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逆走台風とは?2026年台風15号の茨城上陸と西進理由・過去事例を徹底解説

白川 結衣 白川 結衣 • 更新: • 公開: • 読了約 25 分
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2026年8月、日本の東海上から茨城県に上陸し、本州を東から西へ横断した台風15号(チャンホン)が注目を集めた。8月11日20時ごろに茨城県南部へ上陸したこの台風は、一般的な台風とは異なる進路を取り、12日午前には日本海で熱帯低気圧に変わった。気象庁の統計が始まった1951年以来、茨城県への台風上陸は初めてだった。

この異例の進路を理解する鍵は、偏西風の蛇行、寒冷渦、モンスーンジャイア、そして日本の東海上に形成された強い高気圧にある。気象庁が2026年9月1日に公表した「令和8年夏を対象とした異常気象分析検討会」の結果では、これらの大気の動きが台風15号の西進に関係していたことが明らかになった。

【基礎知識】逆走台風とは?通常の台風と進路が違う理由

逆走台風
逆走台風は東から西へ進む異例の台風

逆走台風とは、一般的な台風の進路とは異なり、日本付近で東から西へ進むなど、通常とは反対方向に移動する台風を指す気象報道上の呼び方だ。

気象庁が定める台風の正式な分類に「逆走台風」という独立した区分があるわけではない。台風の移動方向や経路が通常と異なる場合に、その特徴を分かりやすく表現するために使われている。

そもそも台風は、周囲の風や気圧配置に流されながら移動する。台風そのものが進行方向を自由に選んでいるわけではない。

気象庁の解説によると、低緯度では東風の影響を受けて西へ移動する傾向があり、北上して中緯度・高緯度に達すると、偏西風によって北東方向へ進むことが多い。また、地球の自転によるコリオリの力も進路に関係している。

つまり、台風が西へ進むこと自体は異常ではない。日本付近まで北上した台風が、周囲の大気の流れによって再び西向きに進むことが珍しいのである。

通常の台風と逆走台風の違い

一般的な台風は、太平洋上で発生した後、太平洋高気圧の縁に沿って北上し、日本付近では偏西風に乗って北東へ進むケースが多い。

一方、逆走台風では、北側や東側にある高気圧の勢力、偏西風の蛇行、低気圧性の大規模な循環などが重なり、西向きの流れが生まれる場合がある。

重要なのは、逆走という言葉だけで台風の危険度を判断できないことだ。進行方向が珍しくても、必ずしも大型・猛烈な台風という意味ではない。中心気圧、最大風速、強風域、降水量を個別に確認する必要がある。

【2026年最新】台風15号が茨城県に上陸して本州を西進した経緯

8月5日に発生、当初は日本の東海上を北上

2026年の台風15号は、国際名チャンホン(CHAN-HOM)。8月5日15時、ウェーク島近海で発生した。

気象庁の台風位置表によると、発生時の中心位置は北緯19.6度、東経165.7度。中心気圧998hPa、最大風速18m/sだった。

発生後は北寄りに進み、日本の東海上へ向かった。その後、進路を西寄りへ変え、日本列島に接近するという異例の動きを見せた。

8月11日20時ごろ、茨城県南部に上陸

台風15号は8月11日、関東地方に接近。20時ごろ、茨城県南部に上陸した。

ウェザーニュースの当時の速報では、上陸時の中心気圧は980hPa、中心付近の最大風速は25m/s、最大瞬間風速は35m/sと推定されていた。

茨城県への台風上陸は、1951年の統計開始以来初めての出来事だった。これまでの上陸地点のイメージを覆す進路となり、関東から東北にかけて広い範囲で警戒が必要になった。

本州を西へ横断し、8月12日に熱帯低気圧へ

茨城県に上陸した台風15号は、その後も西寄りに進んだ。千葉県、埼玉県、山梨県、群馬県、長野県方面を通過し、福井県敦賀市付近を経て日本海へ抜けた。

気象庁の位置表では、8月12日9時に日本海で熱帯低気圧へ変わったことが記録されている。

この台風では、中心から離れた地域でも強風が観測された。ウェザーニュースによると、仙台市では20m/s以上の強風を観測。倒木や送電線の断線などによって、茨城県・栃木県を中心に約3,000戸以上が停電した。

鉄道の運転見合わせ、高速道路の通行止め、航空便やフェリーの欠航など、交通インフラにも影響が及んだ。

台風通過後も続いた千葉県の記録的豪雨

2026年8月の気象災害で見逃せないのが、台風15号の通過後に発生した「令和8年8月千葉豪雨」だ。

気象庁の9月1日の分析によると、8月13日夕方から14日未明にかけて千葉県で記録的な大雨となり、千葉市では24時間降水量367mm、1時間降水量115mmを観測。いずれも観測史上1位を更新した。

この豪雨は台風15号の中心が再び千葉県を通過したという話ではない。台風の経路に関係した大規模な大気の循環が、房総半島へ暖かく湿った空気を送り込む環境を作り、その後の豪雨にも関係したという点が重要だ。

気象庁の分析では、上空の寒気と下層の暖湿気が重なって大気が非常に不安定になり、線状降水帯を伴う豪雨につながったと説明されている。

【原因を徹底分析】偏西風の蛇行・寒冷渦・モンスーンジャイアの仕組み

① 偏西風の蛇行が日本付近の大気を二分した

2026年の逆走台風を説明するうえで、最も重要な要素の一つが偏西風の大きな蛇行だ。

偏西風とは、中緯度地域の上空を西から東へ吹く強い風のこと。高度約10km付近を流れるジェット気流も、その代表的な存在である。

通常は西から東へ流れる偏西風だが、常に直線的に流れているわけではない。南北に大きく波打つことで、気圧の尾根や谷が形成され、周囲の高気圧や低気圧の位置にも影響を及ぼす。

2026年8月の日本付近では、この偏西風が大きく蛇行し、日本の東海上で南北2つの流れに分かれた。

気象庁の分析によると、南側に分かれた偏西風は上層の寒冷渦を日本付近へ繰り返し南下させた。一方、北側に分かれた偏西風は、日本の東海上に下層の優勢な高気圧が停滞する状況に寄与した。

この南北の大気の配置が、台風15号の進路を通常とは異なる方向へ導く背景になった。

② 寒冷渦は上空の冷たい空気を閉じ込めた渦

寒冷渦とは、上空の中層から上層に発生する低気圧性の渦で、英語ではカットオフローとも呼ばれる。

地上付近にできる一般的な低気圧とは異なり、上空約5,000〜10,000m付近に形成されるのが特徴だ。

文部科学省の研究関連資料で紹介されている解説によると、寒冷渦は偏西風が南側へ大きく蛇行した際、その一部が切り離されるようにして形成される。内部には周囲より冷たい空気が閉じ込められている。

寒冷渦の規模は直径500〜2,000km程度、寿命は平均2〜4日ほどとされる。

寒冷渦が南下すると、上空に冷たい空気が流れ込むことで大気の状態が不安定になり、積乱雲や激しい雨が発生しやすくなる。

2026年の台風15号について、気象庁は南下した複数の上層寒冷渦が進路に影響したと分析している。寒冷渦が台風を単純に引っ張ったというよりも、周囲の風や気圧配置を変えることで、台風の移動環境に影響を及ぼしたと理解すると分かりやすい。

③ モンスーンジャイアが形成した巨大な反時計回りの循環

もう一つの重要なキーワードが、モンスーンジャイアだ。

モンスーンジャイアとは、アジアモンスーンに伴う風や熱帯低気圧の外側の循環などが関係して形成される、巨大な低気圧性の渦を指す。北半球では反時計回りに回転する。

九州大学が2025年10月に公表した研究成果では、盛夏期に日本の南方海上に現れるモンスーンジャイアについて、主に熱帯低気圧や台風の外側循環によって形成され、その水平規模は約2,500kmに及ぶと説明されている。

2026年8月の気象庁の分析では、太平洋中部の熱帯域から西北西へ進んできた大きな低気圧が、日本の南海上でアジアモンスーンの強い西風に伴う水蒸気の流れを取り込み、モンスーントラフと一体化したことで、大規模なモンスーンジャイアになった。

この巨大な循環が存在したことで、台風15号の進路を左右する大気の流れにも特徴が生まれた。

気象庁は、台風15号が北側の強い高気圧と南側のモンスーンジャイアの間の流れに沿って西進したと分析している。

④ 太平洋高気圧と日本の東海上の高気圧の位置関係

台風の進路を考えるとき、高気圧の位置も欠かせない。

太平洋高気圧は、夏の日本付近の天候を左右する代表的な高気圧だ。その縁を回る風は、台風の移動方向や速度に影響する。

一般的に、台風は高気圧の中心を直接突き抜けるというより、その周辺の風の流れに沿って移動する。高気圧の張り出す方向や勢力が変われば、台風が通りやすいルートも変わる。

2026年の場合、気象庁が特に注目したのは、日本の東海上に停滞した下層の優勢な高気圧だ。この高気圧は、北側へ蛇行した偏西風の流れと関係して強まった。

南側のモンスーンジャイアと北側の高気圧という異なる大気の循環の間に、西向きの流れが生まれたことが台風15号の異例の経路を説明する要点となる。

【過去の事例を比較】2016年・2021年・2024年の逆走台風との違い

2026年の台風15号だけが、東側から接近して通常とは異なる進路を取ったわけではない。過去にも東北地方の太平洋側へ上陸したり、日本付近で西寄りに進路を変えたりした台風がある。

ただし、これらの台風はすべて同じ仕組みで動いたわけではない。発生位置や進路変更のタイミング、周囲の高気圧の配置には違いがある。

発生年・台風 主な進路・経緯 特徴・注目点
2016年 台風10号(ライオンロック) 南西進した後、北東進に転じ、さらに北西へ進んで岩手県に上陸 太平洋高気圧とオホーツク海高気圧の影響を受けた特異な経路
2021年 台風8号(ネパルタク) 日本の東海上を北上した後、西寄りに進み宮城県石巻市付近に上陸 宮城県への台風上陸は1951年の統計開始以来初めて
2024年 台風5号(マリア) 小笠原諸島近海で発生後、北上・北西進して岩手県大船渡市付近に上陸 オホーツク海高気圧の張り出しが進路変更に関係
2026年 台風15号(チャンホン) ウェーク島近海で発生後、北上して進路を西寄りに変え、茨城県に上陸。本州を西進 偏西風の二分・蛇行、寒冷渦、モンスーンジャイア、東海上の高気圧が複合的に影響
2016年台風10号:南西進から北東進、そして北西進へ

2016年の台風10号は、逆走台風の代表的な事例として知られている。

8月21日に台風となった後、日本の南海上を南西方向へ進み、非常に強い勢力に発達した。その後、偏西風の影響を受けて進路を東寄りに変更し、太平洋高気圧の縁に沿うように北東へ進んだ。

さらに8月29日には、オホーツク海から張り出した高気圧の影響で西寄りに進路を変更。翌30日17時30分ごろ、岩手県大船渡市付近に上陸した。

気象庁やJAXAの資料によると、東北地方の太平洋側に台風が上陸したのは、1951年の統計開始以来初めてだった。

岩手県では宮古市で1時間80mmの猛烈な雨を観測するなど、記録的な大雨となった。JAXAの分析資料では、北海道と岩手県を合わせて23人が亡くなったことも記録されている。

2021年台風8号:宮城県に初めて上陸した台風

2021年7月に発生した台風8号ネパルタクも、通常とは異なる進路で知られる。

日本の東海上を北上した後、進路を西寄りに変え、7月28日午前6時前に宮城県石巻市付近へ上陸した。

宮城県への台風上陸は、1951年の統計開始以来初めてだった。

この事例は、北上してきた台風が東北地方の太平洋側へ接近し、最終的に西寄りへ進路を変えることがあると示した事例だ。

2024年台風5号:岩手県に上陸したマリア

2024年の台風5号マリアは、8月5日に小笠原諸島近海で熱帯低気圧として発生し、8月8日に台風となった。

その後、北東方向へ進んだ後に北寄り、さらに北西寄りへと進路を変え、8月12日8時30分ごろに岩手県大船渡市付近に上陸した。

気象庁の2024年台風資料では、オホーツク海の高気圧が北海道付近へ勢力を拡大したことが、北西進と東北地方への接近に関係したと説明されている。

岩手県では記録的な大雨となった。東北地方の太平洋側からの上陸は、2016年などに続く珍しい事例だった。

過去の台風と2026年台風15号は何が違ったのか

過去の事例と比較すると、東北・関東の太平洋側に台風が接近すること自体は、決して前例のない現象ではない。

しかし、2026年台風15号は、茨城県南部に上陸した後、関東内陸部から中部地方を通過し、日本海へ向かうという、本州を東から西へ横断する経路をたどった。

気象庁が今回の進路について「過去あまり例のない経路」と評価したのは、この大規模な大気循環の組み合わせが特徴的だったためだ。

したがって、過去の逆走台風と2026年の台風15号を単純に同一視するのではなく、共通するのは東側からの接近や西寄りへの進路変更であり、その具体的な原因は事例ごとに異なると理解する必要がある。

【エルニーニョとの関係】2026年に台風が増えた背景と進路への影響

2026年は顕著なエルニーニョ現象が発生

2026年の台風を考えるうえでは、エルニーニョ現象も重要な背景となる。

エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の中部から東部にかけて海面水温が平年より高くなる現象だ。熱帯域の積乱雲の発生場所や大気の循環が変化し、世界各地の気候に影響を与える。

気象庁の2026年9月1日の発表によると、春からエルニーニョ現象が発生しているとみられ、7月の太平洋赤道域東部の海面水温は基準値より2.5℃高かった。これは1997年と並ぶ、7月として過去最大の水温偏差だった。

台風の発生数にも影響した可能性

気象庁によると、2026年夏の台風発生数は17個。平年値11.0個を大きく上回り、1951年の統計開始以来3位タイの多さとなった。

その背景には、7月から8月にかけて偏東風波動の活動が活発だったことがあると分析されている。

偏東風波動は、熱帯域の東風の中に生じる大気の波状の変動で、熱帯低気圧の発生に関係する。エルニーニョ現象が発生している夏には、この波動が活発になる傾向があることから、2026年の台風発生数の増加にも影響した可能性が指摘された。

エルニーニョが逆走台風を直接発生させるわけではない

ここで注意したいのが、エルニーニョ現象と逆走台風の因果関係だ。

エルニーニョ現象は、熱帯域の対流活動や大規模な大気循環を変化させ、台風の発生環境に影響を及ぼす。しかし、それだけで特定の台風が東から西へ進むと決まるわけではない。

2026年台風15号の進路について、気象庁が示した直接的な説明は、偏西風の蛇行、モンスーンジャイア、寒冷渦、北側の強い高気圧という複数の要素の組み合わせだ。

エルニーニョ現象は台風が発生しやすい環境を作る背景の一つであり、個々の台風の進路を決める要因とは区別して考える必要がある。

【進路予測の精度】気象庁と海外予測モデルの違い・防災対策

台風の進路予測はどのくらい正確なのか

逆走台風のように珍しい進路を取る台風では、進路予測の難しさも問題になる。

気象庁は、台風の中心位置について120時間先、つまり5日先まで予報を発表している。予報円は台風の中心が70%の確率で入ると予想される範囲であり、円の中心を確定した進路と考えてはいけない。

気象庁が公表した2024年の台風進路予報の年平均誤差は、次のとおりだった。

  • 1日先:72km
  • 3日先:150km
  • 5日先:420km

気象庁は、数値予報モデルの改良などによって、長期的には進路予測の精度が向上していると説明している。ただし、その年の台風の特徴によって誤差は変動する。

特に2024年は、4日先までは改善傾向が見られた一方、5日先の精度は予測が難しかった台風10号などの影響で、近年では悪い結果となった。

2026年の台風15号で注目されたAI予測モデル

2026年台風15号については、ウェザーニュースが各国の数値予報モデルやAI予測モデルを比較した分析を公表している。

同社の比較では、120時間先までの予測誤差の積算値において、ヨーロッパ中期予報センターの物理気象モデル(ECMWF EM)が最も精度の高い結果を示した。これにGoogle DeepMindのAIモデル、ヨーロッパ中期予報センターのAIモデルなどが続いた。

この事例では、AIモデルが従来型の物理気象モデルを明確に上回ったわけではない。

また、台風15号のように類似事例が少ない進路では、発生初期の雲や風の構造が不明瞭になりやすく、予測モデルによって進路の見立てが分かれることもある。

なお、これはウェザーニュースによる個別事例の比較であり、年間を通じた各国の予測機関の優劣を確定するランキングではない。2026年の気象庁の年間精度検証も、2026年11月時点ではまだ公表されていない。

逆走台風に備えるための5つの防災対策

逆走台風では、普段想定している進路と異なる地域に強風や大雨が及ぶ可能性がある。次の5点を意識しておきたい。

1. 台風の中心進路だけで安全を判断しない

台風の中心から離れていても、強風や大雨が発生することがある。進路予報に加えて、強風域、雨雲レーダー、気象警報を確認することが大切だ。

2. ハザードマップで避難場所を確認する

自宅や職場周辺の洪水・土砂災害ハザードマップを事前に確認しておく。特に河川沿いや低地、急傾斜地では、避難先と安全な経路を把握しておきたい。

3. 停電や交通機関の停止に備える

2026年台風15号では、停電や鉄道の運転見合わせ、高速道路の通行止めなどが発生した。モバイルバッテリー、懐中電灯、飲料水、食料、常備薬などを準備しておく。

4. 強風が来る前に屋外の物を固定する

植木鉢、自転車、物干し台、ベランダの小物などは、風が強まる前に屋内へ移すか固定する。窓や雨戸の状態も確認しておこう。

5. 避難情報が出たら早めに行動する

大雨や暴風が強まってからの移動は危険だ。自治体の避難情報や気象庁の警報、土砂災害・洪水の危険度情報を確認し、安全なうちに避難する。河川や用水路の様子を見に行く行動も避けたい。

特に注意したい人と地域

逆走台風への備えで、特に注意したいのは次のようなケースだ。

  • 河川の近くや浸水想定区域に住んでいる人
  • 山間部や急傾斜地の近くに住んでいる人
  • 高齢者や小さな子どもと暮らしている世帯
  • 停電すると医療機器や生活設備に影響が出る人
  • 通勤・通学で鉄道や道路を日常的に利用する人

反対に、台風の進路図だけを見て「自分の地域は中心から外れているから大丈夫」と判断するのは避けたい。雨と風はそれぞれ影響範囲が異なるため、複数の気象情報を組み合わせて判断する必要がある。

【プロの結論】逆走台風から読み取るべき3つの重要な教訓

2026年台風15号の事例は、台風の進路が単純な北上・北東進だけでは説明できないことを示した。

気象庁の分析で明らかになったのは、偏西風の蛇行による二つの流れ、南下する寒冷渦、モンスーンジャイア、そして日本の東海上の強い高気圧が複雑に作用したという構図だ。

ここから読み取れる教訓は3つある。

第一に、台風の進路は周囲の大気の流れによって変化する。台風単体の強さだけを見ても、実際の移動方向を十分に理解することはできない。偏西風や高気圧の位置など、広い範囲の気象条件が関係している。

第二に、過去の台風と似ているからといって、同じ進路になるとは限らない。2016年、2021年、2024年の事例には共通点がある一方、進路を変えた原因や気圧配置はそれぞれ異なる。過去の経験は参考になるが、最新の予報を優先する姿勢が必要だ。

第三に、災害の危険は台風の中心が通過した時点で終わるわけではない。2026年8月には台風15号の通過後、千葉県で記録的な豪雨が発生した。台風に伴う水蒸気の流れや上空の寒気など、広域の大気環境がその後の天候にも影響する。

逆走台風は、珍しい進路そのものよりも、進路を変える大気の仕組みと、それによって変化する災害リスクに注目すべき現象だ。

【逆走台風に関するよくある質問(FAQ)】

Q1:逆走台風とは、具体的にどの方向へ進む台風ですか?
A1:一般的には、日本付近で通常の北上・北東進とは異なり、東から西へ進むなど、珍しい進路を取る台風を指す通称です。気象庁の正式な台風分類ではありません。

Q2:2026年の台風15号はなぜ西進したのですか?
A2:偏西風が日本付近で大きく蛇行して南北に分かれたこと、上層の寒冷渦が南下したこと、日本の南海上にモンスーンジャイアが形成されたこと、北側の高気圧が強まったことなどが複合的に関係しました。

Q3:逆走台風はエルニーニョ現象が原因で発生するのですか?
A3:エルニーニョ現象が直接逆走台風を発生させるわけではありません。熱帯域の対流活動や台風の発生数に影響する可能性はありますが、個々の台風の進路は周囲の風や気圧配置によって決まります。

Q4:2016年・2021年・2024年にも逆走台風は発生しましたか?
A4:それぞれ異例の進路を取った台風がありました。2016年の台風10号は岩手県に上陸し、2021年の台風8号は宮城県石巻市付近に上陸、2024年の台風5号は岩手県大船渡市付近に上陸しました。ただし、各台風の進路や気象条件は異なります。

Q5:逆走台風が接近した場合、どの情報を確認すればよいですか?
A5:気象庁の台風進路予報、暴風域・強風域、雨雲レーダー、警報・注意報、洪水や土砂災害の危険度情報を確認してください。自治体の避難情報も併せて確認し、危険が高まる前に行動することが大切です。

まとめ:逆走台風の仕組みを理解して2026年以降の異常進路に備える

逆走台風とは、通常の台風とは異なる方向へ進む異例の経路を取る台風の通称だ。2026年8月の台風15号は、茨城県南部に上陸した後、本州を東から西へ横断するという珍しい進路をたどった。

その背景には、偏西風の蛇行、寒冷渦の南下、モンスーンジャイアの形成、日本の東海上の高気圧という複数の気象要因があった。加えて、顕著なエルニーニョ現象が2026年夏の台風発生数に影響した可能性も、気象庁によって指摘されている。

2016年台風10号、2021年台風8号、2024年台風5号などの過去の事例を振り返っても、台風の進路は高気圧や偏西風の位置によって大きく変化することが分かる。

今後も台風の進路を判断するときは、従来の経験だけに頼らず、最新の気象庁発表や自治体の防災情報を確認することが欠かせない。台風の中心がどこを通るかだけでなく、強風や大雨がどの地域に及ぶかを把握することが、命と暮らしを守るための重要な判断基準になる。

主な取材・検証資料

- 気象庁「令和8年夏を対象とした異常気象分析検討会の結果について」(2026年9月1日)
- 気象庁「2026年台風第15号 CHAN-HOM 位置表」
- 気象庁「台風予報の精度検証結果」
- 気象庁「2024年(令和6年)の台風のまとめ」
- 九州大学「盛夏期に出現するモンスーンジャイアの実体を解明」(2025年10月14日)
- JAXA「宇宙からみた2016年台風第10号」
- ウェザーニュース「観測史上初の茨城上陸となった2026年台風15号は日本列島を西へ横断」(2026年9月7日)

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白川 結衣

生活情報の編集に9年。化粧品の成分表示と厚生労働省・学会の公開資料を一次情報とし、体験談と公的データを混ぜずに書き分けます。

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