2026年10月30日現在、サウナ死亡事故をめぐって大きな注目を集めているのが、2025年12月15日に東京都港区赤坂の個室サウナ「SAUNATIGER(サウナタイガー)」で発生した火災だ。利用客だった30代の夫婦2人がサウナ室内で倒れているところを発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。事故では、サウナ室のドアノブが外れて室内から出られなくなった可能性に加え、非常用ブザーの受信盤の電源が切れていたことも明らかになっている。
事故から約10か月が経過した現在、消費者庁の事故情報データバンクには重大事故として記録され、東京都と東京消防庁による個室サウナ42施設の実態調査、厚生労働省による全国調査も実施された。加えて、2026年10月13日には港区でサウナの安全基準を強化する条例改正が施行されている。事故の経緯、出火原因と死亡との関係、調査結果、そして今後の再発防止策を時系列で整理する。
【事故の概要】2025年12月15日、赤坂の個室サウナで何が起きたのか?

事故が発生したのは、東京都港区赤坂6丁目にある会員制の個室サウナ「SAUNATIGER」だ。
2025年12月15日の正午過ぎ、施設内で火災が発生。消防への通報を受けて東京消防庁などが出動し、サウナ室内で倒れていた男女2人が発見された。
死亡したのは、川崎市で美容室を経営していた松田政也さん(当時36歳)と、妻の陽子さん(当時37歳)。
2人は救急搬送されたものの、搬送先の病院で死亡が確認された。
共同通信やテレビ朝日の報道によると、2人はサウナ室の出入口付近で発見され、男性が女性に覆いかぶさるような状態だったという。
2人の身体には肩や背中などにやけどの痕が確認されていた。現場ではサウナ室の座席や背もたれの一部が焼け、焼けたタオルも見つかっている。
事故の特徴は、火災そのものだけではない。
サウナ室から脱出できなかった可能性と、室内から助けを求めるための非常用設備が機能しなかった問題が重なっていたことが、その後の捜査で明らかになった。
現場で確認された3つの重大な問題事故後の現場検証や報道から、特に注目されたのは次の3点だ。
- サウナ室の扉の取っ手が内側と外側の両方で外れていた。
- 非常用ボタンが押された形跡があったものの、受信盤の電源が入っていなかった。
- 非常用ブザーの受信盤が設置された事務室に従業員がいなかったと報じられた。
通常、サウナ室は高温環境であるため、利用者が体調不良や火災などの異常を感じた場合、速やかに外へ出られることが大前提になる。
しかし、この事故では扉を開けられない可能性があり、さらに外部へ危険を伝える設備も機能しなかった。
施設を利用する人にとって、非常に深刻な問題が同時に存在していたことになる。
【時系列まとめ】夫婦死亡事故の発生から2026年10月の現在まで
事故の全体像を理解するには、火災当日の出来事だけでなく、その後の警視庁の捜査、行政による調査、条例改正までを追う必要がある。
赤坂サウナ死亡事故の経緯一覧運営会社のSAUNA&Co株式会社は、2025年12月15日付の声明で、火災によって利用客2人が死亡したことを公表した。
また、消防・警察による調査に協力し、原因究明と再発防止に取り組むと説明。施設については、当面営業を停止すると発表している。
12月17日付の追加説明では、サウナタイガーの事故について謝罪し、関係者への問い合わせ窓口を会社側に一本化することも伝えた。
同社の公式サイトで確認できる事故関連の声明には、当面の営業停止が記載されている。2026年10月30日現在、同サイト上で確認できる事故関連情報からは、営業再開日や最終的な処分についての新たな確定発表は確認できない。
【原因調査の現在】ドアノブ故障と非常用ブザーの作動不良はなぜ重大なのか?
今回の事故では、火災の発生原因、室内から脱出できなかった原因、非常用設備が機能しなかった原因を分けて考える必要がある。
それぞれは関連しているものの、同じ問題ではない。
1. サウナ室のドアノブが外れて閉じ込められた可能性事故後の現場検証では、夫婦が利用していたサウナ室の扉について、内側と外側の取っ手がともに外れていたことが報じられた。
扉の取っ手が外れたことで、室内から扉を開けられなくなった可能性がある。
テレビ朝日の報道では、消防隊員が現場に到着した際、外れていた木製の取っ手をはめ直して室内に入ったとされている。
加えて、別の個室でもドアノブのぐらつきが確認されたという。
つまり、問題は事故が発生した一室だけに限定されていたとは限らない。
2026年2月19日の共同通信報道では、運営会社の社長が捜査関係者に対し、2024年12月の就任以降、ドアノブの脱落やぐらつきが複数回あったと説明したことが伝えられた。
また、工事業者から扉を押し戸に変更する提案があったものの、前社長に伝えた際、密閉性を理由に断られたと社長が説明したという。
他の個室でも利用客が一時的に閉じ込められ、外にいた別の客に救出された事例があったとの関係者証言も報じられている。
これらは運営会社側の説明や関係者証言として報道された内容であり、刑事責任の確定とは区別する必要がある。しかし、安全管理上の重要な捜査対象であることは間違いない。
2. 非常用ブザーは設置されていても機能しなかったもう一つの重大な問題が非常用ブザーだ。
事故が起きた個室には、利用者が緊急時に押すための非常用ボタンが設置されていた。
しかし、テレビ朝日の2025年12月18日の報道によると、1階の事務室にあった受信盤の電源が入っておらず、ボタンを押しても外部に警報を伝えられない状態だった。
加えて、警視庁による事情聴取で、オーナーが受信盤の電源をこれまで入れたことがないと説明したと報じられた。
12月20日の報道では、非常用ボタンは電源が入っていれば正常に作動することも確認されたという。
ここで重要なのは、ボタンそのものの機械的な故障と、システム全体の作動不良は別問題だということだ。
非常用ボタンが壁に取り付けられているだけでは、安全対策として十分ではない。
- 利用者がボタンを押せる。
- 警報が受信盤まで届く。
- 受信盤から従業員に異常が伝わる。
- 従業員が実際にサウナ室へ駆け付ける。
この一連の仕組みが成立して初めて、非常用設備として機能する。
今回の事故では、設備の存在と実際に助けを呼べる状態との間に、大きな隔たりがあった。
3. 火災の原因はタオルとサウナストーンの接触か出火原因については、サウナ室に残されていた焼けたタオルが重要な手掛かりとなった。
テレビ朝日は2025年12月18日、現場検証などから、タオルがサウナストーンに触れたことによって出火した可能性があると報じている。
ただし、タオルがどのような経緯でサウナストーンに接触したのか、火災が発生した正確なタイミングなどは別の捜査事項となる。
報道では、閉じ込められた利用客が外部に異常を知らせようとしてタオルを燃やした可能性にも触れられていたが、これは捜査関係者の見方として伝えられたものであり、確定した事実ではない。
したがって、火災原因を単純に「タオルの不注意」と結論づけることはできない。
4. 夫婦の死因は何だったのか死亡原因についても、火災原因とは分けて理解する必要がある。
FNNプライムオンラインの2025年12月17日の報道によると、司法解剖では2人の死因は不詳とされた一方、高温環境に長時間さらされたことによる熱中症、または焼死の可能性が高いと伝えられた。
2人の身体にはやけどの痕があったものの、報道上、それだけで死亡に至ったと確定されたわけではない。
高温の密室から脱出できなかったこと、火災による熱や煙の影響、非常用設備が機能しなかったことなど、複数の要素が死亡に至る経緯の検証対象となる。
出火の原因と、閉じ込められた原因、死亡に至った医学的原因は、それぞれ別々に検証されなければならない。
【東京都42施設調査】サウナの安全点検で判明した実態とは?
赤坂の事故を受け、東京都は東京消防庁と合同で個室サウナの実態調査を実施した。
調査結果は2026年4月9日に公表されている。
調査対象は42施設、扉に開閉不良はゼロ調査対象は、東京都のうち特別区、八王子市、町田市を除いた地域にある、旅館業営業施設および公衆浴場のうち個室サウナを有する42施設だ。
実施期間は2026年1月19日から2月末まで。
調査では、サウナ室の扉が正常に開閉できるか、非常用ブザーが設置されているか、ブザーがない場合はどのような安全対策を講じているかなどが確認された。
結果は次のとおりだ。
東京都の個室サウナ42施設調査42施設
調査対象0施設
扉の開閉に支障あり17施設
非常用ブザー等を設置25施設
非常用ブザー等を未設置
出典:東京都「個室サウナの実態調査について」(2026年4月9日)
特に注目すべきは、42施設すべてで扉の開閉に支障が確認されなかった一方、非常用ブザー等の設置状況には差があった点だ。
設置状況をさらに細かく見ると、以下のようになる。
- 非常用ブザー設置:13施設
- インターホンなど代替設備を設置:4施設
- 非常用ブザー等の設置なし:25施設
- 未設置25施設のうち、設置予定あり:3施設
- 設置予定なし:22施設
東京都は、ブザーの設置予定もない22施設についても、扉の構造や従業員の対応体制を確認し、それぞれの施設の状況に応じた安全対策が講じられていることを確認したとしている。
したがって、ブザーがない25施設すべてに安全上の問題があったという意味ではない。
また、この42施設調査は東京都全域を一括して調べたものではない。23区、八王子市、町田市は対象から除外されている。自治体ごとに管轄や調査が分かれている点にも注意したい。
全国13,052施設の調査では何が分かった?東京都の調査に続いて、厚生労働省は全国のサウナ施設についても安全管理状況を確認した。
2026年4月21日付の通知「旅館業及び公衆浴場業におけるサウナ施設への安全対策の徹底について」に添付された調査結果では、次の数字が公表されている。
全国のサウナ施設の安全対策状況
| 確認項目 | 旅館業 | 公衆浴場業 |
|---|---|---|
| 調査対象 | 5,240施設 | 7,812施設 |
| 緊急時の従業員との連絡・駆けつけ体制 | 81.3% | 93.0% |
| 緊急時に開閉できる扉の構造 | 94.7% | 95.9% |
| 非常用ブザー設置率 | 63.5% | 85.8% |
出典:厚生労働省、2026年4月20日時点。157自治体のうち4自治体は未回答。
この結果から、特に注目したいのは旅館業と公衆浴場業の違いだ。
非常用ブザーの設置率は、旅館業が63.5%、公衆浴場業が85.8%。約22ポイントの差がある。
従業員の緊急対応体制についても、旅館業81.3%に対して公衆浴場業は93.0%だった。
つまり、サウナという設備自体が同じでも、営業形態や許可区分によって安全対策の整備状況に差が存在していた。
今回の事故が発生した施設は、港区の公表によれば2022年7月に旅館業法に基づく許可を受けていた。
この制度上の違いが、非常用ブザーの取り扱いを考えるうえで重要な背景となっている。
消費者庁の事故情報データバンクにも重大事故として登録サウナ事故は、赤坂の火災だけではない。
消費者庁の「事故情報データバンク」では、2024年4月末時点でサウナ浴に関する事故情報が78件、受傷者数が82人登録されていた。
事故の内容を見ると、やけどが31件、切り傷・擦り傷などが24件、骨折・打撲が14件となっている。
消費者庁は、長時間の利用や無理な入浴、体調に合わないサウナ浴などにも注意を呼び掛けている。
また、赤坂の死亡事故についても、事故情報ID「0000537129」として登録された。
| 登録項目 | 内容 |
|---|---|
| 事故発生日 | 2025年12月15日 |
| 発生場所 | 東京都 |
| 施設 | サウナ施設 |
| 被害人数 | 2人 |
| 被害状況 | 死亡2人 |
| 事故の概要 | 扉が開かなくなった室内で利用者2人が倒れていた |
| 登録年月日 | 2026年3月10日 |
| 原因調査状況 | 原因調査中との記載 |
この記録で重要なのは、事故が単なる設備故障の情報ではなく、死亡者2人を伴う重大事故として公的なデータベースに登録されていることだ。
なお、消費者庁の事故情報データバンクは、情報提供元や登録経路によって事実確認の程度が異なる。個別の事故記録と、警察による最終的な捜査結果は区別して読む必要がある。
【2026年の安全対策】港区の条例改正で非常用ブザーは義務化された?
2026年10月現在、赤坂の死亡事故を受けた行政対応で最も大きな動きが、港区による条例改正だ。
事故以前から存在していた安全基準の課題を受け、港区はサウナ施設に設ける設備や扉の構造について、新しい基準を定めた。
2026年10月13日に新条例が施行港区議会は2026年10月9日、「港区旅館業法施行条例及び港区公衆浴場法施行条例の一部を改正する条例」を原案可決した。
その後、2026年10月13日に改正条例が施行されている。
改正内容は、サウナ利用者の安全に直接関係するものだ。
主な基準は次の5項目となる。
1. サウナ室内の温度を確認できるよう、適切な位置に温度計を設置する。
2. サウナ室内の状況を外から確認できる窓などを設ける。
3. 利用者が使用しやすい場所に非常用ブザーを設置する。
4. 非常用ブザーを定期的に点検し、使用中に正常作動することを確認する。
5. サウナ室の扉は内側から容易に開けられる構造とし、閉じ込めにつながるラッチなどを設けない。
加えて、事故や緊急事態が発生した場合に、迅速に対応できる体制を整えることも求められている。
既存施設にはいつまでに対応が必要?今回の条例改正で重要なのが、既存施設に対する経過措置だ。
新しい施設と既存施設では、基準への対応期限が異なる。
港区の既存サウナ施設に対する対応期限
扉の開閉構造
内側から容易に開けられ、閉じ込めにつながる装置がない構造への対応。
非常用ブザーの設置・点検
非常用ブザーの設置と、定期的な作動確認への対応。
既存施設のうち、新基準を満たしていない施設に対する経過措置。新設施設は施行日以降の基準に従う。
この改正によって、港区では旅館業と公衆浴場業の両方について、非常用ブザーや扉の安全基準が明確化された。
赤坂の事故が起きた施設は旅館業の許可を受けていたため、今回の改正は特に重要な意味を持つ。
東京消防庁と厚生労働省による全国的な安全対策安全対策の強化は港区だけにとどまらない。
東京消防庁は東京都と合同で個室サウナの実態調査を実施し、施設の扉や避難経路、緊急時の対応体制などを確認した。
加えて、消防庁は2026年4月21日付で、衛生主管部局と消防関係機関が連携してサウナ施設の安全対策を徹底するよう通知を出している。
通知では、個室サウナだけでなく、その他のサウナ施設も対象としている。
特に重視されているのは次の点だ。
- 緊急時に従業員へ連絡できること。
- 従業員が速やかに現場へ駆け付けられること。
- サウナ室の扉が緊急時に開閉できる構造であること。
- 安全対策に不備がある施設に対して必要な指導を行うこと。
厚生労働省の通知では、旅館業の衛生等管理要領に非常用ブザーの設置が明記されていないことも説明されている。その一方、緊急時の安全対策として活用できる設備であることを周知し、必要に応じて指導するよう求めた。
これは、単にブザーを設置すればよいという考え方から、施設の構造と人員配置を含めた総合的な安全管理へ移行していることを示している。
【再発防止策】サウナ室の閉じ込め事故を防ぐには?
今回の事故を受けて、利用者側にも施設の安全性を見極める視点が求められる。
もちろん、施設の設備管理や点検は事業者の責任だ。しかし、利用者が入室前に確認できる項目もある。
利用者が入室前に確認したい5つのポイント
サウナ利用前の安全チェックリスト
{@body const checks = ["扉を内側から無理なく開けられるか確認する","ドアノブにぐらつきや破損がないか確認する","非常用ブザーやインターホンの場所を確認する","緊急時にスタッフへ連絡する方法を確認する","スタッフが異常を把握し、駆け付けられる体制か確認する"]}
{@body const [done,setDone] = DIL.useState()}
{done.length} / {checks.length} 項目を確認
{Math.round(done.length/checks.length100)}%
{#each checks as item,i}
setDone(old=>v?[...old,i]:old.filter(x=>x!==i))}>{item}
{/each}
特に重要なのは、入室前に扉が正常に開くか確認することだ。
少しでも引っ掛かりや異常を感じる場合は、そのまま利用せず、スタッフに確認してもらいたい。
また、非常用ブザーについては、ボタンの場所を知っているだけでは不十分だ。実際に異常を知らせることができる設備なのか、スタッフが警報を受信できる状態なのかが重要になる。
施設運営者が実施すべき安全点検事業者側には、日常点検と定期点検を組み合わせた管理体制が求められる。
| 点検項目 | 確認内容 |
|---|---|
| サウナ室の扉 | 内側から容易に開閉できるか |
| ドアノブ・取っ手 | 破損、緩み、脱落の兆候がないか |
| 非常用ブザー | 電源、配線、受信盤、警報音が正常か |
| 通報先 | 警報をスタッフが確実に受信できるか |
| 従業員の配置 | 異常発生時に速やかに駆け付けられるか |
| 火災対策 | ストーブ周辺にタオルなどの可燃物が接触していないか |
| 避難経路 | 出入口や通路に障害物がないか |
| 点検記録 | 点検日時、担当者、不具合と修繕内容を記録しているか |
非常用ブザーについては、ボタンを押す試験だけでなく、受信盤の電源や警報の伝達先まで含めた確認が必要になる。
今回の事故では、ボタンが設置されていたにもかかわらず、受信盤の電源が入っていなかったと報じられた。
この事実からも、設備の設置確認と実際の作動確認は別々に行う必要がある。
また、扉の不具合が見つかった場合には、単に部品を締め直すだけで済ませず、扉の構造そのものが緊急時の避難に適しているか検討すべきだ。
サウナ利用中に異常を感じた場合の対応サウナ室内で扉が開かない、非常用設備が反応しない、煙や異常な熱を感じるなどの状況が発生した場合は、まず安全確保を優先する。
- 非常用ブザーやインターホンでスタッフに異常を知らせる。
- 声や扉をたたく動作でも周囲に危険を伝える。
- 携帯電話が利用できる場合は、施設の連絡先や緊急通報を利用する。
- 火災や煙が発生した場合は、熱源や煙から離れ、脱出を最優先する。
- 脱出できない場合は、助けを求め続け、消防への通報につながる手段を確保する。
施設側の対応を待つだけではなく、異常を感じた段階で早めに知らせることが大切だ。
加えて、消費者庁はサウナ浴そのものについても、体調に合わせた利用や無理な長時間入浴を避けるよう注意喚起している。めまいや体調不良が起きた場合には、我慢して利用を続けてはいけない。
【プロの結論】赤坂サウナ死亡事故が示した本当の安全基準
今回の事故から読み取れる最大の教訓は、サウナ施設の安全性を設備の豪華さや清潔感だけで判断してはいけないということだ。
個室サウナは、周囲の視線を気にせず利用できる一方、他の利用者が異常に気付く機会が少なくなる。
一般的な大浴場であれば、周囲にいる利用客や従業員が異常に気付く可能性がある。しかし、完全個室では、利用者が倒れても外部から発見されるまで時間がかかる場合がある。
この構造的な弱点を補うには、複数の安全対策を組み合わせる必要がある。
安全性を左右するのは設備の数より連動性今回の事故を踏まえると、安全対策は次の3層で考えると分かりやすい。
第1層:脱出できる構造
最優先は、利用者が自力で外へ出られることだ。停電や部品の脱落が発生しても、扉が開かなくなる事態を避ける構造が必要になる。
第2層:異常を伝える仕組み
非常用ブザーやインターホンなど、利用者が助けを求めるための設備を整える。加えて、電源や受信盤の状態を定期的に確認しなければならない。
第3層:人による迅速な救助
警報を受け取った後、従業員が速やかに現場へ駆け付けられる体制が必要だ。無人運営や遠隔管理を採用する場合には、それに対応する緊急対応手順が不可欠となる。
この3つが独立して機能すれば、一つの設備に不具合が発生した場合でも、直ちに重大事故につながる危険を減らせる。
利用者が施設を選ぶ際の判断基準| 判断基準 | 安全性を評価するポイント |
|---|---|
| 扉の構造 | 内側から簡単に開けられる |
| 非常用設備 | 使いやすい位置に設置されている |
| 点検体制 | 定期的な動作確認を実施している |
| スタッフ対応 | 緊急時の連絡先と駆け付け体制が明確 |
| 情報公開 | 安全管理や事故対応について説明できる |
料金が高い、会員制である、有名人がPRに関わった、高級ブランドの設備を使っているといった要素は、安全性の証明にはならない。
実際、今回の事故が発生した施設も会員制の高級個室サウナだった。
利用者が本当に確認すべきなのは、非常時に扉が開くか、警報が届くか、スタッフが救助に来るかという基本的な機能だ。
【サウナ死亡事故に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:2025年12月15日の赤坂サウナ死亡事故の原因は何ですか?
火災については、サウナストーンにタオルが触れたことで出火した可能性が報道されている。一方、タオルが接触した経緯や死亡に至った詳細な因果関係は別の問題であり、消費者庁の事故情報データバンクには原因調査中との記載がある。
Q2:夫婦が亡くなった原因はドアノブの故障ですか?
ドアノブが内側と外側の両方で外れていたことから、サウナ室に閉じ込められた可能性が指摘されている。また、非常用ブザーの受信盤の電源が切れていたことも報道された。ただし、閉じ込め、火災、医学的な死因の関係は区別して考える必要がある。
Q3:東京都の個室サウナ42施設調査では何が分かりましたか?
42施設すべてで扉の開閉に支障は確認されなかった。一方、非常用ブザー等が設置されていたのは17施設で、25施設には設置されていなかった。設置されていない施設についても、東京都は扉の構造や従業員の体制などに応じた安全対策を確認している。
Q4:2026年10月現在、サウナの非常用ブザー設置は義務化されていますか?
港区では2026年10月13日施行の条例改正により、旅館業と公衆浴場業のサウナ施設に非常用ブザーの設置と定期点検が求められるようになった。既存施設には2027年9月30日までの経過措置がある。全国一律の同じ条例が施行されたという意味ではなく、自治体ごとの制度も確認する必要がある。
Q5:サウナ室に閉じ込められる事故を防ぐにはどうすればよいですか?
利用前に扉が内側から簡単に開くか、ドアノブに不具合がないか、非常用ブザーの位置が分かるかを確認する。少しでも異常があれば利用を中止し、施設スタッフに確認を求めることが大切だ。
まとめ:サウナ死亡事故のその後と2026年以降の安全対策
2025年12月15日に発生した赤坂の個室サウナ死亡事故は、サウナ施設における設備管理と緊急対応体制のあり方を大きく問い直す出来事となった。
利用客の松田政也さんと妻の陽子さんが亡くなった事故では、扉の取っ手の脱落、非常用ブザーの受信盤の電源停止、従業員の対応体制など、複数の問題が捜査や報道で明らかになった。
2026年には東京都の42施設調査、厚生労働省による全国13,052施設の状況確認が実施され、サウナ施設の安全管理に地域や営業形態による違いがあることも分かった。
そして、2026年10月13日には港区の条例が改正され、非常用ブザーの設置・点検や、内側から容易に開けられる扉の構造などが新たな基準として定められた。
今後の焦点は、こうした制度が実際の施設運営に反映されるかどうかだ。
サウナの安全性は、平常時の快適さではなく、火災や設備故障などの緊急時に利用者の命を守れるかどうかで判断される。
2027年に向けた既存施設の改修、非常用設備の点検、従業員の対応訓練が着実に進むことが、同様の悲劇を繰り返さないための重要な条件となる。亡くなった2人の事故を一時的なニュースで終わらせず、サウナ業界全体の安全基準を見直す契機にできるかが問われている。