2026年大会の欧州予選で、イタリアが入ったのはグループIだった。対戦相手はノルウェー、イスラエル、エストニア、モルドバ。グループ首位になれば本大会へ直接進出できるが、2位以下はプレーオフに回る仕組みだった。
最終順位は次のとおり。
| 順位 | 国 | 試合数 | 勝利 | 勝ち点 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | ノルウェー | 8 | 8 | 24 |
| 2位 | イタリア | 8 | 6 | 18 |
| 3位 | イスラエル | 8 | 4 | 12 |
| 4位 | エストニア | 8 | 1 | 4 |
| 5位 | モルドバ | 8 | 0 | 1 |
出典:UEFA欧州予選公式順位表。
イタリアは8試合で6勝2敗。決して全試合で崩れたわけではない。問題は、その2敗がともに首位ノルウェーとの直接対決だったことだ。
ノルウェーとの2連敗が残した傷最初の大きなつまずきは2025年6月6日。アウェーで行われたノルウェー戦で、イタリアは0-3の完敗を喫した。
ルチアーノ・スパレッティ監督のチームは前半から相手の攻撃を止められず、試合の主導権を失った。スパレッティ監督はこの敗戦後に退任することになり、代表チームは予選の途中で指揮官交代を余儀なくされた。
後任に選ばれたのが、2006年ドイツW杯優勝メンバーのジェンナーロ・ガットゥーゾだった。
ガットゥーゾは2025年6月に就任。エストニア、イスラエル、モルドバなどとの試合で勝利を重ね、チームの立て直しを図った。
しかし、11月16日のホームでのノルウェー戦でも1-4と敗北。ピオ・エスポジトの先制点でリードしたものの、後半にハーランドらの攻撃を受けて逆転された。
ノルウェーは8戦全勝で勝ち点24。イタリアは勝ち点18で2位となり、自動出場を逃した。
この2連敗は単なる勝ち点の取りこぼしではない。強豪国との直接対決で、守備の対応、試合の流れを変える力、失点後の修正力に差が表れた試合だった。
出典:FIGC公式試合記録、UEFA公式順位表、BBC Sport。
【プレーオフ準決勝】イタリア対北アイルランド2-0の試合内容

ここで負ければ即敗退。前回までのW杯予選で苦杯をなめてきたイタリアにとって、勝利以外は許されない一戦だった。
試合は前半を0-0で折り返した。北アイルランドは守備を固め、イタリアの攻撃を簡単には通さなかった。
FIGCの公式試合レポートも、前半のイタリアについて、攻撃が遅く予測しやすい内容だったと振り返っている。
しかし後半、イタリアが試合を動かす。
56分、サンドロ・トナーリが先制均衡を破ったのはサンドロ・トナーリだった。
56分、北アイルランドの守備がクリアしたボールに反応。ペナルティーエリア手前から低いシュートを放ち、ゴールネットを揺らした。
この得点によってイタリアは心理的な余裕を取り戻した。
トナーリは中盤でボールを動かすだけでなく、重要な局面でゴールに直結するプレーを見せた。
80分、モイーズ・キーンが追加点続く80分にはモイーズ・キーンが追加点を決めた。
トナーリからのパスを受けたキーンが相手守備をかわし、低いシュートでゴール。スコアを2-0とした。
これでイタリアの勝利が決定的となり、決勝でボスニア・ヘルツェゴビナと対戦することになった。
イタリア対北アイルランドの最終結果は2-0。得点者は56分のトナーリと80分のキーンだった。
この勝利はガットゥーゾ体制にとって大きな成果だったが、試合内容には課題も残った。前半に攻撃の停滞が見られたことは、次のボスニア戦でも無視できないポイントとなる。
出典:FIGC公式発表、UEFAプレーオフ公式記録。
【決勝の全貌】ボスニア・ヘルツェゴビナ対イタリアは1-1、PK戦1-4
2026年3月31日、イタリアはボスニア・ヘルツェゴビナのゼニツァにあるビリノ・ポリェでプレーオフ決勝に臨んだ。
勝者だけが2026年W杯への切符を手にする、まさに最後の関門だった。
15分、モイーズ・キーンが先制ゴール試合序盤、ボスニアが積極的に攻めるなか、先制したのはイタリアだった。
15分、ニコロ・バレッラが相手GKニコラ・ヴァシリのパスミスを突いてボールを奪取。そのボールを受けたモイーズ・キーンが、ペナルティーエリア外からカーブをかけたシュートを決めた。
北アイルランド戦に続くキーンのゴール。イタリアは早い時間帯にリードを奪い、W杯出場へ近づいた。
41分、アレッサンドロ・バストーニが退場試合を大きく変えたのが41分だった。
イタリアのDFアレッサンドロ・バストーニが、ゴールに向かって抜け出したアマル・メミッチへのファウルでレッドカードを受けた。
これによりイタリアは前半のうちに10人で戦うことになった。
ガットゥーゾ監督はすぐに対応し、FWマテオ・レテギを下げてDFフェデリコ・ガッティを投入。守備の人数を確保する選択を取った。
1点をリードしていたイタリアにとって、この退場は極めて大きな痛手だった。
攻撃の人数を減らして守備を優先せざるを得ず、試合の主導権も徐々にボスニアへ移っていった。
ドンナルンマが好セーブを連発数的不利となったイタリアを支えたのが、GKジャンルイジ・ドンナルンマだった。
後半にはボスニアのケリム・アライベゴビッチらのシュートを阻止。さらに終盤にもエルメディン・デミロビッチのヘディングシュートを止めるなど、何度もチームを救った。
しかし、守備陣が耐え続ける展開には限界があった。
79分、ハリス・タバコビッチが同点ゴール79分、ボスニアがついに同点に追いつく。
エディン・ジェコのヘディングシュートをドンナルンマが弾いたものの、そのこぼれ球に反応したハリス・タバコビッチが押し込んだ。
スコアは1-1。
イタリアは先制点を守り切れず、試合は延長戦へと進んだ。
延長戦でも決着せず、運命のPK戦へ延長戦でも両チームは得点できなかった。
イタリアにもピオ・エスポジトのヘディングシュートなどチャンスがあったが、GKヴァシリの好守に阻まれた。
そしてPK戦。
ボスニアはベンジャミン・タヒロビッチ、タバコビッチ、アライベゴビッチ、エスミル・バイラクタレビッチが4人連続で成功した。
対するイタリアは、トナーリが成功した一方、ピオ・エスポジトが失敗。続くブライアン・クリスタンテもクロスバーに当てて失敗した。
結果はボスニア4-1イタリア。
イタリアは2026年W杯への道を断たれた。
UEFA公式記録によると、試合全体のシュート数はボスニア30本、イタリア9本。枠内シュートもボスニア11本に対してイタリア3本だった。
数的不利という事情を考慮しても、ボスニアが試合の大部分で攻勢を保っていたことが数字から読み取れる。
出典:UEFA公式試合レポート、FIFA公式プレーオフ総括、BBC Sport。
【人物・関係者一覧】イタリア敗退を左右した選手と監督の役割
今回の敗退は、特定の選手1人だけに責任を負わせられるものではない。攻撃、守備、試合運び、PK戦という複数の局面がつながっている。
主要な人物と試合での役割を整理する。
| 人物 | 所属・立場 | 試合での役割・結果 |
|---|---|---|
| ジェンナーロ・ガットゥーゾ | イタリア代表監督 | 予選途中に就任。北アイルランド戦に勝利するも決勝で敗退 |
| モイーズ・キーン | イタリア代表FW | 北アイルランド戦で追加点、ボスニア戦で15分に先制点 |
| サンドロ・トナーリ | イタリア代表MF | 北アイルランド戦で先制点。ボスニア戦のPKも成功 |
| アレッサンドロ・バストーニ | イタリア代表DF | ボスニア戦41分に退場。数的不利を招く |
| ジャンルイジ・ドンナルンマ | イタリア代表GK | 後半の決定機を複数阻止。失点後も好守を披露 |
| ハリス・タバコビッチ | ボスニア代表FW | 79分に同点ゴール。PK戦でも成功 |
| ピオ・エスポジト | イタリア代表FW | PK戦で失敗 |
| ブライアン・クリスタンテ | イタリア代表MF | PK戦でクロスバーに当てて失敗 |
| エスミル・バイラクタレビッチ | ボスニア代表MF | PK戦最後のキックを成功させ、本大会出場を決定 |
モイーズ・キーン:攻撃面で結果を残したストライカー
キーンは北アイルランド戦とボスニア戦の両方で得点した。特にボスニア戦では、チームが苦しい時間帯に先制点を挙げている。
敗退したからといって、攻撃陣全体の働きを否定するのは適切ではない。少なくともキーンはプレーオフの重要な局面で結果を残した選手だった。
ジャンルイジ・ドンナルンマ:敗退のなかで光った守護神
ドンナルンマは同点ゴールを許したものの、ボスニアの攻撃を何度も止めた。
タバコビッチの得点も、最初のシュートを止めた後のこぼれ球から生まれたものだ。GKの個人能力だけで試合を勝ち切ることには限界がある。
ジェンナーロ・ガットゥーゾ:情熱と結果の間で問われた監督
現役時代に2006年W杯を制したガットゥーゾは、闘争心と強い精神力を象徴する人物だった。
北アイルランド戦では2-0の勝利を収めたが、ボスニア戦では退場後の守備対応を迫られ、最終的にPK戦で敗れた。
UEFAの試合後レポートによると、ガットゥーゾは選手たちの戦う姿勢を評価しながらも、敗戦の痛みを認めていた。
その後、2026年4月3日にFIGCとガットゥーゾは契約を双方合意のうえで終了した。
出典:UEFA、BBC Sport、FIGC公式発表。
【敗退理由を徹底分析】退場やPK失敗だけでは説明できないイタリアサッカーの問題
今回の敗退を説明する際、バストーニの退場とPK戦の失敗は避けて通れない。
しかし、それだけを原因として扱うと、イタリア代表が3大会連続でW杯出場を逃した背景を見誤る。
1. ノルウェーとの実力差がグループ首位を逃す原因に2026年欧州予選では、ノルウェーが8戦全勝だった。
イタリアは6勝2敗と安定した成績を残したものの、直接対決で0-3、1-4と大差で敗れた。
この2試合は、相手の攻撃力に対する守備の対応や、試合中に流れを修正する能力に課題があったことを示している。
プレーオフに回った時点で、イタリアには一発勝負を勝ち抜かなければならない状況が生まれていた。
2. 若手イタリア人選手がトップリーグで経験を積みにくいより深刻なのが、国内サッカーの育成環境だ。
FIGCが2026年4月8日に公表したイタリアサッカー界の現状報告書には、代表チームの競争力に関わる具体的な数字が掲載されている。
特に注目したいのが以下のデータだ。
- セリエAの平均選手年齢は27歳で、欧州でも高齢化が進んでいる。
- セリエAの総出場時間の67.9%を、イタリア代表の資格を持たない選手が占めている。
- 1試合平均30分以上出場した284人のうち、イタリア人選手は89人だった。
- イタリア代表資格を持つ21歳以下の選手の出場時間割合は、世界50リーグ中49位の1.9%だった。
これは、イタリアの若手選手がトップレベルの試合で経験を積む機会が限られていることを示す数字だ。
育成年代の代表チームが結果を残しても、A代表につながる選手が十分に育たなければ、長期的な競争力は維持できない。
3. セリエAの技術・経済面にも課題FIGCの同報告書は、セリエAの競技面についても厳しい分析を示している。
例えば、試合中の平均ボール速度は毎秒7.6メートル。UEFAチャンピオンズリーグの平均10.4メートルや、他の主要欧州リーグの平均9.2メートルを下回っている。
また、トップ5リーグのなかで、1試合あたりのドリブル数も最も少ない水準だった。
財政面では、イタリアのプロクラブが年間7億3000万ユーロを超える損失を計上しているという数字も示された。
スタジアムの老朽化、育成投資の不足、クラブ経営の不安定さなど、代表チームだけでは解決できない問題が複雑に絡み合っている。
4. 外国人選手の多さだけを原因にしてはいけないイタリア人選手の出場機会が少ないことは確かだが、外国人選手を一律に排除すれば問題が解決するわけではない。
FIGCの報告書自体も、欧州連合の労働者の自由移動に関する法制度などを踏まえ、国籍による出場枠の強制には法的な制約があると説明している。
必要なのは、イタリア人の若手選手が外国人選手と競争しながら成長できる環境を作ることだ。
育成年代からトップチームへの昇格、セカンドチームの活用、指導者の育成、施設の近代化など、複数の改革を並行して進める必要がある。
出典:FIGC「イタリアサッカーの現状に関する報告書」(2026年4月8日)、BBC Sport、ロイター通信。
【2026年11月最新】イタリア代表の再建はマンチーニ復帰でどう変わる?
敗退後、イタリアサッカー界では代表監督だけでなく、連盟の運営体制にも大きな変化が生じた。
ガットゥーゾ退任後、ロベルト・マンチーニが復帰2026年4月3日、ガットゥーゾとFIGCは契約を双方合意のもとで終了した。
その後、FIGC会長だったガブリエレ・グラビーナも辞任。代表チームの再建と連盟改革が大きな課題となった。
そして7月28日、FIGCはロベルト・マンチーニの代表監督復帰を正式発表した。
マンチーニは2018年から2023年までイタリア代表を率いた経験があり、2021年のEURO優勝を成し遂げた指揮官だ。
2026年7月の再任は、過去に成功を収めた体制を再び活用するという選択でもある。
クラウディオ・ラニエリも技術部門に参加同時に、クラウディオ・ラニエリがFIGCのテクニカルディレクターおよびクラブ・イタリアの責任者に就任した。
ラニエリには、代表チームだけでなく、イタリアサッカー全体の技術的な方向性や育成面を支える役割が期待される。
マンチーニがA代表の指揮を執り、ラニエリが技術部門を支える体制は、短期的な試合結果と長期的な再建を両立させる狙いがある。
再建に必要な3つの優先課題今後のイタリア代表に必要なのは、単純な監督交代や戦術変更だけではない。
第一に、若手選手の出場時間を増やすこと。
育成年代で評価された選手が、セリエAのトップチームで継続的にプレーできる仕組みが必要だ。
第二に、クラブと連盟の協力体制を強化すること。
FIGCの報告書は、リーグやクラブ、連盟の利害が重なり、改革が進みにくい構造を指摘している。代表チームの強化を各クラブの自主性だけに委ねず、長期的な共通目標を設定することが求められる。
第三に、代表監督の継続性を確保すること。
予選途中での監督交代は、チームの戦術や選手選考に影響する。マンチーニ体制では、短期的な勝敗だけで判断せず、複数年にわたる育成・強化計画を作れるかが重要になる。
2026年11月時点では、マンチーニ復帰とラニエリの技術部門への就任が、新たな再建体制の出発点となっている。
出典:FIGC公式発表(2026年4月8日、7月28日)、ロイター通信。
【ワールドカップ予選イタリア】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:イタリア代表は2026年W杯予選で敗退したのですか?
はい。2026年3月31日の欧州プレーオフ決勝でボスニア・ヘルツェゴビナと1-1で引き分けた後、PK戦を1-4で落とし、本大会出場を逃しました。
Q2:イタリア対北アイルランドの結果は何対何でしたか?
2026年3月26日の準決勝はイタリアが2-0で勝利しました。56分にサンドロ・トナーリ、80分にモイーズ・キーンが得点しています。
Q3:ボスニア戦でアレッサンドロ・バストーニが退場したのは何分ですか?
41分です。ボスニアのアマル・メミッチに対するファウルでレッドカードを受け、イタリアは前半から10人で戦うことになりました。
Q4:PK戦で失敗したイタリアの選手は誰ですか?
ピオ・エスポジトとブライアン・クリスタンテです。サンドロ・トナーリは成功しました。ボスニアは4人全員が成功し、4-1で勝利しました。
Q5:イタリア代表は何大会連続でW杯に出場できなかったのですか?
2018年ロシア大会、2022年カタール大会、2026年北中米大会の3大会連続です。イタリアは4度の優勝経験を持つ国として、歴史的な不振に直面しています。
Q6:2026年11月現在、イタリア代表の監督は誰ですか?
ロベルト・マンチーニです。2026年7月28日にFIGCが再任を発表しました。クラウディオ・ラニエリもテクニカルディレクターとして技術部門に加わっています。
まとめ:イタリア代表の復活は育成改革と継続性にかかっている
2026年W杯欧州予選でのイタリア代表の敗退は、単なるPK戦の失敗ではなかった。
北アイルランド戦では2-0で勝利し、決勝進出を果たした。しかし、ボスニア戦ではキーンの先制点を生かせず、バストーニの退場によって試合展開が一変。タバコビッチの同点ゴールを許し、PK戦で1-4と敗れた。
ドンナルンマの好守やキーン、トナーリの活躍があった一方、試合を最後まで支配する力は不足していた。
さらに深刻なのは、3大会連続で本大会出場を逃すまでに至ったイタリアサッカー界の構造的な問題だ。
若手選手の出場機会、セリエAの競争力、クラブ経営、育成への投資、連盟とクラブの連携。これらの問題を放置したまま監督だけを交代しても、根本的な解決にはならない。
【プロの結論】今回のイタリア代表の敗退から読み取るべき最大の教訓は、代表チームの強さは大会直前の戦術や選手選考だけでは決まらないということだ。
強い代表チームを作るには、国内リーグで若手が試合経験を積み、クラブが育成に投資し、代表監督が継続的に選手を発掘できる環境が欠かせない。
2026年7月のマンチーニ復帰は、過去の成功を知る指揮官による再建という意味で期待を集める。ただし、EURO優勝時のメンバーや戦術を再現するだけでは不十分だ。
必要なのは、次の世代がトップレベルで活躍できる仕組みを整えること。そして、監督交代に左右されない長期的な強化方針を確立することだ。
2006年の世界王者が再びW杯の舞台に戻れるかどうか。その答えは、次の予選での勝敗だけでなく、イタリアサッカー界が今後どこまで本気で改革を進められるかにかかっている。