いじめは、本人が周囲に助けを求める前から、日常生活の小さな変化として表れることがあります。
特に、学校や職場での出来事を話さなくなったり、以前は楽しんでいた活動を避けるようになったりした場合は、丁寧に話を聞く必要があります。
学校で見られるいじめのサイン| 分野 | 注意したい変化 |
|---|---|
| 登校・通学 | 学校に行きたがらない、遅刻や早退が増える |
| 身体 | 原因の分からないけが、腹痛、頭痛、体調不良 |
| 持ち物 | 文房具や衣服がなくなる、壊される |
| 精神状態 | 急に無口になる、表情が暗くなる、涙もろくなる |
| 友人関係 | 特定の友達を避ける、休み時間を一人で過ごす |
| 家庭生活 | 食欲や睡眠の変化、外出を嫌がる |
| デジタル環境 | スマートフォンの通知を怖がる、SNSを極端に気にする |
一つの変化だけで、いじめが起きていると断定することはできません。しかし、複数の変化が重なったり、本人が特定の人物や場所を怖がったりしている場合は、注意が必要です。
職場でのいじめ・嫌がらせのサイン職場では、身体的な暴力よりも、業務上の立場や集団の力関係を利用した嫌がらせが問題になる場合があります。
- 自分だけ会議や業務連絡から外される
- 必要な情報を意図的に共有してもらえない
- 人前で繰り返し侮辱される
- 合理的な説明なく仕事を与えられない
- 一人だけ過剰な業務量を押し付けられる
- 質問や相談をすると無視される
- 失敗を必要以上に責められる
一度の厳しい指導だけでパワーハラスメントと決まるわけではありません。行為の目的、必要性、頻度、継続性、職場環境への影響などを総合的に判断します。
SNSいじめの実態と見分け方SNSいじめの特徴は、学校や職場を離れても被害が続く可能性があることです。
代表的な行為には、次のようなものがあります。
- グループチャットで特定の人だけを無視する
- 本人の許可なく写真や動画を投稿する
- 匿名アカウントから悪口を投稿する
- 個人情報やプライベートな情報を拡散する
- 複数人で攻撃的なコメントを投稿する
- 根拠のない噂を繰り返し広める
SNS上の嫌がらせは、投稿を削除してもスクリーンショットなどが残り、別の場所に拡散する可能性があります。
警察庁も、インターネット上の誹謗中傷について、投稿されたサイト名、URL、投稿者、日時、内容などを記録しておくよう案内しています。内容によっては名誉毀損罪や侮辱罪などの刑事責任が問われる場合もあります。
【具体的な対処法】学校・職場・SNSでいじめに遭ったときの行動

いじめを受けたとき、最も避けたいのは、被害者が自分だけで解決しようとすることです。
相手と話し合えば解決するケースもありますが、集団での嫌がらせや力関係に差がある場合は、本人同士の話し合いだけでは状況が改善しないこともあります。
1.まず自分の安全を確保する暴力、脅迫、待ち伏せなどがある場合は、相手から距離を取り、安全な場所に移動してください。
学校であれば保護者や信頼できる教職員に、職場であれば信頼できる上司や人事部門、社外の相談機関に助けを求めます。
身の危険が差し迫っている場合は、警察への緊急通報を優先してください。
2.いじめの証拠や経緯を記録する相談するときに役立つのが、被害の具体的な記録です。
次の内容を整理しておきます。
- いつ起きたのか
- どこで起きたのか
- 誰が関係していたのか
- どのような言動や行為があったのか
- 周囲に目撃者がいたか
- その後、どのような影響が出たか
SNSの場合は、投稿のスクリーンショット、アカウント名、投稿日時、ページ情報などを保存します。
メッセージを削除したり、相手に証拠の存在を知らせたりする前に、必要な記録を確保することが大切です。
3.学校では担任以外にも相談する担任に相談しても改善しない場合、別の教職員や管理職に相談する方法があります。
相談先として考えられるのは、次のとおりです。
- 学校の担任や学年主任
- 校長・教頭
- スクールカウンセラー
- 学校のいじめ対策組織
- 教育委員会
- 自治体の教育相談窓口
いじめ防止対策推進法第22条では、学校に対して、いじめの防止等に取り組むための複数の教職員や専門家で構成する組織の設置を求めています。
したがって、いじめの問題を担任一人の判断に任せるのではなく、学校として組織的に対応することが基本です。
相談するときは、次のように具体的な対応を求めると、話が進みやすくなります。
- 加害行為の事実関係を確認してほしい
- 被害を受ける側の安全を確保してほしい
- 加害者と接触しない環境を検討してほしい
- 対応内容と今後の方針を説明してほしい
- 継続的に状況を確認してほしい
学校が十分に対応しない場合は、教育委員会などの学校設置者に相談することも検討してください。
4.職場では社内と社外の両方に相談する職場いじめの場合は、直属の上司が加害者であるケースもあります。
その場合は、人事部、コンプライアンス窓口、社内相談窓口、労働組合など、別の相談先を選ぶことができます。
社内で改善されない場合は、都道府県労働局や総合労働相談コーナーへの相談が有効です。
厚生労働省によると、職場のいじめ・嫌がらせやパワーハラスメントなど、幅広い労働問題を無料で相談できます。予約不要で、電話や面談による相談が可能です。
5.SNSいじめは反論よりも証拠保存と相談を優先するSNS上で攻撃されたとき、感情的に反論すると、やり取りが拡散して被害が拡大する場合があります。
まずは投稿を保存し、サービス運営会社の通報機能や削除申請を利用しましょう。
個人情報の拡散、脅迫、執拗な嫌がらせなど、深刻なケースでは警察や専門機関への相談も必要です。
相手のアカウントに直接攻撃を仕掛けたり、個人情報を公開し返したりすることは避けてください。
学校のいじめ相談先・公的機関一覧身近な人に相談できない場合でも、公的な相談窓口を利用できます。
| 相談先 | 電話番号・相談方法 | 主な対象・内容 |
|---|---|---|
| 24時間子供SOSダイヤル | 0120-0-78310 | いじめや子どもの悩み。24時間対応 |
| こどもの人権110番 | 0120-007-110 | いじめ、体罰、人権侵害など |
| こどもの人権相談 | LINE相談も利用可能 | 電話で話しにくい子どもの人権問題 |
| 総合労働相談コーナー | 全国の労働局など | 職場のいじめ、嫌がらせ、パワハラ |
| 警察 | 110(緊急時) | 暴力、脅迫、身の危険など |
相談時間などは窓口ごとに異なります。こどもの人権110番は原則として平日8時30分~17時15分です。
特に覚えておきたい相談先は、次の2つです。
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310。夜間や休日でも、いじめや子どものSOSについて相談できます。電話をかけた地域の教育委員会などの相談機関につながります。
- こどもの人権110番:0120-007-110。先生や家族に話しにくい学校でのいじめや人権侵害について相談できます。LINEによる人権相談もあります。
いずれも公的機関が案内する相談窓口です。
【プロの結論】いじめられやすい人を変えるより、いじめを許さない環境をつくる
いじめの問題を考えるとき、被害を受けた人の性格や行動ばかりに注目することには、大きな落とし穴があります。
「もっと強く言い返せばよかった」「嫌なら断ればよかった」「自分から友達をつくればよかった」。
こうした言葉は、本人の行動を改善する助言のように聞こえる可能性があります。しかし、被害を受けた人に責任を負わせるだけでは、加害行為を止めることはできません。
いじめを見極めるための3つの判断基準判断基準1:相手との関係が対等か
一方だけが我慢し、もう一方だけが要求を通している関係になっていないかを確認します。
判断基準2:嫌だという意思が尊重されているか
冗談や遊びという説明があっても、本人が苦痛を感じているなら、その気持ちを無視してはいけません。
判断基準3:周囲が問題を把握し、具体的に対応しているか
相談を受けた学校や職場が、事実確認、安全確保、再発防止に取り組んでいるかが重要です。
いじめの解消は謝罪だけでは判断できない文部科学省の基本方針では、いじめが解消している状態について、少なくとも次の2つの条件を満たす必要があるとしています。
1. いじめに係る行為が止んでいること。少なくとも3か月を目安に継続していること。
2. 被害を受けた本人が、心身の苦痛を感じていないこと。本人や保護者への面談などで確認すること。
つまり、加害者が謝罪したからといって、直ちに問題が解決したことにはなりません。被害を受けた人が安心して生活できるようになったかどうかが重要です。
令和6年度の全国調査でも、年度末の解消率は76.1%でした。認知されたすべてのいじめが年度内に解消したわけではありません。
いじめを止めることと、被害者の心の回復を支えることは、別々に考える必要があります。
本当に必要なのは、被害を受けた人に性格を変えるよう求めることではなく、誰もが安心して生活できる環境を整えることです。
【いじめられやすい人に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:いじめられやすい人には共通する特徴がありますか?
A1:優しく相手に合わせる、自己主張が苦手、集団の中で孤立しているといった傾向が見られる場合はあります。ただし、こうした性格がいじめを引き起こすわけではありません。加害者の行動や集団内の力関係、周囲の対応も関係します。
Q2:優しい人ほどいじめられやすいのはなぜですか?
A2:相手との衝突を避けようとして、嫌な要求を断れなかったり、被害を周囲に相談できなかったりする場合があるためです。ただし、優しさ自体が原因ではありません。相手がその優しさを利用し、不当な扱いをすることに問題があります。
Q3:いじめられやすい性格を改善する方法はありますか?
A3:性格そのものを変える必要はありません。自分の気持ちを大切にすること、無理な要求を受け入れないこと、信頼できる人に相談することなど、人間関係の境界線を意識する方法があります。安全に拒否できない状況では、第三者の支援を優先してください。
Q4:いじめと単なる人間関係のトラブルはどう違いますか?
A4:学校におけるいじめは、いじめ防止対策推進法第2条の定義に基づき、一定の人的関係にある相手から心理的・物理的な影響を受け、本人が心身の苦痛を感じているかどうかが判断の基準になります。単なる意見の違いや一度の口論とは区別して考える必要があります。
Q5:学校でいじめられたとき、担任以外に相談できる場所はありますか?
A5:校長、教頭、スクールカウンセラー、教育委員会などに相談できます。学校に相談しにくい場合は、24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)や、こどもの人権110番(0120-007-110)も利用できます。
Q6:職場で無視や仲間外れに遭った場合も相談できますか?
A6:相談できます。社内の人事部門やハラスメント相談窓口のほか、厚生労働省の総合労働相談コーナーを利用できます。職場のいじめや嫌がらせ、パワーハラスメントなどについて無料で相談できます。
Q7:SNSで悪口や個人情報を拡散された場合はどうすればよいですか?
A7:投稿のスクリーンショット、アカウント名、日時、投稿内容などを保存し、SNS運営会社に通報・削除申請を行います。脅迫や個人情報の悪用など深刻な被害がある場合は、警察にも相談してください。
まとめ:いじめられやすい人の特徴を知り、自分を守るためにできること
「いじめられやすい人」に絶対的な共通点があるわけではありません。
優しい人、内向的な人、自己主張が苦手な人、周囲と異なる個性を持つ人など、さまざまな人がいじめの被害を受ける可能性があります。反対に、明るく社交的で自信がある人も、集団内の力関係や嫉妬、偏見などによって標的になることがあります。
文部科学省の令和6年度調査で明らかになった76万9,022件という認知件数は、いじめを個人の性格だけで説明できないことを考えるうえでも重要な数字です。
今後、学校や職場、SNSで人間関係のトラブルに直面したときは、次の点を意識してください。
- 自分の性格を責めない
- 嫌なことを我慢し続けない
- 被害の記録や証拠を残す
- 信頼できる人や公的機関に相談する
- 相手との関係よりも自分の安全を優先する
- 周囲の人も傍観せず、適切な支援につなげる
いじめを受けた人が変わらなければならないのではありません。誰かを傷つける行為を止め、被害を受けた人が安心して過ごせる環境をつくることこそ、学校や職場、社会全体に求められています。
優しさを捨てる必要はありません。自分を大切にすることと、他人を思いやることは両立できます。
主な公的資料:文部科学省「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」、e-Gov法令検索「いじめ防止対策推進法」、厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」「職場におけるハラスメントの防止のために」、警察庁「インターネット上の誹謗中傷等への対応」、こども家庭庁「相談窓口」。2026年11月時点。