万引きGメンとは、スーパーや書店、ドラッグストアなどの商業施設で、万引きの防止や発見を担う私服保安員の通称です。一般の買い物客に紛れながら店内を巡回し、犯罪を未然に防ぐとともに、万引きが疑われる事案を確認した際には店舗スタッフや警察と連携します。警察官とは異なり、民間の警備業務に従事する専門職です。
2026年現在、万引き対策が改めて重要になっています。警察庁の「令和7年の犯罪情勢」によると、2025年の万引き認知件数は10万5,135件で、前年から7.0%増加しました。防犯カメラやセルフレジ監視システムの普及が進む一方、書店・文具店などの小規模店舗では、犯罪抑止と買い物客への接客をどう両立させるかが課題になっています。
【基礎知識】万引きとはどんな犯罪?2025年の被害実態と法律上の定義

万引きとは、買い物客を装って店舗に入り、商品を代金を支払わずに持ち去る行為を指します。刑法上、万引きという独立した罪名があるわけではなく、基本的には刑法235条の窃盗罪に該当します。
刑法235条は、他人の財物を窃取した者について、10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金を定めています。2025年6月から拘禁刑制度が施行されたため、2026年現在の法令表記も「拘禁刑」です。
重要なのは、商品の価格が安いから犯罪にならないということはない点です。数百円の商品であっても、窃盗に該当する可能性があります。
また、商品を店外に持ち出すまで犯罪が成立しないと考えるのも正確ではありません。商品の占有が店舗側から行為者に移ったか、持ち去る意思があったかなど、具体的な状況によって既遂・未遂が判断されます。単なる会計ミスと故意による窃盗も区別されます。
2025年の万引き認知件数は10万件を突破警察庁が2026年2月に公表した「令和7年の犯罪情勢」では、万引きの認知件数が10万5,135件に達しました。前年の9万8,292件から6,843件増加しています。
発生場所を見ると、商業施設が最も多く、コンビニエンスストアやドラッグストアでも増加が確認されています。
- 商業施設:5万6,652件
- コンビニエンスストア:2万2,929件
- ドラッグストア:1万6,123件
- その他:9,431件
商業施設だけで全体の半数以上を占めています。万引きは特定の業態だけの問題ではなく、日常的に利用する小売店舗全体に関係する防犯課題です。
加えて、2021年の8万6,237件を底として、万引きの認知件数は4年連続で増加しています。これらは警察に認知された件数であり、実際に発生したすべての被害を表す数字ではありません。
こうした状況を受け、警察庁は2024年3月に万引き防止に向けた総合的な対策の強化を通達しました。店舗の陳列方法、防犯カメラ、ICタグ、警報装置、従業員の声かけなどを組み合わせた対策を求めています。
【仕事内容】万引きGメンの役割とは?警察官との違いや業務範囲
万引きGメンは私服保安員として店舗を守る万引きGメンは、一般的に「私服保安員」と呼ばれる警備員です。警備会社に所属し、契約先のスーパーマーケットやショッピングセンター、ドラッグストアなどに派遣される形態もあります。
制服警備員と異なり、一般の買い物客に近い服装で勤務することが特徴です。店舗の雰囲気を大きく変えずに防犯活動を行えるため、接客と犯罪抑止の両立を図る役割を担っています。
主な仕事内容は次のとおりです。
- 店内巡回:売場の状況を確認し、万引きが発生しにくい環境を維持する。
- 防犯監視:店舗のルールや防犯方針に沿って、売場の状況を観察する。
- 事実確認:万引きが疑われる事案について、商品の取り扱いや会計状況などを確認する。
- 店舗スタッフとの連携:防犯上の問題を共有し、適切な対応につなげる。
- 警察への引き継ぎ:犯罪が確認された場合などに、店舗側と連携して警察への通報や対応を行う。
仕事の中心は、単に万引き犯を捕まえることではありません。犯罪を起こさせない環境をつくり、店舗の損失を抑えることも大切な役割です。
万引きGメンと警察官には明確な権限の違いがある万引きGメンを警察官と同じような捜査権限を持つ職業だと考えるのは誤りです。
警備業法第15条では、警備業者や警備員について、法律によって特別な権限を与えられているものではないことを明確にしています。他人の権利や自由を侵害することも禁止されています。
一方、刑事訴訟法第213条では、現行犯人について、一般の私人であっても逮捕できると定めています。ただし、これは警備員に警察と同じ捜査権限を与えるものではありません。私人が現行犯逮捕した場合には、同法第214条に基づき、速やかに警察などへ引き渡す必要があります。
つまり、万引きGメンの専門性は、警察官のような公的権限ではなく、店舗防犯に関する知識、観察力、適切な判断、関係者との連携にあります。
【見分け方】万引きGメンはどこにいる?服装や特徴に共通点はあるのか
私服勤務のため外見だけで判断するのは難しい万引きGメンの見分け方を調べる人は少なくありません。しかし、私服保安員という名称が示すとおり、一般客に近い服装で勤務するケースがあり、誰にでも当てはまる外見上の特徴はありません。
勤務する店舗や警備会社によって服装、勤務形態、巡回方法は異なります。制服を着た警備員だけでなく、私服の保安員が勤務している場合もあります。
そのため、年齢、性別、服装、持ち物などを根拠に、特定の人物を万引きGメンと決めつけることはできません。一般客を不審者扱いするような誤解を生まない配慮も必要です。
万引きGメンに求められるのは観察力と冷静な判断私服保安員には、店舗の状況を把握する力や、商品の会計状況を含めて事実を確認する能力が大切です。
見た目や第一印象だけで犯罪を判断するのではなく、実際の行動や客観的な状況を確認が必要です。
万引きは少年から高齢者まで幅広い年齢層で発生しています。警察庁の2024年の通達でも、検挙被疑者が少年から高齢者まで各層に広がっていることが指摘されました。
したがって、特定の年齢層や服装の人だけを警戒する方法では、適切な防犯にはなりません。公平な接客と客観的な事実確認が、保安業務の基本です。
【店舗防犯】防犯カメラ・声かけ・見回りはどう活用されている?
防犯カメラは犯罪抑止と事後確認の両方に役立つ万引き防止において、防犯カメラは重要な設備です。設置の目的は、犯罪の瞬間を撮影することだけではありません。
カメラが設置されていることを来店客に知らせることで犯罪を思いとどまらせる効果が期待できるほか、トラブルが起きた際に事実関係を確認するための記録としても活用できます。
神奈川県警察の万引き防止ガイドラインでは、売場や店舗出入口、エントランス、駐車場などへの防犯カメラ設置を推奨しています。また、映像の保存、機器の点検、撮影範囲の見直しなども対策に含まれています。
ただし、防犯カメラだけで万引きを完全に防げるわけではありません。人による巡回や接客、商品の管理を組み合わせることが必要です。
万引き防止の基本は「いらっしゃいませ」の声かけ店舗防犯では、従業員による挨拶や声かけも重要な役割を果たします。
警視庁が2026年6月18日に更新した万引き未然防止対策のページでは、平成27年度の万引き被疑者等に関する実態調査を紹介しています。同調査では、万引きを諦める要因として、少年・成人・高齢者の各世代で「店員の声掛け」が60%を超えていました。
また、食品スーパーで大学生ボランティアによる買い物コンシェルジュ活動を実施したところ、商品欠品率の減少や店舗全体の売上向上などの成果が得られたとされています。
ここで注目したいのは、声かけが単なる監視ではないことです。
「いらっしゃいませ」「何かお探しでしょうか」といった自然な挨拶は、買い物客へのサービスであると同時に、店舗スタッフが売場に目を配っていることを伝えます。防犯と接客を同時に実現できる点が大きな特徴です。
書店・文具店では売場づくりそのものが防犯になる書店や文具店では、セルフサービス方式の売場が古くから採用されてきました。利用客が自由に商品を手に取って比較できる一方、店舗側には商品管理と接客を両立させる難しさがあります。
特に書籍や文具は、商品点数が多く、小型の商品も扱うため、売場全体を把握する仕組みが大切です。
代表的な防犯対策は次のとおりです。
- 書店:棚の整理整頓、売場の見通しの確保、従業員の巡回、防犯カメラの活用。
- 文具店:商品陳列の工夫、売場の整理、スタッフによる接客、高額商品の管理。
- 大型商業施設:防犯カメラ、警備員の巡回、店舗スタッフとの情報共有。
- セルフサービス売場:商品の管理体制、適切な従業員配置、注意喚起表示。
店舗の構造や商品構成によって必要な対策は異なります。高価な設備を大量に導入するよりも、日々の整理整頓や接客体制を見直すことが有効な場合もあります。
セルフレジの普及で防犯対策も変化2025年10月に公表された全国スーパーマーケット協会、日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会による「2025年スーパーマーケット年次統計調査」では、セルフレジ万引きへの対策も取り上げられています。
調査における主な対策の業界推計値は、次のとおりです。
- セルフレジ付近にカメラを設置:84.8%
- 近くに従業員を配置して目視・レシート確認:51.9%
- お客様への声かけ:43.8%
これはスーパーマーケット企業を対象とした調査であり、すべての小売店舗の導入率を示すものではありません。それでも、セルフレジの利便性を維持しながら、人による確認と設備による監視を組み合わせる方向性が読み取れます。
【関係性と背景】馬渕哲・南條恵の万引き分析から考える店舗防犯
セルフサービス方式と万引きの関係書店や文具店などで万引き被害が問題になりやすい背景について、馬渕哲・南條恵は、販売現場の構造という観点から分析しています。
両氏の著書『良い店悪い店の法則―販売現場の人間学』は、1995年11月に日本経済新聞社から刊行された販売現場に関する書籍です。書誌情報では、馬淵哲・南条恵という表記も確認できます。
この分析で注目されるのは、書店や文具店ではセルフサービス方式が早くから採用され、子どもたちの興味を引く商品を数多く扱ってきたという点です。
店舗側から見れば、自由に商品を選べる環境は顧客満足度を高める仕組みです。しかし、商品に触れる機会が多く、接客を必要としない売場が広がれば、店舗側の管理負担も大きくなります。
セルフサービス売場が人間の狩猟採集的な感覚を刺激するという説明も紹介されてきましたが、これは万引きの原因を単一の心理で説明できるという意味ではありません。実際の店舗防犯では、商品管理、売場構造、接客、社会的な規範意識などを総合的に考える必要があります。
店舗防犯に関係する人物・組織・制度の関係| 人物・組織・制度 | 主な役割・内容 | 店舗防犯との関係 |
|---|---|---|
| 万引きGメン | 私服保安員として巡回・防犯活動を担当 | 犯罪抑止、事実確認、店舗との連携 |
| 店舗スタッフ | 接客、商品管理、売場巡回 | 日常的な声かけと異常の早期把握 |
| 警察 | 犯罪捜査、事件処理 | 被害申告の受理や刑事事件への対応 |
| 馬渕哲・南條恵 | 1995年刊『良い店悪い店の法則』の著者 | 販売現場とセルフサービス方式の問題を考える視点 |
| 警察庁 | 万引き防止の総合的な施策を推進 | 店舗防犯の指針や警察による防犯指導 |
| 防犯カメラ・ICタグ | 設備による監視・盗難防止 | 犯罪抑止と事後の事実確認を支援 |
これらの関係を見ると、万引き防止はGメンだけで完結する仕事ではないことが分かります。店舗スタッフ、警備会社、警察、設備メーカー、業界団体などがそれぞれの役割を果たすことで、防犯体制が成立します。
【店舗経営のジレンマ】万引き対策を強化すると客足が遠のくのか
過度な警戒は一般の買い物客にも心理的負担を与える店舗防犯には、避けて通れないジレンマがあります。
防犯カメラを目立つ場所に設置し、入店する客に必ず声をかけ、スタッフが頻繁に巡回すれば、万引きに対する抑止力は高まる可能性があります。
しかし、買い物を楽しみたい一般客にとって、常に監視されているような雰囲気は心地よいものではありません。
特に小規模な書店や文具店では、店員と客との距離が近く、接客の雰囲気が店舗の印象を大きく左右します。警戒を前面に出しすぎれば、商品をゆっくり選びたい客に心理的な圧迫感を与えることがあります。
近隣に競合店がある場合、買い物をしやすい店舗へ顧客が移る可能性もあります。万引き対策によって被害を抑えられても、一般客まで離れてしまえば、経営上の利益につながらないという問題が生じます。
防犯と接客は必ずしも対立するものではないただし、防犯を強化すると必ず客足が遠のくという考え方も適切ではありません。
警視庁が紹介する買い物コンシェルジュ活動では、挨拶や声かけ、買い物支援を組み合わせることで、商品欠品率の減少と店舗全体の売上向上が確認されています。
これは、警戒のためだけに客へ声をかけるのではなく、買い物をサポートする接客として声かけを位置づけることの可能性を示しています。
例えば、次のような考え方が店舗経営には有効です。
- 特定の客だけでなく、すべての来店客に自然な挨拶を行う。
- 防犯カメラの設置を明示し、安心して買い物ができる環境を整える。
- 商品を整理し、店内の見通しと買いやすさを両立させる。
- スタッフの巡回を接客や商品補充と組み合わせる。
- 万引きが疑われる場合も、先入観ではなく客観的な事実を確認する。
防犯を店舗全体のサービス品質の一部として設計すれば、顧客への圧迫感を抑えながら、犯罪抑止を図ることができます。
2026年以降は人とテクノロジーの組み合わせが鍵2026年の店舗防犯では、防犯カメラやICタグに加え、AIを活用した映像監視、セルフレジ周辺の管理システムなども選択肢になっています。
一方、機械による監視には誤検知や運用コスト、映像データの管理といった課題もあります。設備を増やすだけでは、店舗防犯の問題は解決しません。
特に重要なのは、人が対応すべき場面を見極めることです。機械は記録や確認を支援できますが、来店客への丁寧な説明や、会計ミスと故意の窃盗を区別する判断には人の対応が欠かせません。
万引きGメンの仕事も、単純な監視業務から、店舗の安全管理や顧客対応を含む総合的な保安業務へと、その役割を考える必要があります。
【プロの結論】万引きGメンと店舗防犯を正しく理解するための判断基準
万引きGメンについて理解するうえで、押さえておきたい要点は3つあります。
第一に、万引きGメンは警察官ではなく、民間の保安業務を担う専門職であること。その価値は、特別な捜査権限ではなく、店舗防犯に関する専門知識と現場での適切な判断にあります。
第二に、防犯カメラや巡回だけに依存しないこと。警察庁の対策指針や警視庁の取り組みからも、設備、接客、従業員教育、店舗間の情報共有などを組み合わせる考え方が重視されています。
第三に、一般客の買い物のしやすさを損なわないこと。万引き対策は犯罪を防ぐためのものであり、正直に買い物をする人を疑うためのものではありません。
店舗経営者が対策を選ぶ際には、設備の導入費用だけでなく、被害抑止効果、従業員の負担、顧客満足度、店舗の売上への影響まで考慮する必要があります。
最も望ましいのは、来店客に不必要な緊張感を与えず、自然な接客の中で犯罪を未然に防げる店舗です。万引きGメンは、その環境を支える重要な存在といえます。
【万引きGメン】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:万引きGメンは警察官なのですか?
A1:いいえ。万引きGメンは、一般的に私服保安員と呼ばれる民間の警備員です。警備業法に基づく警備業務を行いますが、警察官と同じ捜査権限はありません。
Q2:万引きGメンはどのような服装をしていますか?
A2:私服で勤務するケースがあり、一般客と外見上区別しにくいことがあります。勤務形態や服装は警備会社や店舗によって異なり、共通した見た目の特徴はありません。
Q3:万引きは商品を店外に持ち出さないと犯罪になりませんか?
A3:必ずしもそうではありません。窃盗罪の成立時期は、商品の占有が移転したかなど、具体的な状況によって判断されます。店外に出る前でも窃盗既遂となる場合があります。
Q4:万引き防止に最も効果的な対策は何ですか?
A4:一つの方法だけに依存せず、防犯カメラ、従業員の声かけ、店内巡回、商品管理、適切な陳列を組み合わせることが基本です。特に自然な挨拶や接客は、犯罪抑止と顧客満足度の両立につながる可能性があります。
Q5:書店や文具店で万引き対策が重視されるのはなぜですか?
A5:セルフサービス方式が古くから採用され、幅広い種類の商品を自由に手に取れる売場が多いためです。店舗の構造や商品特性に合わせた商品管理、巡回、接客、防犯カメラの活用が大切です。
Q6:セルフレジにも万引きGメンは必要ですか?
A6:セルフレジでは、設備による監視に加えて、従業員による確認や声かけも重要です。私服保安員を配置するかどうかは店舗の規模、被害状況、防犯予算などによって異なります。
まとめ:万引きGメンの役割は犯罪抑止と安心できる買い物環境の両立
万引きGメンは、私服保安員として店舗を巡回し、万引きの抑止や事実確認、警察との連携を担う専門職です。警察庁の2025年犯罪統計では万引きの認知件数が10万5,135件に達しており、店舗防犯の必要性は依然として高い状況です。
防犯カメラやICタグなどの設備は進化していますが、書店や文具店を含む小売店舗では、従業員の挨拶、声かけ、見回り、商品管理といった基本的な取り組みも欠かせません。
一方、過度な監視や威圧的な接客は、一般客の購買意欲を損なう可能性があります。馬渕哲・南條恵が販売現場の分析で示したように、店舗の仕組みと顧客の買い物体験は切り離せない問題です。
2026年以降の店舗防犯に求められるのは、機械による監視と人による接客の適切な組み合わせです。万引きを許さない環境をつくりながら、誰もが安心して商品を選べる店舗を維持すること。それこそが、万引きGメンと小売業界が目指すべき防犯のあり方です。
主な根拠資料(2026年時点)
- 警察庁「令和7年の犯罪情勢」(2026年2月公表)
- 警察庁「万引き防止に向けた総合的な対策の強化について」(2024年3月)
- 警視庁「『挨拶・声掛け』から始める万引き未然防止対策」(2026年6月更新)
- 神奈川県警察「万引き防止のガイドライン」
- 全国スーパーマーケット協会ほか「2025年スーパーマーケット年次統計調査」
- 国立情報学研究所 CiNii Books『良い店悪い店の法則―販売現場の人間学』 библиографии記録
※2025年の犯罪統計は警察庁の確定値を使用しています。スーパーマーケットのセルフレジ対策比率は、業界調査の推計値です。