「祝!九州」を語るうえで欠かせないのが、CM全体を明るく包み込む楽曲「Boom!」だ。歌っているのは、スウェーデン出身のシンガーソングライター、(Maia Hirasawa)である。
「Boom!」がCMにもたらした効果「Boom!」はマイア・ヒラサワ自身が作詞・作曲した楽曲で、JR九州の「祝!九州キャンペーン」のCMソングとして起用された。
印象的なのは、曲のリズムと映像の動きが自然に重なっていることだ。新幹線が進むスピード感、沿線の人々が手を振る動作、飛び跳ねる姿、次々と切り替わる地域の風景。それぞれの映像に楽曲の躍動感が加わり、画面全体に祝祭的な雰囲気が生まれている。
楽曲は2011年5月18日にCDとしてリリースされた。CMの放送自粛後に音楽への問い合わせが集まり、映像とともに楽曲も広く知られるようになった。
制作スタッフは誰?東畑幸多と古川裕也の役割このCMの制作には、広告業界の第一線で活動するクリエイターや制作スタッフが参加している。
特に注目したいのが、古川裕也と東畑幸多だ。ただし、両者は同じ肩書きではない。放送ライブラリーの公式記録では、古川裕也がクリエイティブディレクター、東畑幸多がプランナーとして記載されている。
主要な関係者を整理すると、次のようになる。
出典:公益財団法人放送番組センター「放送ライブラリー」作品情報。
この一覧から分かるのは、CMの魅力が一人の有名クリエイターだけで成立したわけではないということだ。広告主、企画、映像制作、音楽、そして実際に撮影へ参加した地域住民。それぞれが異なる役割を担い、ひとつの作品を完成させている。
特に、一般の沿線住民を映像の中心に据えた企画は、広告制作の枠を超えた地域参加型のプロジェクトだった。人々の自然な表情を撮影するという発想が、作品の説得力につながっている。
【15秒・30秒・60秒・180秒を比較】九州新幹線CMはどのバージョンを見るべき?

「祝!九州」には、15秒・30秒・60秒・180秒という複数の尺が存在する。短いテレビCMと、全体を楽しめる総集編では、視聴体験が異なる。
鉄道コムやテレビ西日本の紹介記事でも、複数の長さのバージョンが制作されたことが説明されている。特に2026年の再公開で注目されるのは、全体を楽しめる180秒版だ。
それぞれの映像尺の特徴
15秒版
短時間で印象を伝えるコンパクトな広告。新幹線と沿線の人々の歓迎風景を、短い時間で楽しみたい人向け。
30秒版
短い広告枠の中で、映像の展開やキャンペーンの雰囲気を味わえる尺。テレビCMとしての見やすさが特徴。
60秒版
短尺より長く、沿線の人々の表情や歓迎の様子を楽しめる。キャンペーンの空気感をもう少しじっくり味わいたい人向け。
180秒版・総集編
3分間の長編映像。各地の人々の歓迎を連続して楽しめるため、作品の魅力や企画全体を知りたい人に最適。
ここで注意したいのは、15秒・30秒・60秒・180秒という違いは、基本的に映像の編集尺の違いだという点だ。4種類がそれぞれ別の物語を描いているわけではない。また、すべての短尺版のカット内容や編集順序が、現在の公式公開情報で個別に説明されているわけではない。
180秒総集編が特に評価される理由180秒版の魅力は、単に長いことではない。列車が走り、沿線の人々が登場し、地域ごとの歓迎の表現が次々と映し出されることで、九州を縦断する企画の広がりを感じられることにある。
短いCMでは印象的な場面を凝縮して見せる必要がある。一方、180秒版では、さまざまな人々の表情や動きが積み重なり、ひとつの地域だけでなく九州全体が参加しているという感覚が伝わりやすい。
公益財団法人放送番組センターにも、2011年制作・180秒の「九州新幹線全線開業 総集編」として作品が登録されている。長編版は単なるネット向けのおまけではなく、広告作品として記録された正式な総集編だ。
【2026年最新】九州新幹線全線開業15周年で「祝!九州」が公式再公開
2026年に入り、「祝!九州」は再び大きな注目を集めた。きっかけは、九州新幹線の全線開業15周年を記念したJR九州による映像の再公開だ。
JR九州公式YouTubeチャンネルでは、2026年3月11日付で「九州新幹線全線開業『祝!九州』」が公開された。動画の説明にも、全線開業15周年を記念して過去の取り組みを紹介する企画であることが記載されている。
2011年3月12日の開業から15年という節目に、当時の映像を公式チャンネルで再び見られるようになったことは、長年のファンだけでなく、当時の出来事を知らない世代にとっても意味がある。
2026年の再公開映像で注目したい3つのポイント1. 沿線の人々の表情
15年前の撮影映像には、当時の九州各地の風景と、開業を喜ぶ人々の姿がそのまま残されている。現在の地域の様子と見比べると、時間の経過を感じられる貴重な記録でもある。
2. 震災前に準備された開業への期待
この映像が撮影されたのは2011年2月20日。東日本大震災が起きる前であり、全線開業に向けて九州各地で高まっていた期待が収められている。後から震災と放送自粛の経緯を知った視聴者には、映像の意味がより深く感じられる。
3. 「Boom!」と映像が生み出す一体感
マイア・ヒラサワの楽曲と人々の動きが重なることで、単なる記録映像ではなく、ひとつの完成された広告作品として楽しめる。15周年という時間を経ても、映像の明るさや躍動感は色あせていない。
15周年プロジェクト「つばめの大冒険」との関係2026年のJR九州の15周年企画は、「祝!九州」の再公開だけではない。
JR九州は「つばめの大冒険」というプロジェクトも展開した。これは、2016年の熊本地震で被災し、営業を終えた800系車両の一部を修繕・再塗装し、熊本から博多まで運ぶ企画である。
2026年3月には熊本港からの海上輸送などが実施され、3月29日には車両を載せた台船が熊本港を出航するイベントも企画された。沿線の人々に参加してもらうという点で、2011年の「祝!九州」と通じるものがある。
ただし、「祝!九州」の再公開と「つばめの大冒険」は別の企画だ。前者は15年前の広告映像を振り返るものであり、後者は車両を使って15周年を祝う新たな取り組みである。
2026年の最新情報を調べる際には、現在放送中の新CMと、公式YouTubeで公開された過去のCM映像を混同しないことが大切だ。15周年で確認できる大きな動きは、テレビCMの新規放送というより、過去の名作映像の公式再公開と関連記念プロジェクトにある。
【評判と受賞歴】九州新幹線CMはなぜ広告業界でも高く評価された?
「祝!九州」は、視聴者の感動を集めただけでなく、国内外の広告賞でも評価された作品だ。
特に注目したいのは、映像作品としての評価と、参加型キャンペーンとしての評価の両方を獲得した点である。
主な受賞歴・評価- カンヌライオンズ2011: アウトドア部門金賞、メディア部門銀賞。さらにフィルム部門銅賞も受賞したと当時の報道で伝えられた。
- Spikes Asia: メディア部門、プロモ&アクティベーション部門で金賞。
- 第51回ACC CMフェスティバル: テレビCM部門の総務大臣賞・グランプリ。
- 第50回福岡広告協会賞: 総集編が大賞に選ばれた。
- 第15回文化庁メディア芸術祭: エンターテインメント部門の審査委員会推薦作品として掲載された。
文化庁メディア芸術祭については、グランプリなどの受賞作品と混同しないようにしたい。「審査委員会推薦作品」という位置付けである。
広告業界が評価したのは映像だけではないカンヌライオンズのアウトドア部門で評価された背景には、撮影イベントそのものを広告媒体として活用した発想がある。
通常の広告は、制作した映像やポスターをテレビや街頭に掲出し、消費者に見てもらうことで効果を生む。しかし「祝!九州」は、沿線の人々が実際に参加するイベントを企画し、そのイベントを撮影して広告作品に仕上げた。
つまり、広告を見てもらうだけでなく、広告を作る過程に地域の人々が参加している。完成した映像だけでなく、参加する体験そのものにも価値を持たせたことが、従来の広告とは異なる特徴だった。
制作会社のGMO ENGINEが公開している作品情報にも、カンヌライオンズ、Spikes Asia、ACCの受賞実績が掲載されている。複数の賞を獲得したことからも、国内だけでなく国際的な広告業界から評価されたことが分かる。
【感動する理由と人気の真相】15年経っても九州新幹線CMが愛される理由
「祝!九州」を見て感動する人が多いのは、単に音楽がよいからでも、映像がきれいだからでもない。複数の要素が重なり、視聴者が自分自身の記憶や感情を重ねやすい作品になっているからだ。
1. 主役が有名人ではなく、実際に暮らす人々多くの企業CMでは、著名人や俳優を起用して商品の魅力を伝える。しかし、この作品では沿線の住民が中心になっている。
そのため、映像に映る笑顔に演技としての距離感が少ない。家族や友人と一緒に列車を歓迎する姿には、地域の人々が本当に新幹線を待ち望んでいたという背景が感じられる。
2. 新幹線の車窓から撮影したことで生まれる一体感撮影の視点も重要だ。列車の外から新幹線を撮影するのではなく、新幹線に乗っている側から沿線の人々を撮影している。
そのため、視聴者は列車に乗って九州を進んでいるような感覚を得られる。沿線の人々が手を振る姿を見ると、まるで自分自身に歓迎の気持ちを届けてくれているように感じられる。
3. 「Boom!」が映像に前向きなエネルギーを加えているマイア・ヒラサワの楽曲は、作品のテンポを作る重要な要素だ。明るいリズムと繰り返される印象的なフレーズが、手を振る動きや列車の走行と調和している。
映像と音楽のどちらか一方だけが目立つのではなく、互いを引き立てる構成になっている。CMを見終わった後も曲の印象が残り、もう一度映像を見たくなる効果が生まれている。
4. 震災と放送自粛の歴史が作品に別の意味を与えたこのCMが特別な存在になった理由には、2011年3月11日の震災という歴史的背景もある。
撮影時の映像には、全線開業を純粋に喜ぶ人々の姿が残されている。しかし、その映像がテレビで放送され始めた直後に震災が発生し、広告は自粛された。
そのため、現在の視聴者は、単に楽しい開業記念映像を見るだけではない。放送されなかった時間、当時の社会状況、そして15年後に再び映像を見られるようになったことまで含めて作品を受け止める。
JR九州の古宮洋二社長も、2026年のインタビューで撮影当時の様子について次のように振り返っている。
「もうね、私を含めて中のスタッフはみんな号泣ですよ。」 JR九州・古宮洋二社長/2026年3月、テレビ西日本のインタビューより。
実際に撮影に立ち会った側にも強い感情があったことが分かる。映像に映っている人々だけでなく、制作する側も九州の人々の歓迎を目の当たりにしていたのである。
よくある誤解と事実を整理長年にわたって語られてきたCMだからこそ、放送期間や参加者数、2026年の公開状況などには混同も生じやすい。
- 誤解:CMは一度もテレビ放送されなかった。
事実:2011年3月9日に放送が始まり、震災発生後の3月11日に中止された。その後、4月23日に九州エリアで再開された。
- 誤解:撮影に参加した人数は必ず1万5,000人以上で確定している。
事実:当時の報道には1万5,000人以上という数字がある一方、文化庁の公式作品記録では10,525人以上とされている。
- 誤解:東畑幸多と古川裕也は同じ役職だった。
事実:放送ライブラリーのスタッフ記録では、古川裕也がクリエイティブディレクター、東畑幸多がプランナーである。
- 誤解:2026年に新しいテレビCMとして復活した。
事実:15周年に合わせた公式YouTubeでの過去映像の再公開が確認できる。現在のテレビCM放送と同じ意味ではない。
こんな人におすすめの映像180秒版は、特に次のような人におすすめしたい。
- 2011年の九州新幹線全線開業を懐かしく振り返りたい人
- 東日本大震災と広告放送自粛の歴史を知りたい人
- マイア・ヒラサワの「Boom!」をフル映像と一緒に楽しみたい人
- 九州各地の風景や地域の人々の姿に興味がある人
- 広告制作や地域参加型キャンペーンの成功事例を研究したい人
反対に、列車の性能や停車駅、運行ダイヤなどの鉄道情報を知りたい人にとっては、この映像だけでは情報が足りない。あくまで全線開業を祝う広告作品であり、鉄道の実用案内とは目的が異なる。
【九州新幹線CMに関するよくある質問(FAQ)】
Q1:九州新幹線のCM「祝!九州」の曲名と歌手は誰ですか?
A1:曲名は「Boom!」です。スウェーデン出身のシンガーソングライター、マイア・ヒラサワが作詞・作曲・歌唱を担当しています。2011年5月18日にCDが発売されました。
Q2:九州新幹線のCMはなぜ放送中止になったのですか?
A2:2011年3月11日に東日本大震災が発生したためです。翌12日の全線開業を祝うCMの放送は自粛されました。その後、映像の一部を調整し、4月23日に九州エリアで放送が再開されました。
Q3:九州新幹線CMの撮影には何人が参加しましたか?
A3:文化庁メディア芸術祭の公式作品紹介では10,525人以上と記録されています。当時の報道には1万5,000人以上という数字もあります。
Q4:九州新幹線CMの制作スタッフは誰ですか?
A4:クリエイティブディレクターは古川裕也、プランナーは東畑幸多です。ディレクターは田中嗣久で、音楽はマイア・ヒラサワが担当しました。
Q5:九州新幹線のCMは2026年も見られますか?
A5:2026年3月にJR九州公式YouTubeチャンネルで15周年記念として180秒版が再公開されています。過去の映像を公式チャンネルで楽しめます。
Q6:九州新幹線CMの180秒版と15秒・30秒・60秒版は何が違いますか?
A6:主な違いは映像の長さです。180秒版は総集編として、沿線の人々が参加した九州縦断ウェーブをより長く楽しめます。15秒・30秒・60秒版は短尺の広告編集です。
まとめ:九州新幹線CM「祝!九州」が15年後も感動を呼ぶ理由
九州新幹線のCM「祝!九州」は、2011年の全線開業を記念して制作された広告作品でありながら、地域の人々の記憶を残す映像作品としても大きな価値を持っている。
鹿児島中央から博多までを結ぶ新幹線、沿線に集まった10,525人以上の人々、マイア・ヒラサワの「Boom!」、古川裕也や東畑幸多ら制作スタッフの企画。それぞれの要素が重なり、九州全体で開業を祝うというメッセージが形になった。
その後、東日本大震災による放送自粛という予期しなかった出来事が起こり、CMは「幻の作品」として知られるようになる。しかし、映像はインターネットを通じて広がり、国内外の広告賞でも高く評価された。
そして2026年、全線開業15周年を迎えた節目にJR九州公式YouTubeチャンネルで180秒版が再公開された。
【プロの結論】このCMが残した最大の価値は「地域が広告の主役になったこと」広告の成功を考えるとき、視聴回数や放送回数、受賞数は分かりやすい指標になる。しかし「祝!九州」が示したのは、それだけでは測れない価値だ。
企業が一方的にメッセージを発信するのではなく、地域の人々に参加してもらい、その人々自身の姿を広告にする。加えて、その映像が地域の記憶として長く残り、15年後にも公式に再公開されている。
この一連の流れは、地域密着型の広告がどのように人々の共感を生み、時間を超えて価値を持ち続けるのかを考えるうえで、非常に優れた事例だ。
「祝!九州」は、単なる新幹線の開業CMではない。九州の人々が一緒に新しい時代の始まりを祝った記録であり、震災による自粛という歴史も含めて、2011年という時代を伝える映像である。
2026年に初めてこのCMを見る人も、当時テレビで見た人も、180秒の映像を通じて九州の人々の笑顔と「Boom!」の躍動感を改めて味わってほしい。
主な情報源:JR九州公式YouTubeチャンネル、JR九州15周年プロジェクト公式情報、公益財団法人放送番組センター、文化庁メディア芸術祭、テレビ西日本・FNNプライムオンライン、鉄道コム、CDJournal、GMO ENGINE、スポーツニッポン、アドタイ。