ミライ人間洗濯機の技術が注目される理由は、娯楽性の高い入浴体験だけではありません。実用化の大きな目的の一つが、介護現場の入浴介助を支援することです。
高齢者の入浴では、浴槽をまたぐ動作や身体を支える作業、全身を洗う介助など、利用者にも介助者にも負担がかかります。介護施設では人手不足も課題となっており、入浴設備の安全性と省力化は重要なテーマです。
そこで株式会社サイエンスは、2025年12月16日、ミライ人間洗濯機の技術を介護向けに応用した「ミライ人間洗濯機 社会実装版(高齢者施設用)」を発表しました。
その製品名が「ミラブル アシストバス」です。万博に展示された大型カプセル型の装置をそのまま小型化したものではなく、介護現場での使用を重視して設計された別モデルです。
ミラブル アシストバスの特徴と価格最大の特徴は、浴槽に扉を設け、利用者が浴槽をまたがずに入れる設計です。
身体は浴槽内のマイクロバブルで洗浄し、顔や髪はミラブルのシャワーで洗います。身体を強くこすらずに洗浄できるため、利用者の肌への配慮と介助者の作業負担の軽減を目指しています。
ミラブル アシストバス159万5,000円

メーカー希望小売価格・税込
- 対象:高齢者施設・介護福祉施設など
- 身体の洗浄:ミラバスのマイクロバブル
- 顔・髪の洗浄:ミラブルのシャワー
- 安全設計:浴槽の扉から出入り
- 目的:入浴介助の負担軽減と安全性への配慮
- 設置工事:別途確認が必要
株式会社サイエンス公式製品情報に基づく
本体価格は159万5,000円(税込)です。2025年12月の発表時には145万円(税別)として案内されており、税込換算すると同じ金額になります。
万博展示用の完全版が6,000万円であることを考えると、大幅に導入しやすい価格帯の製品が登場したことになります。ただし、完全版と同じ体験や機能を備えた製品ではありません。
設置工事の内容や施設の給排水設備との適合性、日々の清掃・衛生管理などは、導入前に確認する必要があります。
介護施設への導入で期待される効果介護施設向け製品が目指す価値は、大きく3つあります。
1.入浴介助の身体的負担を減らす
身体を支えながら全身を洗う工程を減らすことで、介助者の腰や肩にかかる負担を軽くすることが期待されます。
2.浴槽への出入りを安全にする
浴槽をまたがずに入れる扉付き構造によって、出入り時の転倒リスクに配慮しています。立ち上がりや移動に不安がある利用者にとって、入浴方法の選択肢を広げる可能性があります。
3.肌をこすらない洗浄を実現する
マイクロバブルを利用した洗浄とミラブルのシャワーを組み合わせることで、強くこすらずに身体を清潔にすることを目指しています。
ただし、介助を完全に不要にする装置ではありません。利用者の身体状況によっては見守りや介助が必要であり、施設ごとの運用体制に合わせた導入が大切です。
サイエンスは、介護施設だけでなく一般家庭への展開も視野に入れています。2026年4月の発表では、ヤマダデンキグループの浴槽メーカーと連携し、高齢者住宅向けリフォームや脱衣所への設置を想定したモデルの設計を進めていると説明しました。家庭への普及は今後の展開課題です。
【プロの結論】人間洗濯機は万博の話題から生活インフラへ進化するのか
ミライ人間洗濯機を評価するとき、注目すべきなのは6,000万円という価格や、宇宙船のような外観だけではありません。
本質的な価値は、入浴という毎日の生活行為を自動化し、身体的な負担を減らす可能性を示したことにあります。
1970年の夢と2025年の技術がつながった意味1970年の大阪万博で三洋電機が提示したのは、機械に身を任せるだけで入浴が終わる未来でした。しかし、当時の技術やコストでは一般家庭に広く普及するまでには至りませんでした。
55年後の大阪・関西万博では、ファインバブルや生体センサー、映像制御などを組み合わせることで、実際に人が入浴できる装置として再登場しました。
さらに2026年には、量販店での販売、温浴施設での一般利用、介護向けモデルの展開へと進んでいます。
この流れは、万博が単なる最新技術の展示会ではなく、将来の生活に必要な技術を実証し、社会へ送り出す場にもなり得ることを示しています。
人間洗濯機はどんな人におすすめ?利用目的によって、注目すべき製品や導入方法は変わります。
- 未来の入浴体験を楽しみたい人:箕面温泉スパーガーデンなどの一般利用施設で体験する方法がおすすめ。
- ホテルや温浴施設の経営者:集客力や話題性、施設の広さ、維持管理費用を含めて完全版の導入を検討する価値がある。
- 介護施設の運営者:6,000万円の完全版よりも、159万5,000円のミラブル アシストバスを含め、利用者層に合った設備を比較することが現実的。
- 家庭でファインバブルを使いたい人:ミラブルのシャワーヘッドやミラバスなど、家庭向け製品を検討する方法がある。
話題性だけで設備を選ぶと、導入後に使い勝手や維持費で悩む可能性があります。特に法人導入では次の3点が重要です。
① 設置スペースと設備条件
カプセル型の完全版は一般的な家庭用浴槽とは異なり、専用の設置スペースや設備が必要です。建物の構造、給排水、電源などを事前に確認しましょう。
② 利用者に合った洗浄方式と安全性
ファインバブルによる洗浄は魅力的ですが、身体状況や介助の必要性は人によって異なります。特に介護施設では、導入する機種が利用者の身体状況に適合するかを確かめることが欠かせません。
③ 初期費用と長期的な運用コスト
本体価格だけではなく、設置工事、清掃、メンテナンス、水道光熱費、スタッフの運用負担まで含めて判断する必要があります。
万博で注目された技術が、日常生活の課題を解決する設備として定着するかどうかは、こうした実用面にかかっています。
【大阪・関西万博の人間洗濯機】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:人間洗濯機は2026年現在、一般人でも体験できますか?
A1:はい。2026年10月1日から、大阪府の箕面温泉スパーガーデンで一般利用が始まっています。1室11,000円(税込)で、2~4人が利用できます。施設入館料は別途必要で、受付は当日先着順です。
Q2:ミライ人間洗濯機の販売価格はいくらですか?
A2:完全版は6,000万円(税込)です。2026年2月26日からヤマダデンキで販売されています。介護施設向けのミラブル アシストバスは159万5,000円(税込)で、別モデルとして販売されています。
Q3:1970年の大阪万博で展示された人間洗濯機と同じものですか?
A3:同じものではありません。1970年版は三洋電機のウルトラソニック・バスで、超音波とマッサージボールを利用する構想でした。2025年版は株式会社サイエンスが開発し、ファインバブルと生体センシング技術を採用しています。基本的な発想を受け継ぎながら、技術的には大きく進化しています。
Q4:ミラブルを購入すれば、自宅でも人間洗濯機を体験できますか?
A4:完全に同じ体験はできません。ミラブルはシャワーヘッドであり、カプセル式の自動給水・排水や全身洗浄、生体センサー、映像演出は備えていません。ただし、同じ会社のファインバブル技術を家庭のシャワーで利用できます。
Q5:介護施設向けの人間洗濯機はありますか?
A5:あります。株式会社サイエンスが展開する「ミラブル アシストバス」が該当します。浴槽をまたがずに入れる扉付き構造と、マイクロバブルによる身体洗浄、ミラブルによる顔・髪の洗浄が特徴です。メーカー希望小売価格は159万5,000円(税込)です。
まとめ:人間洗濯機万博の技術は2026年から新しい段階へ
大阪・関西万博で話題を集めたミライ人間洗濯機は、1970年大阪万博のウルトラソニック・バスの構想を、株式会社サイエンスが現代のファインバブル技術で進化させた全自動入浴装置です。
万博では1,227人が入浴を体験し、アンケート回答者の満足度は98.3%を記録しました。その後、2026年2月には6,000万円での販売が始まり、3月には北海道のホテル施設、10月には箕面温泉スパーガーデンで一般利用が始まっています。
介護分野では、159万5,000円(税込)のミラブル アシストバスも登場しました。これは単なる話題性のある展示物から、介護負担の軽減や入浴環境の改善を目指す実用設備へと展開していることを示しています。
今後の注目点は、一般家庭への普及、介護施設での導入実績、そして長期的な運用コストと安全性です。1970年に描かれた未来の入浴が、2025年の万博を経て、2026年には実際に体験できるサービスへと変わりました。
人間洗濯機の本当の価値は、身体を自動で洗うことだけではありません。誰もが安全で快適に入浴できる環境を、どこまで日常生活に広げられるか。その挑戦は、まだ始まったばかりです。
主な参照資料:株式会社サイエンス公式発表・製品情報、ヤマダホールディングス2026年2月26日発表、万博記念公園公式資料、日本科学未来館の展示情報。