警察から電話がかかってきたからといって、必ずしも犯罪の容疑者になっているわけではありません。警察署には、事件捜査だけでなく、交通関係や遺失物、被害者への連絡など、さまざまな業務があります。
実際に考えられる主な連絡理由は次のとおりです。
1. 事件や事故について事情を確認したい事件現場の目撃者、被害者、関係者などに対し、警察官が事実関係を確認するために連絡するケースです。
例えば、次のような状況が考えられます。
- 交通事故の当事者や目撃者として確認したいことがある
- 過去に届け出た事件について追加で質問したい
- 近隣で発生した事件について情報提供を求めたい
- 被害届を提出した後、捜査状況や追加資料について連絡したい
- 事件に関係する人物や物品について確認したい
警察から連絡があった場合でも、電話の相手が本物か確認することはできます。所属する警察署、担当部署、氏名を確認し、いったん電話を切って公式の代表番号から問い合わせれば問題ありません。
2. 落とし物や拾得物について連絡したい警察から電話が来る比較的身近な理由が、落とし物に関する連絡です。
財布、スマートフォン、運転免許証、クレジットカードなどを紛失して遺失届を出していた場合、拾得物が警察署に届けられたことを知らせる連絡が入ることがあります。
警視庁の遺失物案内でも、警察署や遺失物センターから連絡があった場合は、受け取り場所や受理番号を確認するよう案内されています。
ただし、ここにも詐欺の落とし穴があります。
2026年2月には、岐阜県警の北方警察署が、落とし物担当者を名乗って個人情報を聞き出そうとする不審電話について注意を呼びかけました。
警察署の落とし物担当を装い、携帯電話や通帳が悪用されたなどと不安をあおる手口です。
落とし物に心当たりがあっても、電話口で個人情報を伝える前に確認することが大切です。
3. 交通違反や交通事故について確認したい交通事故の届け出や、過去の交通関係の手続きについて警察から連絡が入ることもあります。
例えば、事故の当事者への追加確認、事故状況の聞き取り、提出書類に関する問い合わせなどです。
こうした連絡では、事故が発生した日時や場所、担当部署などが確認の手掛かりになります。
一方、「交通違反の罰金を今すぐ振り込んでください」「電話で指定する口座に支払えば処理できます」といった要求には応じてはいけません。
4. 警察への相談や届け出について確認したい以前に警察へ相談したことがある場合、その内容について担当者から電話が来る可能性もあります。
ストーカー被害、近隣トラブル、詐欺被害、迷惑行為など、過去の相談に関連した確認です。
この場合も、相談した警察署や担当部署を公式窓口で確認すると、連絡の真偽を判断しやすくなります。
【番号表示だけでは判断できない】警察署の電話番号を確認する方法

警察から電話が来たとき、多くの人が最初に見るのは着信画面です。
「警視庁」「○○警察署」と表示されていれば、本物だと思ってしまう可能性があります。
しかし、電話番号の表示は発信者本人の身元を証明するものではありません。
警察庁は、実在する警察本部や警察署の代表電話番号を着信画面に偽装表示させる手口について、2025年3月25日に注意喚起を公表しています。
警察署の電話番号と詐欺電話の比較着信番号や通話内容について、次のポイントを確認してください。
警察庁が公表した事例では、被害者の携帯電話に愛知県警察本部の代表番号である「052-951-1611」が表示されました。
電話に出ると、警察官を名乗る人物から「あなた名義の口座が不正に開設されている」「資金洗浄事件の容疑者になっている」と告げられます。
その後、SNSのビデオ通話に誘導され、顔写真付きの偽の警察手帳まで提示されました。
加えて、口座の資金を確認する必要があるとして、最終的に250万円を指定口座に振り込ませたのです。
被害者が最初に表示された愛知県警察本部の代表番号へ改めて電話したところ、詐欺だったことが判明しました。
この事例から分かるのは、実在する警察署の番号が表示されていることと、実際に警察官が発信していることは別問題だという点です。
警察署の電話番号を公式サイトで調べる手順安全に確認するためには、次の手順を踏みましょう。
1. 着信した電話の相手に警察署名、担当部署、氏名、内線番号を確認する。
2. 相手が伝えた番号には折り返さず、いったん電話を切る。
3. 検索エンジンで都道府県警察の公式サイトを探す。
4. 公式サイトの「警察署一覧」や「所在地・電話番号」を確認する。
5. 掲載されている代表電話に自分で発信する。
6. 担当部署と氏名を伝え、実際に連絡があったか確認する。
警察庁は2026年4月1日現在の全国警察施設名称・位置情報を公開しています。全国の警察署の名称を確認する際にも参考になります。
ただし、個別の電話番号や受付時間は、各都道府県警察の公式サイトで最新情報を確認するのが確実です。
要点は、着信履歴に表示された番号ではなく、自分で公式情報から調べた番号を使うことです。
【2026年も警戒が必要】ニセ警察詐欺の手口と被害の実態
警察からの電話に注意しなければならない背景には、警察官を装った特殊詐欺の深刻な被害があります。
警察庁は2026年から、被害が急増している「ニセ警察詐欺」を独立した手口として位置付けています。
2025年の被害額は1,005億円を突破警察庁が2026年6月5日に公表した2025年の確定値によると、特殊詐欺全体の認知件数は2万7,832件、被害額は約1,423億1,000万円でした。
そのうち、ニセ警察詐欺は次の規模に達しています。
2025年 ニセ警察詐欺の確定被害11,014件
認知件数1,005億円
被害額39.6%
特殊詐欺全体の認知件数に占める割合70.6%
特殊詐欺全体の被害額に占める割合
出典:警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」2026年6月5日公表。
加えて、2026年10月2日に公表された8月末時点の暫定値では、ニセ警察詐欺の認知件数は6,346件、被害額は728億6,000万円でした。
前年同期と比較すると認知件数は4.1%減少した一方、被害額は27.0%増加しています。件数だけでは被害の深刻さを判断できない状況です。
ニセ警察詐欺でよく使われる5つの手口
警察官を名乗って突然電話する
「あなたの口座が犯罪に使われています」「あなた名義の携帯電話が不正契約されています」などと告げます。
逮捕や捜査を持ち出して不安にさせる
「逮捕状が出ている」「犯罪組織との関係を疑われている」などと説明し、冷静な判断を妨げます。
偽の警察手帳や逮捕状を見せる
SNSやビデオ通話を使い、警察官らしい制服や身分証明書を見せて信用させようとします。
資産や個人情報を聞き出す
預金額、銀行口座、住所、勤務先などを聞き、被害者の資産状況を把握します。
資産保護や捜査協力を理由に金銭を要求する
「口座のお金を安全な場所に移す必要がある」「金塊を提出すれば疑いが晴れる」などと言って、送金や現金の引き渡しを要求します。
警察庁が2025年11月に公表した注意喚起では、電話会社や総務省を名乗る自動音声から始まり、途中で警察官役に交代する手口も紹介されています。
2026年に確認されたさらに悪質な手口ニセ警察詐欺は、単純な電話での送金要求だけではありません。
警察庁が2026年6月5日に公表した注意喚起では、次のような特殊な手口も確認されています。
- 金地金の詐取:逮捕状が出ているなどと告げ、身の潔白を証明するために金塊やインゴットを提出するよう要求する。
- 性的な被害を伴う手口:身体的特徴の確認などと称して、裸になることや入浴中を含む常時ビデオ通話を要求する。
後者については、2025年中に発生し、2026年4月末までに都道府県警察から警察庁へ報告された事案が247件ありました。未遂や相談事案も含む数字です。
警察を名乗る人物から、金銭の要求とともに身体を見せるよう求められたり、生活の様子を常時撮影するよう命じられたりした場合は、応じてはいけません。
【警察から個人情報を聞かれたら】電話を切るべき危険なサイン
警察からの電話で、名前や住所などを確認されること自体は、必ずしも不自然ではありません。
例えば、落とし物の返還や事件関係者への連絡では、本人確認が必要になることがあります。
しかし、電話の相手が本当に警察官なのか分からない段階で、重要な個人情報を伝える必要はありません。
絶対に安易に伝えてはいけない情報特に注意したいのは、次の情報です。
- 銀行口座の暗証番号
- インターネットバンキングのID・パスワード
- ワンタイムパスワード
- キャッシュカードの情報
- クレジットカード番号とセキュリティコード
- 預金残高や自宅に保管している現金の額
- マイナンバーカードや運転免許証の画像
警察庁も、警察官が電話などでパスワードや暗証番号を教えるよう求めることはないと注意喚起しています。
不審な電話を受けたときの対応手順STEP1:相手の話を聞き続けない
不安をあおられても、焦って返答する必要はありません。
「確認してから折り返します」と伝えて通話を終了しましょう。
STEP2:相手が伝えた番号に電話しない
相手が教えた折り返し番号が、本物の警察署の番号である保証はありません。
着信履歴から直接折り返すことも避けてください。
STEP3:警察署の公式窓口で確認する
都道府県警察の公式サイトから代表電話番号を調べます。
「警察署から電話があったようですが、担当者の方から実際に連絡があったのでしょうか」と伝えれば確認できます。
STEP4:不審な点があれば#9110に相談する
詐欺の可能性がある場合は、警察相談専用電話を利用してください。
すでに個人情報を伝えてしまった場合は?電話を切った後に個人情報を伝えてしまったことに気づく人もいます。
その場合は、情報の種類に応じて早急に対応する必要があります。
| 伝えてしまった情報 | 優先する対応 |
|---|---|
| 銀行口座・暗証番号 | 金融機関に連絡し、口座の安全を確認 |
| ネットバンキング情報 | 正規の銀行窓口に連絡し、認証情報を変更 |
| クレジットカード情報 | カード会社に連絡して利用停止などを相談 |
| 身分証明書の画像 | 警察に相談し、悪用の可能性を確認 |
| 現金を振り込んだ | 直ちに金融機関と警察に連絡 |
すでに送金してしまった場合は、時間を置かずに金融機関へ連絡してください。振込先口座の対応など、被害拡大を防ぐための手続きについて相談できます。
また、個人情報を伝えただけであっても、警察への相談をためらう必要はありません。
【110番と#9110の違い】警察への電話相談はどちらを使う?
警察への連絡先として知られている110番と#9110ですが、利用する場面は異なります。
110番は緊急の事件・事故に使う110番は、警察官に緊急の対応を求めるための電話番号です。
例えば、次のようなケースで利用します。
- 現在、犯罪の被害に遭っている
- 不審者が自宅周辺にいて危険を感じる
- 交通事故が発生している
- 詐欺犯が自宅に現金やカードを取りに来ている
- 事件や事故で直ちに警察の対応が必要
すでに金銭を渡してしまい、犯人が近くにいるなど、差し迫った危険がある場合も110番で通報してください。
#9110は緊急性のない警察相談に使う警察相談専用電話「#9110」は、緊急通報するほどではないものの、警察に相談したいことがある場合の窓口です。
例えば、次のような相談に適しています。
- 警察を名乗る電話がかかってきた
- 実在する警察署の番号が表示されたが不審に感じる
- 逮捕状が出ていると言われて不安になった
- 個人情報を聞かれた
- ニセ警察詐欺かどうか判断できない
- 迷惑電話や不審な連絡への対応を知りたい
警察庁によると、#9110は全国共通の相談窓口で、発信した地域を管轄する警察本部などの相談窓口につながります。受付時間は都道府県によって異なり、平日の日中を基本とする地域が多く、時間外は当直や音声案内での対応となる場合があります。
110番と#9110の使い分け110番
緊急の事件・事故
今すぐ警察官の対応が必要なとき
#9110
緊急性のない警察相談
不審電話や詐欺の疑いについて相談するとき
なお、#9110が利用できない電話の場合は、都道府県警察の公式サイトで相談窓口の一般電話番号を確認してください。
【警察から電話番号に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:警察署の電話番号は末尾が0110なら本物ですか?
A1:必ずしも本物とは限りません。警察署の代表番号には末尾が0110のものがありますが、詐欺グループが実在する番号を偽装する事例も確認されています。着信番号だけで判断せず、公式サイトで調べた代表電話番号に自分でかけ直してください。
Q2:警察からの着信履歴に折り返しても大丈夫ですか?
A2:着信履歴に表示された番号が偽装されている可能性があるため、そのまま折り返すことはおすすめできません。都道府県警察や警察署の公式サイトで代表電話番号を確認し、そちらに連絡してください。
Q3:警察から電話で逮捕すると言われたらどうすればいいですか?
A3:電話で逮捕をほのめかして不安をあおり、金銭や個人情報を要求する場合は、ニセ警察詐欺を疑ってください。警察庁は、電話で捜査対象となっていると告げる手口について注意喚起しています。いったん電話を切り、#9110または最寄りの警察署の公式窓口に確認しましょう。
Q4:警察官からLINEやビデオ通話で連絡が来ることはありますか?
A4:警察庁は、警察官がSNSのメッセージやビデオ通話で連絡することはないと注意しています。警察手帳や逮捕状の画像を送って信用させようとする手口もあります。相手が警察官を名乗っていても応じないでください。
Q5:警察から電話があったものの、出られなかった場合はどうすればいいですか?
A5:まず着信履歴を確認し、留守番電話に用件が残されていても、折り返し先が本物かどうかを確認してください。公式サイトに掲載された警察署の代表電話番号から連絡すれば、安全に問い合わせできます。
まとめ:警察から電話が来たら番号より公式窓口で確認する
警察署から電話が来る理由には、事件や事故の確認、落とし物、交通関係の手続き、被害相談など、正当な業務に関係するものがあります。
そのため、警察からの着信をすべて詐欺と判断する必要はありません。
しかし、2025年のニセ警察詐欺の被害額が1,005億円に達し、2026年も高額な被害が続いていることを考えると、着信番号を安易に信用することは危険です。
最後に、覚えておきたい判断基準を整理します。
- 警察署の番号が表示されても信用しすぎない。
- 末尾0110という数字だけで本物と判断しない。
- 担当者の所属・氏名・部署を確認する。
- いったん電話を切り、公式サイトの代表番号から確認する。
- 口座の暗証番号やパスワードを伝えない。
- 現金の振り込みや金塊の提出には応じない。
- 緊急時は110番、詐欺の疑いなどの相談は#9110を利用する。
警察からの電話で最も大切なのは、相手の説明に急かされず、自分で発信元を確認することです。
本物の警察からの連絡であれば、公式窓口を通じて確認することができます。少しでも違和感があれば、電話を切って確認する。その一つの行動が、ニセ警察詐欺から自分や家族の財産を守ることにつながります。