Rh陰性は、日本人の中では比較的珍しい血液型です。
日本赤十字社や日本輸血・細胞治療学会の資料によると、日本人のRhD陰性の割合は約0.5%。およそ200人に1人という計算になります。
一方、欧米の白人集団では約15%とされ、日本との間には大きな差があります。
日本人のRh陰性の内訳兵庫県赤十字血液センターが公表しているABO式とRh式を組み合わせた割合は、次のとおりです。
| 血液型 | 日本人に占める割合 | およその人数 |
|---|---|---|
| A型Rh陰性 | 0.20% | 500人に1人 |
| O型Rh陰性 | 0.15% | 約670人に1人 |
| B型Rh陰性 | 0.10% | 1,000人に1人 |
| AB型Rh陰性 | 0.05% | 2,000人に1人 |
| 合計 | 0.50% | 200人に1人 |
この数字から分かるのは、Rh陰性という特徴だけでなく、ABO式との組み合わせによっても出現頻度が変わることです。
特にAB型Rh陰性は約2,000人に1人と少なく、必要な血液を確保する際にはABO式とRh式の両方を考慮しなければなりません。
Rh陰性とRhnull型は何が違う?両者は混同されやすいものの、医学的には明確に区別されます。
- Rh陰性:Rh系統の抗原のうち、主にD抗原を持たない状態。
- Rhnull型:Rh系統の抗原をすべて欠く特殊な状態。
Rh陰性だからといって、Rhnull型というわけではありません。
また、Rh陰性の人が必ず輸血に困るわけでもありません。日本では献血時の検査や血液センターの管理体制が整備されているため、一般的な希少血液型とは異なる運用が行われています。
【なぜ輸血が難しい?】珍しい血液型と抗原・抗体の深い関係

珍しい血液型が医療現場で問題になる理由は、単純に人数が少ないからだけではありません。
重要なのは、患者の血液中に存在する抗体と、輸血される赤血球の抗原との関係です。
赤血球の抗原と血清中の抗体赤血球の表面には、さまざまな抗原があります。
人間の免疫システムは、自分の体にない抗原を異物として認識する場合があります。その結果、特定の抗原に対する抗体が作られることがあります。
こうした抗体は、不規則抗体と呼ばれます。
輸血や妊娠などがきっかけとなって抗体が作られることもあり、次に同じ抗原を持つ赤血球が体内に入ると、輸血副作用につながる可能性があります。
日本赤十字社も、ABO式とRhD式だけでなく、その他の血液型に対する不規則抗体の有無を確認する必要性を説明しています。
希少血液型では同じ血液型の人を探す必要がある例えば、患者が高頻度抗原を持たず、その抗原に対する抗体を保有している場合、一般的な献血血液では適合するものを見つけにくくなります。
このようなケースでは、患者と適合する抗原陰性血を探さなければなりません。
そのため、血液センターでは特殊な血液型検査を実施し、希少な抗原を持たない献血者の情報を管理しています。
国際輸血学会(ISBT)の希少ドナー関連情報でも、Rhnull型、ボンベイ型、Jr(a−)型などが希少ドナーを必要とする血液型の例として挙げられています。世界規模でのドナー情報の共有も重要です。
珍しい血液型は病気なのか?ここは誤解されやすいポイントです。
希少血液型であること自体は、病気を意味しません。
RhD陰性、Jr(a−)型、Di(b−)型などは、赤血球の抗原の違いによる分類です。血液型が珍しいという理由だけで、日常生活に支障が出るわけではありません。
ただし、Rhnull型のように、血液型の特徴と赤血球の機能に関連する医学的問題が報告されているタイプもあります。
大切なのは、希少血液型と健康状態を一律に結び付けないことです。
【日本赤十字社の取り組み】希少血液型の献血者登録と冷凍保存の仕組み
希少血液型の患者が輸血を必要とした場合、医療機関がその時点で献血者を探すだけでは間に合わない可能性があります。
そこで、日本赤十字社は希少血液型の献血者登録と、血液の冷凍保存を組み合わせた供給体制を整えています。
1.希少血液型の献血者を検査で見つける献血された血液について、必要な血液型検査を実施し、一般的なABO式・Rh式以外の特徴も調べます。
兵庫県赤十字血液センターの資料では、自動検査機器やモノクローナル抗体を用いて、D--型、Ko型、Jr(a−)型などの希少血液型を検出する取り組みが紹介されています。
2.希少血液型の献血者に登録を依頼する検査によって希少血液型と判定された献血者には、血液センターから登録への協力が依頼される場合があります。
長野県赤十字血液センターの案内では、検査で希少血液型と判定された人に登録をお願いするため、郵送で連絡する仕組みが説明されています。
登録者の中に患者と適合する人が見つかった場合、電話などで献血への協力を依頼することがあります。
3.マイナス80℃以下で血液を冷凍保存する希少血液型の血液を必要なときに確保できるよう、日本赤十字社では一部の希少血液を冷凍保存しています。
希少血液型の冷凍保存
−80℃以下
保存温度の目安
10年間
国の基準に基づく保存期間
兵庫県赤十字血液センターによると、希少血液型の血液はマイナス80℃以下で凍結保存され、保存期間は国の基準で10年間とされています。
冷凍保存の意義は、必要になったときに同型の血液を一から集める負担を減らせることです。
ただし、すべての希少血液型が常に十分な量だけ保存されているわけではありません。保存血液のほか、登録献血者への協力依頼も重要な役割を担っています。
4.国内だけでなく国際的な協力も必要希少血液型のドナーが国内で見つからない場合、国境を越えた協力が必要になることもあります。
ISBT(国際輸血学会)は、希少血液型のドナー情報を国際的に共有する仕組みを設けています。
特にRhnull型やボンベイ型などは、世界全体で見ても適合する血液を探すことが難しいため、国際的な情報連携が輸血医療を支える重要な基盤となっています。
【プロの結論】珍しい血液型を知るなら出現頻度だけでなく輸血適合性を見る
珍しい血液型を調べる際に、最も注意したいのは「珍しさ」と「輸血の難しさ」を同じ意味で捉えないことです。
例えば、RhD陰性は日本人の約0.5%に見られます。数字だけを見ると十分に希少ですが、日本赤十字社では献血者全員の検査を通じて把握できるため、希少血液型登録とは別に扱う場合があります。
一方、Jr(a−)型やボンベイ型などは、特定の抗原がないことによって、通常の血液製剤との適合性に問題が生じる可能性があります。
珍しい血液型について知っておきたい5つの判断基準1. 出現頻度を確認する: 100人に1人なのか、3,000人に1人なのか、600万人に1人なのかを区別する。
2. 日本人の統計と世界の統計を分ける: 海外での発生率を日本人の割合として扱わない。
3. 抗原の違いを理解する: RhD陰性とRhnull型、ボンベイ型とパラボンベイ型を混同しない。
4. 輸血適合性を重視する: ABO式だけでなく、不規則抗体や特殊な赤血球抗原も確認する。
5. 公的な情報を優先する: 日本赤十字社や日本輸血・細胞治療学会などの情報を参考にする。
医療機関で珍しい血液型と判明した場合は、検査結果や医療機関からの説明を保管しておくと役立ちます。
特に、輸血歴や妊娠歴がある人、不規則抗体を指摘されたことがある人は、手術や輸血の予定があるときに医療スタッフへ伝えることが大切です。
また、献血によって希少血液型が判明し、日本赤十字社から登録の案内を受けた場合には、制度の内容を確認して協力を検討できます。
【珍しい血液型】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:世界で最も珍しい血液型は何ですか?
Rhnull(Rhヌル)型は、世界でも極めて珍しい血液型の一つです。医学文献では約600万人に1人という推定頻度が紹介されています。すべてのRh抗原を欠くため、輸血時の適合血確保が非常に難しい特徴があります。
Q2:日本人で最も珍しい血液型は何ですか?
Rhnull型、ボンベイ型、D--型などが極めて珍しい血液型として知られています。ただし、日本人全体を対象とした正確な出現頻度が公表されていないタイプもあり、単純に順位を付けることはできません。
Q3:Rh陰性の日本人は何人に1人ですか?
日本人の約0.5%で、およそ200人に1人です。ABO式との組み合わせでは、A型Rh陰性が約500人に1人、AB型Rh陰性が約2,000人に1人とされています。
Q4:ボンベイ型の人はO型の血液を輸血できますか?
通常のO型血液をそのまま輸血することはできません。ボンベイ型の人はH抗原を欠き、抗H抗体を持つため、通常のO型赤血球に反応する可能性があります。適合するボンベイ型の血液が必要です。
Q5:珍しい血液型の人は献血者登録ができますか?
日本赤十字社では、検査で希少血液型と判定された献血者に登録を依頼する仕組みがあります。登録者は、必要な患者と適合した場合に献血協力を依頼されることがあります。
Q6:珍しい血液型は健康に悪影響がありますか?
珍しい血液型であること自体は病気ではありません。多くの場合、日常生活に特別な制限はありません。ただし、Rhnull型のように赤血球の機能に関連する症状が報告されているタイプもあります。
まとめ:珍しい血液型は種類・割合・輸血体制の3点で理解する
珍しい血液型は、一般に出現頻度がおおむね1%以下で、同じ血液型の血液を確保することが難しいタイプを指します。
日本人のRhD陰性は約0.5%で、Rhnull型、ボンベイ型、パラボンベイ型、Jr(a−)型、Di(b−)型、D--型など、さまざまな希少血液型が知られています。
特に重要なのは、Rh陰性とRhnull型の違いや、ボンベイ型と通常のO型の違いです。見た目の分類が似ていても、赤血球の抗原や血清中の抗体が異なるため、輸血の適合性も変わります。
日本赤十字社では、希少血液型の献血者登録、マイナス80℃以下での冷凍保存、必要に応じた献血協力の依頼などを通じて、希少血液の安定確保に取り組んでいます。
珍しい血液型を理解するうえで大切なのは、単に「何人に1人か」を知ることではありません。どの抗原を持たないのか、どの抗体が問題になるのか、そして必要な血液をどう確保するのかまで知ることです。
2026年現在も、希少血液型の登録制度と国内外のドナー連携は、輸血医療を支える重要な仕組みとなっています。