みかんの白い部分を正しく理解するには、果実の構造を知る必要があります。
普段はひとまとめに「白い筋」と呼びがちですが、実際には複数の組織が関係しています。
白い筋の正体は「維管束」農林水産省の相談窓口が公開している解説では、房の外側に葉脈のようについている白い筋を「維管束」と説明しています。
維管束は、植物の葉や根から吸収した水分や養分を果実に運ぶための通路です。
みかんの果肉は、小さな果汁の粒が集まってできています。それぞれの粒は房の外側にある維管束とつながり、水分や養分を受け取っています。
つまり、白い筋は果実を成長させるために欠かせない組織なのです。
アルベドとは何か?アルベドとは、みかんの外側にあるオレンジ色の皮の内側に位置する、白い海綿状の組織です。植物学的には中果皮と呼ばれます。
グレープフルーツやレモンなどをむいたときに見える、厚みのある白い部分をイメージすると分かりやすいでしょう。
温州みかんでは、この中果皮が比較的発達していないため、白い筋状の組織として目立つことがあります。
千葉大学園芸学部の丸尾達准教授による「子供の科学」の解説でも、アルベドと維管束の関係が説明されています。
みかんの白い部分を構成する組織の比較それぞれの特徴を整理すると、次のようになります。
| 部位・名称 | 位置・見た目 | 主な役割 |
|---|---|---|
| フラベド(外果皮) | オレンジ色の外側の皮 | 香りや色に関係する |
| アルベド(中果皮) | 皮の内側の白いスポンジ状部分 | 果皮を構成する組織 |
| 維管束 | 房の表面にある白い筋 | 水分や養分を運ぶ |
| じょうのう膜 | 一房を包む薄い袋 | 果汁の粒を包み保護する |
| 砂じょう | 果肉の小さな粒 | 果汁を蓄える |
このように、白い筋とアルベドは密接に関係していますが、厳密には同じ名称ではありません。
また、日常的な説明では白い筋までアルベドと呼ぶこともあります。農林水産省の食べ方特集でも、白い筋をアルベドと表現しています。
【栄養を検証】みかんの白い筋には食物繊維やヘスペリジンが含まれる?

白い部分を取り除かずに食べるメリットは、果肉以外の組織に含まれる栄養成分も一緒に摂取できることです。
特に注目したいのが、食物繊維、ペクチン、ヘスペリジンの3つです。
1.食物繊維は房の周囲にも含まれているみかんの白い筋や薄皮には、食物繊維が含まれています。
食物繊維は人間の消化酵素では十分に分解されない食品成分で、腸内環境や便通を整える食生活に役立ちます。
農林水産省も、みかんの白い筋には食物繊維が豊富に含まれると紹介しています。
白い筋を丁寧に取り除くと、こうした成分を含む部分まで捨てることになります。
2.ペクチンは水溶性食物繊維の一種ペクチンは、植物の細胞壁などに存在する多糖類で、水溶性食物繊維の一種です。
みかんでは、果皮の内側にあるアルベドや房を包むじょうのう部分にも含まれています。
和歌山県農林水産部がまとめた「和歌山県産食材機能性ガイド」では、みかんのペクチンについて、次のように解説しています。
- 水溶性食物繊維の一種である。
- 腸内環境や便通を整える働きに関係する。
- 食品中の成分として、食生活に取り入れられている。
ペクチンはジャムのとろみを生み出す成分としても知られています。水分を保持し、ゲル状になる性質があるため、食品加工にも利用されています。
3.ヘスペリジンはビタミンPと呼ばれるポリフェノールみかんの白い部分で注目される成分が「ヘスペリジン」です。
ヘスペリジンは柑橘類に含まれるフラボノイドの一種で、ポリフェノールに分類されます。
歴史的にはビタミンPという名前でも知られています。
ただし、ここで注意したいのは、ビタミンPは現在の栄養学で正式なビタミンとして分類されているものではないという点です。
日本ビタミン学会のビタミンQ&Aでも、ビタミンPは現在の分類ではフラボノイドに相当し、ビタミンの定義には当てはまらないと説明されています。
ヘスペリジンについては、次のような研究が行われています。
- 毛細血管の透過性や脆弱性との関係
- 抗酸化作用に関する研究
- 血流や脂質代謝との関係
ただし、これらは成分の研究であり、白い筋を食べれば特定の病気を予防できるという意味ではありません。通常の食事で摂取する場合と、成分を抽出・濃縮した研究とは区別する必要があります。
白い部分を食べるメリットを整理| 栄養成分 | 多く含まれる部分 | 食生活における特徴 |
|---|---|---|
| 食物繊維 | 白い筋・薄皮 | 腸内環境や便通を整える食生活に役立つ |
| ペクチン | アルベド・じょうのう | 水溶性食物繊維の一種 |
| ヘスペリジン | 中果皮・じょうのうなど | 柑橘類に含まれるポリフェノール |
| ビタミンC | 果肉など | 皮膚や粘膜の健康維持を助ける |
| β-クリプトキサンチン | 果肉 | 骨の健康との関係が研究されている |
なお、白い筋だけを取り出した栄養成分の量と、みかん全体の可食部100g当たりの数値は別物です。文部科学省の日本食品標準成分表では、果肉やじょうのうなどの食品区分で成分値が示されていますが、白い筋だけの摂取量をその数値から直接計算することはできません。
【実践編】みかんの白い筋は取るべき?きれいに取り除く方法
栄養面では白い筋を残すメリットがありますが、食感や見た目が気になる人もいるはずです。
では、実際にはどう食べるのがよいのでしょうか。
白い筋は無理に取らなくてもよい基本的に、みかんの白い筋は食べても問題ありません。
農林水産省の食べ方特集でも、白い筋には食物繊維やビタミンPなどの栄養成分が含まれると紹介されています。
そのため、特別な理由がなければ、白い筋を残したまま食べる方法がおすすめです。
一方、次のような場合は取り除いても構いません。
- 白い筋の口当たりが苦手な人
- 果肉だけを使ったデザートを作りたい人
- 見た目をきれいに仕上げたい人
- 子どもなどが食感を嫌がる場合
栄養を意識することも大切ですが、無理なく食べ続けられる方法を選ぶことも大切です。
みかんの白い筋を簡単に取る方法白い筋を取りたい場合は、次の方法を試してみてください。
方法1:ヘタ側から皮をむく
農林水産省が紹介している方法です。
1. みかんのヘタがある側から皮をむく。
2. 外皮を果肉からゆっくりはがす。
3. 房についている白い筋を指先で軽く取り除く。
農林水産省によると、ヘタ側からむくことで白い筋を取りやすくなります。
方法2:指先で優しく取り除く
1. みかんを一房ずつに分ける。
2. 房の外側にある太い筋を指でつまむ。
3. 果肉を傷つけないように、少しずつ取り除く。
4. 細かい筋は無理に取らず、残ったままでもよい。
白い筋を完全に取り除こうとして果肉を強く押すと、果汁が出てしまいます。力を入れずに作業するのがポイントです。
方法3:薄皮ごと取り除く
白い筋だけでなく、房を包む薄皮も苦手な場合は、房の膜に沿って丁寧に果肉を取り出す方法があります。
ただし、通常のみかんであれば、薄皮まで取り除く必要はありません。
白い筋を残したまま食べるおすすめの方法白い筋の食感が気になる人は、食べ方を工夫すると取り入れやすくなります。
- ヨーグルトに入れる: 一房ずつ小さく分けて混ぜる。
- スムージーにする: 果肉ごとミキサーにかける。
- フルーツゼリーにする: 果肉を小さく分けてゼリーに加える。
- そのまま食べる: 白い筋も薄皮も含めて、みかん本来の食感を楽しむ。
特にヨーグルトやスムージーは、白い筋の存在が気になりにくい食べ方です。
【苦味の真相】みかんの白い部分が苦い理由は?
白い筋を食べたとき、少し苦みを感じることがあります。
このため「白い筋には苦い成分があるのでは」「取り除いたほうがおいしいのでは」と疑問に思う人もいるでしょう。
実際、柑橘類にはさまざまなフラボノイドなどが含まれています。
苦味に関係するナリンギンとリモニン柑橘類の苦味に関係する代表的な成分として、次の2つが知られています。
ナリンギン
フラボノイドの一種で、グレープフルーツなどに含まれる苦味成分です。
リモニン
柑橘類に含まれるリモノイド系の成分で、苦味に関係しています。
ただし、柑橘類ならどの種類にも同じように含まれるわけではありません。
農研機構の九州沖縄農業研究センターが紹介する研究成果では、温州みかんやポンカンなどと、河内晩柑や晩白柚などで苦味成分の構成に違いがあることが示されています。
特に、分析対象となった温州みかんでは、ヘスペリジンとナリルチンは苦味のない成分として紹介され、リモニンも検出されていませんでした。
つまり、ヘスペリジンそのものが、みかんの白い筋の苦味の原因だと考えるのは正確ではありません。
白い筋の苦味は食べてはいけないサイン?通常の白い筋に多少の苦味や独特の食感があっても、それだけで食べられないということにはなりません。
ただし、次のような状態には注意してください。
- 果実にカビが生えている。
- 異臭がする。
- 果肉が著しく変色している。
- 腐敗して柔らかくなっている。
こうした場合は白い筋だけでなく、果実そのものを食べないようにしましょう。
白い筋の苦味と、腐敗による異常な味や臭いは区別することが大切です。
【プロの結論】みかんの白い部分は残して食べるのがおすすめ
みかんの白い部分について、栄養と植物の構造の両面から整理すると、食べるか取り除くかの判断基準が見えてきます。
特に覚えておきたいのは、白い筋が単なる不要な繊維ではないということです。
植物の成長に必要な水分や栄養を運ぶ維管束であり、アルベドやじょうのうなどとともに、果実を構成する大切な組織です。
白い筋を食べるのがおすすめの人- 食物繊維を含む食品を意識して取り入れたい人
- ペクチンやヘスペリジンなどの成分にも関心がある人
- みかんをできるだけ無駄なく食べたい人
- 薄皮や白い筋の食感が気にならない人
- 白い筋の口当たりがどうしても苦手な人
- 果肉だけを使った料理やデザートを作りたい人
- 食べやすさを優先したい人
栄養成分を残すことだけを優先して、苦手な食べ方を我慢する必要はありません。
大切なのは、みかんの白い部分が食べられる組織であり、栄養面でも意味があると理解したうえで、自分に合った食べ方を選ぶことです。
【みかんの白い部分】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:みかんの白い筋は毎日食べても大丈夫ですか?
A1:通常の食事の範囲であれば、白い筋を毎日食べても問題ありません。食物繊維やヘスペリジンなどを含むため、果肉と一緒に食べる方法がおすすめです。ただし、みかんの食べ過ぎには注意しましょう。
Q2:みかんの白い筋と薄皮は同じものですか?
A2:同じものではありません。白い筋は維管束、薄皮はじょうのう膜と呼ばれる房を包む組織です。どちらも食べられ、食物繊維などを含んでいます。
Q3:みかんの白い筋を全部取ると栄養がなくなりますか?
A3:なくなるわけではありません。果肉にもビタミンCやβ-クリプトキサンチンなどの成分が含まれています。ただし、白い筋や中果皮、薄皮に含まれる食物繊維やペクチン、ヘスペリジンなどを摂取する機会は減ります。
まとめ:みかんの白い部分は無理に取らず、おいしく食べよう
みかんの白い部分は、見た目から敬遠されがちですが、実際には果実の成長を支える重要な組織です。
最後に、この記事のポイントを振り返ります。
- 房についている白い筋の正体は維管束。
- 皮の内側にある白い部分は中果皮(アルベド)。
- 白い部分には食物繊維やペクチン、ヘスペリジンなどが含まれる。
- ヘスペリジンはビタミンPとも呼ばれるポリフェノール。
- 白い筋は基本的に取り除かず食べても大丈夫。
- 食感や苦味が気になる場合は、好みに合わせて取り除いてもよい。
農林水産省の情報からも分かるように、みかんの白い筋は捨てなければならない部分ではありません。
次にみかんを食べるときは、白い筋を少し残してみてください。 いつも何気なく取り除いていた部分にも、果実の成長を支えてきた仕組みと、食生活に役立つ栄養が詰まっています。
みかんは果肉だけでなく、薄皮や白い筋も含めて楽しめる果物です。無理に取り除かず、自分に合った方法でおいしく味わいましょう。