働くことや少額の貯蓄そのものを不正と決めつけるべきではない。
正確な収入申告、資産状況の届出、世帯構成の変更報告を徹底すること。そして、返還請求を受けた場合には適用条文と判断理由を確認すること。この2つが、制度を正しく利用し、不必要なトラブルを避けるための基本となる。