鈴木英春(すずき・えいしゅん)氏は、元日本将棋連盟奨励会三段であり、独自の将棋戦法「英春流」を生み出したアマチュア将棋界の実力者だ。1981年に年齢制限で奨励会を退会したものの、その後、独自に研究した「かまいたち戦法」を武器に1987年、1988年のアマチュア王将戦を連覇。1989年にはグランドチャンピオン戦でも優勝している。
2026年11月現在、鈴木氏は76歳。過去には金沢市で将棋道場「晩成塾」を主宰し、後進の育成にも携わってきた。2026年9月には日本将棋連盟石川県支部連合会から新しい将棋スクールの講師として紹介され、現在も将棋指導に関わっていることが確認できる。一方、奨励会退会後の歩みや一部の大会実績には、資料によって表現の違いがある。
【人物像】鈴木英春はどんな将棋指しなのか?プロフィールと経歴の全体像

鈴木英春氏を理解するうえで欠かせないのは、プロ棋士を目指した奨励会時代と、アマチュアとして独自の将棋を確立した時代の二つを分けて考えることだ。
一般的なプロ棋士の経歴とは異なり、鈴木氏は四段への昇段を果たさないまま奨励会を退会した。しかし、その後の競技実績と戦法開発によって、将棋界に独自の存在感を残した。
鈴木英春の基本プロフィール| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | 鈴木英春(すずき・えいしゅん) |
| 生年月日 | 1950年4月11日 |
| 2026年の年齢 | 76歳 |
| 出身地 | 神奈川県横浜市 |
| 将棋歴 | 日本将棋連盟奨励会三段まで在籍 |
| 師匠 | 坂口允彦九段 |
| 主な実績 | 1987年・1988年アマ王将戦連覇 |
| 代表的な戦法 | 英春流・かまいたち戦法・カメレオン戦法 |
| 主な活動地域 | 石川県金沢市 |
| 代表的な著書 | 『英春流 かまいたち&カメレオン戦法』 |
生年月日や出身地、奨励会での経歴については、マイナビ出版の著者紹介に記載されている。1950年生まれの鈴木氏は、2026年11月時点で76歳となる。
師匠は坂口允彦九段鈴木氏が将棋の世界に本格的に入ったのは中学卒業後。坂口允彦九段に入門し、15歳から31歳までの16年間、日本将棋連盟の奨励会で研鑽を積んだ。
坂口允彦は将棋界で長く活躍した棋士であり、鈴木氏にとって将棋の基礎を築くうえで重要な存在だった。
奨励会はプロ棋士になるための養成機関である。入会するだけでも厳しい選抜があり、さらに段級位を上げながら最終的に四段を目指さなければならない。
鈴木氏はその最上位に近い三段まで到達した。したがって、単に将棋が好きなアマチュアという枠では捉えきれない、長年の専門的な鍛錬を積んだ人物である。
【経歴・年表】奨励会三段での退会からアマ王将戦連覇まで
鈴木英春氏の人生で大きな転換点となったのが、1981年の奨励会退会だ。
1981年、四段を目前にして奨励会を退会鈴木氏は15歳で奨励会に入り、16年間にわたってプロ棋士を目指した。しかし、棋士になるための最後の壁である四段への昇段を果たせず、1981年、年齢制限によって三段で退会した。
当時の奨励会には現在とは異なる年齢制限があり、一定の年齢までに四段へ昇段できなければ退会しなければならなかった。
この時期の鈴木氏に密着した番組が、NHK特集のドキュメンタリー『勝負 名人への遠い道』である。1981年に制作されたこの番組は、年齢制限が迫る奨励会員の厳しい勝負の世界を描いた作品として知られる。
なお、現在の日本将棋連盟の奨励会規定では、満26歳の誕生日を含む三段リーグ終了までに四段になれなかった場合が原則的な退会条件で、一定の条件を満たせば在籍を延長できる。鈴木氏の退会時代の規定と現在の制度を混同してはいけない。
退会後3年を経て将棋界に復帰1981年の退会後、鈴木氏は約3年間、将棋の世界から離れた。その後、自ら考案した「かまいたち戦法」を携えて競技の世界に戻る。
1987年と1988年にはアマチュア王将戦で連続優勝。さらに1989年にはグランドチャンピオン戦でも優勝し、アマチュア将棋界で確かな実績を残した。
経歴の重要な出来事を整理すると、次のようになる。
| 時期 | 出来事 | 確認できる内容 |
|---|---|---|
| 1950年 | 誕生 | 4月11日、神奈川県横浜市生まれ |
| 1965年ごろ | 奨励会入会 | 坂口允彦九段に入門 |
| 1981年 | 奨励会退会 | 三段で年齢制限により退会 |
| 1981年 | NHK特集 | 『勝負 名人への遠い道』で取り上げられる |
| 1984年ごろ | 将棋界に復帰 | 独自のかまいたち戦法を携えて活動 |
| 1987年 | アマ王将戦優勝 | 第4回大会で優勝 |
| 1988年 | アマ王将戦優勝 | 第5回大会で2連覇 |
| 1989年 | グランドチャンピオン戦 | 優勝 |
| 1999年 | 金沢へ移住 | 地元関係者の2011年の紹介記事に記載 |
| 2019年 | 戦法解説書を刊行 | 『英春流 かまいたち&カメレオン戦法』 |
| 2020年ごろ | 晩成塾の閉塾 | 地元の将棋関係者が新しい指導場所への移行を紹介 |
| 2026年 | 将棋指導 | 駒みらい将棋スクールの講師として紹介 |
アマ王将戦の歴代優勝者一覧は、日本将棋連盟の公開資料でも確認できる。鈴木氏の名前は1987年と1988年に連続して掲載されており、連覇は明確な記録として残っている。
朝日アマ名人戦の実績には注意が必要2026年9月に掲載された日本将棋連盟石川県支部連合会のスクール紹介では、鈴木氏を「朝日アマ名人全国大会優勝」と紹介している。
ただし、公開されている朝日アマ名人戦の歴代三番勝負記録では、1988年の第12期は野山知敬氏が鈴木英春氏を2勝0敗で破って優勝した記録になっている。また、2011年の第34期についても、全国大会の優勝者は一瀬浩司氏であり、鈴木氏は北陸代表として名前が確認できる。
そのため、朝日アマ名人戦の全国優勝という肩書については、公開されている大会記録と紹介文の間に食い違いがある。鈴木氏の確実な主要実績としては、アマ王将戦連覇とグランドチャンピオン戦優勝を押さえておきたい。
【戦法解説】英春流・かまいたち戦法はなぜ独創的なのか
鈴木英春氏の名前を将棋ファンに広く知らしめた最大の要因は、独自に開発した「英春流」である。
英春流は、特定の囲いや一つの攻撃パターンだけを指す名称ではない。居飛車にも振り飛車にも対応する、幅広い序盤構想を含んだ総合戦法として紹介されている。
かまいたち戦法の特徴は定跡の常識を逆手に取ることかまいたち戦法は、相手が一般的な定跡を想定していることを利用し、予想外の序盤展開から主導権を握ろうとする戦法だ。
特に象徴的なのが、マイナビ出版の書籍でも紹介されている「必殺の19手定跡」である。
一般的な将棋では、飛車先の歩を交換することが序盤の重要な手段になる。しかし、英春流ではその交換を急がず、あるいは相手の歩交換をあえて防がない構想を採用する。
相手が通常の定跡感覚で進めてきた場合、19手という早い段階で優位な展開を目指せることが、この戦法の大きな特徴だ。
かまいたち戦法が評価された理由かまいたち戦法が注目された理由は、単に奇抜な初手や変わった駒組みにあるわけではない。
既存の定跡を深く理解したうえで、その前提を逆手に取るという発想に独創性がある。
また、鈴木氏はこの戦法を実際の大会で使い、アマ王将戦連覇という結果につなげた。理論だけでなく、競技実績によって戦法の実用性を示した点が重要だ。
現在の将棋では、AIによる研究や膨大な棋譜データの活用が一般的になっている。しかし、英春流が登場した時代には、序盤の常識を独自の研究によって覆すこと自体が大きな挑戦だった。
アマチュアの立場から独自の戦法体系を作り、全国大会で結果を残した鈴木氏の歩みは、プロ棋士だけが将棋の新しい可能性を生み出すわけではないことを示している。
【進化した戦法】カメレオン戦法とは?かまいたちとの違い
英春流には、かまいたち戦法だけでなく「カメレオン戦法」も存在する。
カメレオン戦法は、かまいたちを発展させた新しい構想として、鈴木氏がプロ棋士を倒すことを目標に開発した戦法だ。
相手に合わせて姿を変えるカメレオン戦法マイナビ出版の解説によると、カメレオン戦法は先手番なら初手▲9六歩、後手番なら初手△6二銀という、一見すると一般的な定跡から外れた出だしを採用する。
その後は相手の出方に応じて構想を変えていく。名前のとおり、固定された一つの戦型にこだわらず、状況に応じて変化する点が特徴だ。
特に、相手の得意戦法にそのまま付き合わず、自分のペースで対局を進めたい人にとって興味深い考え方といえる。
かまいたちとカメレオンの比較| 比較項目 | かまいたち戦法 | カメレオン戦法 |
|---|---|---|
| 基本的な性格 | 独自の序盤構想で主導権を狙う | 相手の出方に合わせて柔軟に変化 |
| 代表的な特徴 | 必殺の19手定跡 | 初手▲9六歩・△6二銀 |
| 戦法の方向性 | 相手の定跡感覚を逆手に取る | 戦型を固定せず自在に対応する |
| 対応範囲 | 居飛車・振り飛車の両方 | 相手に応じた多様な展開 |
| 位置づけ | 英春流の代表的な基礎戦法 | 英春流の発展形 |
両者に共通するのは、既存の定跡に従うだけではなく、自分から局面の方向性を作ろうとする姿勢だ。
英春流を学ぶ際には、単純に手順を暗記するだけでは不十分である。なぜその手を選ぶのか、相手の応手によって何を変えるのかという発想まで理解することが必要になる。
【著書と後進育成】英春流を広めた将棋指導と野原未蘭との関係
鈴木英春氏は、競技者としての実績だけでなく、著書や将棋教室を通じた普及活動にも力を注いできた。
鈴木英春の代表的な著書鈴木氏の著作には、自身の経験や研究をまとめた将棋の専門書がある。
- 『将棋泣き笑い』
- 『必殺!かまいたち戦法』
- 『必殺!19手定跡』
- 『必殺!右四間』
- 『必殺!陽動振飛車』
- 『英春流将棋問答』
- 『英春流 かまいたち&カメレオン戦法』
特に2019年11月21日にマイナビ出版から発売された『英春流 かまいたち&カメレオン戦法』は、英春流の全体像を理解するうえで重要な一冊だ。
224ページで構成され、かまいたち戦法の対振り飛車・対居飛車の考え方や実戦譜、カメレオン戦法の発展過程などが取り上げられている。棋譜データも付属する構成となっている。
また、第5章には「2人の後継者」という項目が設けられている。戦法を自分だけの技術として終わらせず、次の世代に伝えることも意識していたことがうかがえる。
野原未蘭との師弟関係鈴木氏の指導を受けた人物として知られるのが、富山県出身の女流棋士・野原未蘭だ。
野原氏は幼少期から将棋に取り組み、アマチュア時代には中学生名人戦優勝や女流アマ名人戦での活躍など、数々の実績を残した。
2020年の文春オンラインのインタビューでは、野原氏が小学生時代に鈴木氏の晩成塾へ入会した経緯が紹介されている。父親とともに将棋の戦い方を根本から見直すため、鈴木氏の指導を受けることになったという。
野原氏は英春流を実戦で使いこなした棋士の一人として知られ、2019年刊行の鈴木氏の著書にも直接の弟子として登場する。
ただし、野原氏は2020年の女流棋士デビュー後、森内俊之九段に師事している。鈴木氏との師弟関係は主にアマチュア時代の指導歴として理解するのが正確だ。
この関係は、英春流が単なる書籍上の戦法ではなく、実際に若い将棋指しへ伝えられてきたことを示す事例でもある。
【2026年最新】鈴木英春の現在は?晩成塾の閉塾と新しい将棋指導
鈴木英春氏の現在を知りたい人にとって、重要なのが金沢での活動だ。
2011年の金沢市中央倫理法人会の記録では、鈴木氏は1999年に金沢へ移住し、将棋教室「晩成塾」やテルメ金沢の将棋道場で指導していたことが紹介されている。
晩成塾とはどんな将棋教室だったのか晩成塾は、鈴木氏が主宰していた将棋教室である。
奨励会三段まで経験した鈴木氏から直接指導を受けられる場所として、将棋の実力向上を目指す子どもやアマチュア強豪が集まっていた。
2020年ごろの地元将棋関係者による紹介記事では、晩成塾が閉塾することになり、そこで将棋を学んでいた人たちが新たな活動場所を作った経緯が説明されている。
その一つが金沢市の正林寺子ども将棋教室だ。同教室では、鈴木氏による直接指導も行われていた。晩成塾が担っていた将棋指導の役割が、地域の別の場所へ引き継がれていったのである。
なお、2011年に紹介された晩成塾の所在地や開催時間を、2026年現在も利用できる情報として扱うことはできない。
2026年10月から駒みらい将棋スクールの講師に2026年9月4日、日本将棋連盟石川県支部連合会は「まなぶ将棋駒みらい将棋スクール」の開講を告知した。
その講師として紹介されたのが鈴木英春氏である。もう一人の講師は、全国学生名人戦準優勝の実績を持つ矢内悠翔氏だ。
スクールは2026年10月スタートとして案内され、入門者から高段者まで、子どもから大人までを対象にしている。
主な内容は次のとおりだ。
- 指導対局
- 詰将棋
- 対局後の感想戦
- 月4回・8回・12回から選べるコース
- 技術だけでなく礼儀やマナーも重視した指導
会場は金沢市泉野町の囲碁将棋サロン石心。会場の案内ページでも、鈴木氏は講師として掲載され、駒みらい将棋スクールの入会募集が続いている。
同ページには、火曜・金曜・土曜の講座や体験参加の案内も掲載されている。時間帯は告知ページと会場ページで若干の違いがあるため、参加を検討する場合は最新の案内を確認したい。
2026年の現在から見える鈴木英春の活動鈴木氏の現在の活動で注目すべきなのは、過去のタイトル実績を語るだけでなく、将棋を教える立場として活動が続いていることだ。
奨励会時代に身につけた高度な技術、独自の戦法研究、アマチュア大会で培った実戦経験。それらを次の世代に伝えることは、長年の活動と一貫している。
2019年の著書で英春流の後継者を取り上げ、2020年ごろには晩成塾から地域の将棋教室へ指導の場が広がり、2026年には新しいスクールの講師として紹介された。
現在の鈴木氏を理解するには、現役時代の勝負師としての顔だけでなく、将棋文化を支える指導者としての側面にも注目する必要がある。
【プロの結論】鈴木英春の本当の功績は棋歴と戦法開発の両立にある
鈴木英春氏の経歴を評価するとき、奨励会三段で退会したという一点だけに注目するのは適切ではない。
将棋界には、プロ棋士になることを目標に奨励会で研鑽を積みながら、四段昇段に届かず退会する人がいる。しかし、鈴木氏の場合、その後に独自の戦法を確立し、アマチュア王将戦連覇という結果を残した。
評価すべき功績は、大きく三つある。
- 競技実績:1987年・1988年のアマ王将戦連覇と1989年のグランドチャンピオン戦優勝。
- 戦法開発:かまいたち戦法とカメレオン戦法を中心とする英春流を体系化したこと。
- 後進育成:晩成塾や著書、新しい将棋スクールを通じて将棋の技術を次世代に伝えていること。
特に興味深いのは、英春流が定跡を単に否定する戦法ではない点だ。既存の将棋の考え方を理解したうえで、相手の予想を外し、自分の得意な展開へ持ち込むことを重視している。
英春流を学ぶ価値があるのは、序盤の手順だけでなく、将棋に対する固定観念を見直すきっかけになるからだ。
一方、これから英春流を勉強する人は、すべての定跡を捨てればよいと考えるべきではない。基本的な駒組みや囲い、攻守のバランスを理解したうえで、英春流独自の発想を取り入れることが上達への近道になる。
鈴木英春氏は、プロ棋士という肩書こそ持たないものの、アマチュア将棋界に独自の戦法体系を残した人物である。2026年現在も将棋指導に携わっていることは、その活動が過去の実績だけで終わっていないことを示している。
【よくある質問】鈴木英春に関するFAQ
Q1:鈴木英春は現在何歳ですか?
A1:1950年4月11日生まれのため、2026年11月現在は76歳です。
Q2:鈴木英春はプロ棋士だったのですか?
A2:プロ棋士ではありません。日本将棋連盟の奨励会に16年間在籍し、三段まで昇段しましたが、1981年に年齢制限で退会しています。その後はアマチュアとして活躍しました。
Q3:かまいたち戦法とカメレオン戦法の違いは何ですか?
A3:かまいたち戦法は「必殺の19手定跡」に代表される独自の序盤構想が特徴です。カメレオン戦法は相手の出方に応じて戦型を柔軟に変える発展的な構想です。どちらも英春流を代表する戦法です。
Q4:鈴木英春は2026年現在も将棋を教えていますか?
A4:はい。2026年9月の日本将棋連盟石川県支部連合会の告知では、10月スタートの駒みらい将棋スクールの講師として紹介されています。
Q5:晩成塾は現在も営業していますか?
A5:晩成塾については、2020年ごろの地元関係者による記事で閉塾したことが紹介されています。2026年現在の鈴木氏の指導活動については、駒みらい将棋スクールの案内を確認するのが適切です。
まとめ:鈴木英春の現在と英春流が将棋界に残したもの
鈴木英春氏は、奨励会三段で退会した後、独自のかまいたち戦法を武器にアマ王将戦を2連覇し、グランドチャンピオン戦でも優勝した将棋指しである。
その後も英春流を体系化し、カメレオン戦法の開発や著書の刊行、晩成塾での指導を通じて、将棋界に独自の足跡を残してきた。
2026年現在は76歳。金沢市の駒みらい将棋スクールで講師として紹介されており、将棋指導の活動も続いている。
鈴木英春という人物を知るうえで重要なのは、プロ棋士になれなかった経歴だけで評価しないことだ。競技者としての実績、戦法を生み出す研究者としての能力、そして後進を育てる指導者としての活動。この三つを合わせて見ることで、英春流が現在まで語り継がれる理由が理解できる。
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