最も要点は、2024年9月27日の自民党総裁選決選投票で、石破茂氏に投票した議員189人の個人名は特定できないということだ。
これは投票制度に理由がある。自民党が公表した2024年版の「総裁公選の仕組み」では、議員投票は単記無記名方式と定められている。議員が誰に投票したかを記録して公開する仕組みではない。
したがって、報道やSNSなどで「石破氏に投票した189人」として個人名が列挙されていても、公式名簿と同じ扱いにはできない。
189票の内訳自民党公式サイトの歴代総裁記録によると、2024年9月27日の決選投票は次の結果だった。
2024年自民党総裁選・決選投票
石破茂215票

議員189+都道府県26
高市早苗194票
議員173+都道府県21
総得票差
21票
出典:自由民主党公式サイト「自民党の歴史」
石破氏は高市氏を21票上回り、第28代自民党総裁に選出された。
注目すべきなのは、第1回投票と決選投票で議員票の結果が大きく変化した点だ。
第1回投票では高市氏が72票、石破氏が46票だった。ところが決選投票では石破氏が189票、高市氏が173票となり、議員票でも石破氏が逆転している。
ただし、この数字から「誰が高市氏から石破氏に乗り換えたのか」を個人単位で判断することはできない。決選投票の個人別投票先が公開されていないためだ。
【2024年総裁選を検証】石破茂氏への投票経緯と高市早苗氏との得票比較
2024年の自民党総裁選は、候補者9人が争った大規模な選挙だった。
石破氏は過去にも総裁選への挑戦を重ねており、2024年は5度目の挑戦で総裁の座を獲得した。
一方、高市氏は第1回投票で最多得票を獲得。決選投票では両者の支持が接近し、最終的に石破氏が勝利した。
第1回投票の結果| 候補者 | 議員票 | 党員算定票 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 高市早苗 | 72 | 109 | 181 |
| 石破茂 | 46 | 108 | 154 |
| 小泉進次郎 | 75 | 61 | 136 |
| 林芳正 | 38 | 27 | 65 |
| 小林鷹之 | 41 | 19 | 60 |
| 茂木敏充 | 34 | 13 | 47 |
| 上川陽子 | 23 | 17 | 40 |
| 河野太郎 | 22 | 8 | 30 |
| 加藤勝信 | 16 | 6 | 22 |
出典:自民党公式発表。第1回投票の合計は735票。
この段階では、高市氏が27票差で石破氏をリードしていた。
しかし、過半数を獲得した候補者がいなかったため、上位2人による決選投票へ進んだ。
決選投票で何が変わったのか| 候補者 | 議員票 | 都道府県票 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 石破茂 | 189 | 26 | 215 |
| 高市早苗 | 173 | 21 | 194 |
決選投票では石破氏が議員票で16票、都道府県票で5票上回った。
ここで押さえておきたいのは、決選投票の票の構成が第1回投票と異なることだ。
第1回投票では議員票と党員算定票を合わせて735票で争う。一方、決選投票では議員票に加え、47都道府県連に各1票を割り振る方式となる。
そのため、第1回投票の党員算定票108票と決選投票の都道府県票26票を、同じ種類の票として単純比較することはできない。
【議員票と党員票の違い】なぜ189人の名前が分からないのか
石破氏に投票した議員の個人名が分からない最大の理由は、自民党総裁選と国会の首相指名選挙で投票方法が違うからだ。
議員票とは何か議員票は、自民党所属の国会議員が投じる票である。
2024年の総裁選では、議員1人につき1票が割り当てられた。
ただし、投票方式は単記無記名。候補者の名前を記入して投票するが、誰がどの候補者に投票したかを外部から確認できる記名式ではない。
党員票とは何か党員票は、全国の自民党員や党友などによる投票を集計したものだ。
2024年の第1回投票では、各都道府県の投票結果を党本部で集計し、ドント方式によって368票の党員算定票に配分した。
決選投票では、この方式をそのまま使うのではなく、47都道府県連に各1票を割り当てた。
つまり、議員票と党員票は投票する人も、集計方法も異なる。
2つの投票制度の違い| 比較項目 | 自民党総裁選 | 首相指名選挙 |
|---|---|---|
| 選挙の目的 | 自民党総裁を選ぶ | 内閣総理大臣を指名する |
| 投票者 | 自民党所属国会議員・党員等 | 衆参両院の国会議員 |
| 投票方法 | 単記無記名 | 記名投票 |
| 個人名の公表 | 投票先の個人別記録なし | 投票者氏名を公式記録に掲載 |
| 確認できる情報 | 候補者別の得票数 | 候補者別得票数と投票者名 |
この制度上の違いが、「石破氏に投票した議員リスト」をめぐる情報の混乱につながっている。
【公式名簿を公開】2024年10月1日の首相指名で石破氏に投票した議員
189人の総裁選投票者名簿とは別に、石破氏への投票者を個人名で確認できる公式資料がある。
それが、2024年10月1日の第214回国会・衆議院本会議の会議録だ。
この日は岸田文雄内閣の総辞職を受けて首相指名選挙が実施され、石破氏が第102代内閣総理大臣に指名された。
衆議院では記名投票が採用され、投票結果だけでなく「石破茂君に投票した者の氏名」という項目も会議録に掲載されている。
衆議院で石破氏に投票した議員は291人公式会議録に記載された投票結果は以下の通り。
| 指名された候補者 | 得票数 |
|---|---|
| 石破茂 | 291票 |
| 野田佳彦 | 100票 |
| 馬場伸幸 | 45票 |
| 田村智子 | 10票 |
| 玉木雄一郎 | 7票 |
| 吉良州司 | 5票 |
| 山本太郎 | 3票 |
| 合計 | 461票 |
この291人の氏名は、衆議院の公式会議録に掲載されている。
公式名簿で確認できる主な議員会議録の氏名欄には、次のような政治家が記載されている。
| 議員名 | 2024年10月1日の記録 |
|---|---|
| 麻生太郎 | 石破茂氏への投票者 |
| 岸田文雄 | 石破茂氏への投票者 |
| 高市早苗 | 石破茂氏への投票者 |
| 小泉進次郎 | 石破茂氏への投票者 |
| 河野太郎 | 石破茂氏への投票者 |
| 菅義偉 | 石破茂氏への投票者 |
| 林芳正 | 石破茂氏への投票者 |
| 小林鷹之 | 石破茂氏への投票者 |
| 茂木敏充 | 石破茂氏への投票者 |
| 稲田朋美 | 石破茂氏への投票者 |
| 岩屋毅 | 石破茂氏への投票者 |
| 野田聖子 | 石破茂氏への投票者 |
特に注目されるのが高市早苗氏の名前だ。
高市氏は2024年9月27日の総裁選決選投票で石破氏と争った候補者だった。しかし、10月1日の首相指名選挙では、衆議院の公式記録上、石破氏に投票した議員として名前が掲載されている。
これは矛盾ではない。
総裁選は自民党内部で党の代表を選ぶ選挙であり、首相指名選挙は国会で内閣総理大臣を指名する手続きである。選挙の目的も投票時期も異なる。
したがって、高市氏が首相指名選挙で石破氏に投票したという事実から、総裁選でも石破氏に投票したと判断することはできない。
参議院にも石破氏への投票者名簿がある実は、公式の氏名記録は衆議院だけではない。
参議院が公表した第214回国会の2024年10月1日付投票結果にも、石破氏に投票した者の氏名が記載されている。
参議院の結果は次の通りだった。
| 指名された候補者 | 得票数 |
|---|---|
| 石破茂 | 143票 |
| 野田佳彦 | 45票 |
| 馬場伸幸 | 21票 |
| 玉木雄一郎 | 12票 |
| 田村智子 | 11票 |
| 山本太郎 | 5票 |
| 伊藤孝恵 | 1票 |
| 伊波洋一 | 1票 |
| 神谷宗幣 | 1票 |
| 高市早苗 | 1票 |
| 茂木敏充 | 1票 |
| 合計 | 242票 |
参議院の公式資料では、石破氏への143票について、政党・会派別の内訳も確認できる。
- 自由民主党:112票
- 公明党:27票
- 各派に属しない議員:4票
合計143票となる。
つまり、衆参両院の首相指名選挙には、石破氏に投票した議員の氏名を確認できる公的記録が存在する。
ただし、これらはあくまで2024年10月1日の首相指名選挙の投票者名簿であり、総裁選の189人を示すものではない。
【2026年最新情報】石破茂氏の退陣後、首相指名選挙はどう変わった?
2026年現在の政治状況を理解するには、2024年の総裁選からその後の政権交代まで確認する必要がある。
石破氏は2024年10月1日に首相に就任し、第102代内閣総理大臣となった。その後、2024年11月11日に第103代として再び首相に指名されている。
しかし、石破政権は2025年10月21日に終了した。後任には高市早苗氏が就任し、2026年2月18日には第105代首相として改めて指名を受けている。
2025年自民党総裁選の結果2025年10月4日に行われた自民党総裁選では、高市氏が小泉進次郎氏を破って第29代総裁に選出された。
| 候補者 | 議員票 | 都道府県票 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 高市早苗 | 149 | 36 | 185 |
| 小泉進次郎 | 145 | 11 | 156 |
この選挙では、高市氏が総裁に選ばれた。2024年に石破氏に敗れた高市氏が、翌年の総裁選で勝利したことは、その後の政権交代を理解するうえでも重要な転換点だ。
2026年2月18日の最新首相指名選挙2026年2月18日、第221回国会で首相指名選挙が実施された。
衆議院では高市氏が354票を獲得し、第105代内閣総理大臣に指名された。
参議院では第1回投票で高市氏が123票を獲得したものの、過半数の124票に1票届かず、小川淳也氏との決選投票に進んだ。
決選投票の結果は次の通り。
| 候補者 | 参議院決選投票 |
|---|---|
| 高市早苗 | 125票 |
| 小川淳也 | 65票 |
| 無効票 | 48票 |
| 白票 | 8票 |
| 合計 | 246票 |
衆議院では高市氏が354票、参議院では決選投票で125票を獲得し、両院で首相に指名された。
2026年11月現在、首相官邸の歴代内閣記録でも第105代・高市早苗氏が現職として掲載されている。
この2026年の結果は、石破氏の総裁選189票とは別の投票結果である。2026年の首相指名で高市氏に投票した議員の記名記録も、2024年の石破氏への投票者名簿とは区別しなければならない。
【よくある誤解を検証】石破氏への投票者名簿に関するFAQ
Q1:石破茂氏に投票した189人の議員名は分かる?A:個人別の投票先は公式には公表されていない。
2024年9月27日の自民党総裁選決選投票は単記無記名方式だったため、石破氏に投票した189人を特定できる公式名簿は存在しない。
Q2:高市早苗氏は石破茂氏に投票したの?A:2024年10月1日の衆議院の首相指名選挙では、石破氏への投票者として公式記録に掲載されている。
ただし、9月27日の自民党総裁選で高市氏が誰に投票したかは分からない。2つの選挙を混同しないことが大切だ。
Q3:石破氏に投票した291人と189人は同じ議員?A:同じとは限らない。
189票は自民党総裁選の決選投票での議員票、291票は衆議院の首相指名選挙での得票数だ。投票の目的、対象者、時期が異なるため、同一の名簿として扱うことはできない。
Q4:参議院でも石破氏に投票した議員の名前は分かる?A:分かる。
2024年10月1日の参議院の首相指名選挙についても、公式投票結果資料に石破氏への投票者名簿が掲載されている。得票数は143票だった。
Q5:2026年現在、石破氏は首相なの?A:首相ではない。
石破氏は2025年10月21日まで首相を務め、その後は高市早苗氏が首相に就任した。2026年2月18日の首相指名選挙でも高市氏が第105代首相に指名されている。
【プロの結論】石破茂氏に投票した議員を調べるなら、選挙の種類を確認する
「石破茂に投票した議員リスト最新」という検索で最も注意したいのは、総裁選と首相指名選挙の投票記録を混同しないことだ。
今回確認できた事実は明確である。
- 2024年9月27日の総裁選: 石破氏は議員票189票、都道府県票26票を獲得したが、議員の個人名は非公表。
- 2024年10月1日の衆議院: 石破氏は291票を獲得し、投票者全員の氏名が公式会議録に掲載された。
- 2024年10月1日の参議院: 石破氏は143票を獲得し、こちらも公式の投票者名簿が存在する。
- 2026年2月18日の首相指名: 高市早苗氏が第105代首相に指名された。
情報を見極める際には、次の3点を判断基準にするとよい。
1. 選挙日を確認する。 9月27日の総裁選なのか、10月1日の首相指名なのかを確認する。
2. 投票方式を確認する。 無記名投票と記名投票では、個人名を確認できる範囲が違う。
3. 公式資料の種類を確認する。 自民党の総裁選結果、衆議院の本会議会議録、参議院の投票結果は、それぞれ異なる情報を記録している。
特に、2024年10月1日の会議録に高市氏や麻生太郎氏、岸田文雄氏などの名前が掲載されているからといって、総裁選での投票先まで判明したわけではない。
最終的な答えは、石破氏に投票した総裁選の議員189人の実名リストは公表されていない一方、首相指名選挙で石破氏に投票した衆議院291人・参議院143人については公式記録で確認できる、ということだ。
2026年の政治情勢を踏まえても、この区別は変わらない。議員の投票行動を調べる際には、得票数だけでなく、その数字がどの選挙で生まれたものなのかを確かめることが欠かせない。
主な参考資料:自由民主党「自民党の歴史」「総裁公選の仕組み 2024年版」、衆議院「第214回国会 本会議 第1号(令和6年10月1日)」、参議院「第214回国会 2024年10月1日投票結果」、首相官邸「歴代内閣」「令和8年2月18日 内閣総理大臣の指名」。