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【棋士編入試験の仕組み】通常のプロ入りとは何が違う?

桐島 奈緒 桐島 奈緒 • 更新: • 公開: • 読了約 20 分
目次

棋士編入試験は、日本将棋連盟が定める、奨励会を経ずにプロ棋士を目指せる制度です。対象となるのは、プロ公式戦で実績を残したアマチュアと女流棋士です。

通常、将棋のプロ棋士になるには、棋士養成機関である奨励会に入会し、三段リーグで原則上位2名に入るなどして四段に昇段する必要があります。三段リーグは年2回開催され、昇段枠が限られているため、長期間在籍してもプロ入りできないケースがあります。

棋士編入試験は、こうした通常のルートとは別に、すでにプロ棋士と互角以上に戦える実力を公式戦の成績で証明した人に、プロ入りの機会を与える仕組みです。

試験の基本的な流れ



公式戦で受験資格を獲得

10勝以上・勝率6割5分以上など、連盟の規定を満たす。


1か月以内に受験を申請

棋士の推薦を受け、必要書類と受験料を提出する。


新四段5人との五番勝負

原則として月1局、持ち時間3時間で対局する。


3勝すれば合格

フリークラスへの編入資格を獲得する。


四段としてプロ棋士になる

4月1日または10月1日付で編入される。

試験官は新四段5人を棋士番号順に選出します。申請が受理された月の2か月後から試験が始まり、原則として1か月に1局ずつ対局します。

つまり、受験資格を獲得した時点でプロ入りが決まるわけではありません。プロ棋士との直接対決で実力を証明しなければならない点が、この制度の大きな特徴です。日本将棋連盟の公式規定にも、5局中3勝で合格すると明記されています。

【棋士編入試験の受験資格】10勝以上・勝率65%の基準と例外ルート

棋士編入試験

受験資格の基本条件は、公式戦において最も良いところから見て10勝以上、かつ勝率6割5分以上の成績を収めることです。

対象者はアマチュアと女流棋士。単に将棋が強いだけでは足りず、棋士が参加する公式戦で一定の結果を残す必要があります。

① 10勝以上・勝率6割5分以上の条件

この条件は、公式戦の成績を基準に受験資格を判断するものです。

例えば、福間香奈は2025年10月6日の王位戦予選で浦野真彦八段に勝利し、直近の公式戦成績を10勝5敗としました。勝率は約66.7%で、受験資格の基準をクリアしています。

重要なのは、10勝という数字だけではなく、勝率も同時に満たさなければならないことです。10勝していても、敗戦数が多く勝率が65%に届かなければ資格は得られません。

また、受験資格を獲得しても申請期間は無期限ではありません。資格を得た成績を収めてから1か月以内に申請する必要があります。

② 指定棋戦で好成績を残すルート

日本将棋連盟の規定には、一定の棋戦で特別な成績を残すことによって受験資格を得るルートも設けられています。

  • 竜王ランキング戦:優勝
  • 王位戦:挑戦者決定リーグ入り
  • 王座戦:挑戦者決定トーナメントベスト8
  • 棋王戦:挑戦者決定トーナメントベスト8
  • 棋聖戦:決勝トーナメントベスト8
  • 朝日杯将棋オープン戦:本戦トーナメントベスト4
  • 銀河戦:決勝トーナメントベスト4
  • NHK杯戦:本戦トーナメントベスト4
  • 新人王戦:優勝

この指定棋戦の成績によるルートでは、四段以上の正会員である棋士の推薦も必要です。

この仕組みが設けられている理由は、勝敗数だけでは評価しきれない実績を考慮するためです。例えば、竜王ランキング戦で優勝することや、タイトル挑戦者を決めるリーグ・トーナメントで上位に進出することは、極めて高い競技能力を示す実績になります。

③ 受験資格を得れば何度でも挑戦できる?

棋士編入試験は、一度不合格になったら二度と受験できない制度ではありません。

再び公式戦で受験資格を満たせば、再挑戦できます。福間香奈は2022年に続いて2026年にも受験しました。西山朋佳も2024年から2025年にかけて挑戦しています。

ただし、同じ受験資格を何度も使えるわけではありません。再挑戦には、その都度、規定の成績を新たに獲得する必要があります。

【棋士編入試験の合格条件・受験料】五番勝負の厳しさを解説

棋士編入試験の合格条件は明快です。新四段5人との五番勝負で3勝を挙げること。これがプロ棋士への入口になります。

受験料は50万円(税別)

日本将棋連盟が公開している規定では、受験料は50万円(税別)です。

書類の提出も必要で、主なものは以下のとおりです。

  • 日本将棋連盟所定の受験申込書
  • 顔写真を添付した履歴書
  • 最終学業成績証明書(在学中の場合は指定された直近の成績証明書)
  • 健康診断書

申請書類は、受験の推薦を受けた棋士、いわゆる師匠を通じて提出します。会場は原則として東京・将棋会館または関西将棋会館です。

五番勝負で3勝することの難しさ

試験官は、これからプロ棋士としてデビューする新四段5人です。若手とはいえ、奨励会の厳しい競争を勝ち抜いた実力者ばかりです。

対局の持ち時間は双方3時間。第1局は振り駒で先後を決め、以降は先後を交代します。通常の公式戦に準じた対局規定で行われるため、短時間の早指しとは異なる、読みの深さと持久力が大切です。

加えて、受験者には5局を通じて3勝することが大切です。2勝しても、残りの対局で敗れれば合格には届きません。西山朋佳が2勝3敗で不合格となった結果は、この制度の厳しさを象徴しています。

合格後はフリークラスに編入され、4月1日または10月1日付で四段となります。合格した瞬間に名人戦の順位戦へ参加できるわけではない点にも注意が必要です。

受験資格、提出書類、受験料、試験日程については、日本将棋連盟の「棋士編入試験規定」に詳しく掲載されています。

【棋士編入試験の歴代合格者】今泉健司・折田翔吾・小山怜央の結果

棋士編入試験の歴史を振り返ると、合格者は限られています。特に制度化後の五番勝負では、合格者が3人、不合格者も複数存在します。

代表的な受験者と結果を整理すると、次のとおりです。

受験者 実施時期 結果 今泉健司 2014年 3勝1敗・合格 折田翔吾 2019~2020年 3勝1敗・合格 里見香奈(現・福間香奈) 2022年 0勝3敗・不合格 小山怜央 2022~2023年 3勝1敗・合格 西山朋佳 2024~2025年 2勝3敗・不合格 福間香奈(2度目) 2026年 0勝3敗・不合格

出典:日本将棋連盟の制度規定、ABEMA TIMES、各試験の報道資料。里見香奈と福間香奈は同一人物。

今泉健司:制度化後の最初の合格者

今泉健司は2014年に編入試験を受験し、3勝1敗で合格しました。2015年4月1日付で四段となり、棋士編入試験の制度化後、最初の合格者となっています。

元奨励会三段という経歴を持ち、プロ入りへの道を一度は断たれた後、アマチュアとして実績を重ねて再びプロへの扉を開いた人物です。

折田翔吾:YouTubeでの活動でも知られる棋士

折田翔吾は、2019年から2020年にかけて編入試験に挑戦し、3勝1敗で合格しました。

将棋の普及活動やYouTubeでの発信でも知られ、アマチュアとしての活動からプロ棋士へと進んだ経歴は、編入制度が持つ可能性を示す事例となりました。

小山怜央:奨励会未経験からのプロ入り

小山怜央は2023年2月、編入試験第4局で勝利し、3勝1敗で合格しました。

特筆すべきなのは、奨励会に所属した経験がないまま棋士編入試験に合格したことです。アマチュア棋界で実績を積み上げ、公式戦で受験資格を獲得した小山のケースは、奨励会以外からプロを目指す道が実際に機能したことを示しています。

棋士編入試験の合格率は約50%?

制度化後の五番勝負方式で実施された試験を、2026年までの6回分で単純集計すると、合格は3回、不合格は3回です。受験回ベースでは50%となります。

ただし、これは公式に発表された固定的な合格率ではありません。受験者数が少なく、同じ人物が複数回挑戦しているため、将来も同じ割合になるとは限りません。

また、受験資格を獲得したものの実際には申し込まなかった人もいます。資格取得者全体と、試験を受けた人の合格率は区別して考える必要があります。

なお、現在の五番勝負方式とは別に、1944年の花村元司、2005年の瀬川晶司には特例的な六番勝負による編入の歴史があります。特に瀬川の2005年の挑戦は、その後の制度整備につながった重要な出来事です。

【2026年最新動向】福間香奈の再挑戦・資格3回案否決・西山朋佳の棋士編入

2026年の棋士編入をめぐる動きは、福間香奈の再挑戦、制度改正案の否決、そして西山朋佳の新制度による棋士編入という3つの出来事に整理できます。

福間香奈は2026年3月、2度目の挑戦も0勝3敗

福間香奈は2022年に旧姓の里見香奈として初めて編入試験を受験し、0勝3敗で不合格となりました。

その後、2025年10月6日の王位戦予選で浦野真彦八段に勝利し、公式戦の直近成績を10勝5敗として、2度目の受験資格を獲得しました。

試験は2026年1月から始まりましたが、第1局、第2局と連敗。3月27日の第3局では生垣寛人四段と対局し、88手で敗れました。これにより0勝3敗で不合格が決定しました。

神戸新聞の報道によると、福間は終局後、自身の力不足を振り返りながらも、今後の挑戦について前向きな気持ちを示しています。受験資格を再び得れば、再挑戦すること自体は制度上可能です。

この結果は、女流棋界のトップクラスで活躍する棋士であっても、若手四段との五番勝負で勝ち越すことが容易ではないという現実を示しました。

2026年6月「受験資格3回で棋士」案が否決

2026年6月5日に開かれた日本将棋連盟の第77回通常総会では、棋士編入試験の受験資格をめぐる重要な制度改正案が議論されました。

提案されたのは、棋士編入試験の受験資格を3回獲得した人に、フリークラス入りの権利を与えるという内容です。

従来制度では、資格を何度獲得しても、その都度、五番勝負で3勝しなければ合格できません。新しい案は、3回の受験資格獲得という実績を評価し、試験での勝敗とは別にプロ入りへの道を認めようとするものでした。

しかし、通常総会では反対多数で否決されました。日本将棋連盟の公式発表でも、第4号議案「フリークラス棋士制度規程に関する件」は否決と記録されています。

この議案は、棋士として認めるための基準をどこに置くかという問題を浮き彫りにしました。公式戦で受験資格を何度も得る実力を評価すべきだという考え方と、プロ棋士としての資格には五番勝負での合格が必要だという考え方が対立したのです。

したがって、2026年11月現在、受験資格を3回獲得しただけで自動的に棋士になれる制度は成立していません。

西山朋佳が白玲通算5期で棋士編入資格を獲得

2026年10月10日、西山朋佳はヒューリック杯第6期白玲戦七番勝負第5局で挑戦者の福間香奈を破り、4勝1敗で防衛しました。

これにより白玲通算5期を達成。「クイーン白玲」の資格を獲得すると同時に、2025年に導入された新たな制度に基づき、フリークラス棋士への編入資格を得ました。

この制度は、棋士編入試験の五番勝負とは別の資格取得ルートです。白玲という女流棋戦のタイトルを通算5期獲得した実績によって、棋士への編入資格が認められる仕組みです。

資格を得た直後、西山は編入の権利を行使するかどうかについて判断を保留しました。しかし、10月26日の記者会見で正式に権利行使を表明。日本将棋連盟も編入届を受理したと発表しました。

「もっと強い方と戦いたい、もっと上を目指す戦いをしたい」

会見で西山が語ったこの言葉には、棋士という新たな立場で、さらに高いレベルの競争に挑みたいという意志が表れています。

日本将棋連盟の公式発表によると、編入日は2027年4月1日、段位は四段、棋士番号は356です。女性初の棋士誕生が正式に決まりました。

なお、西山は2024年から2025年にかけて通常の棋士編入試験にも挑戦し、2勝3敗で惜しくも不合格となっていました。今回の編入は、その試験に合格した結果ではなく、白玲通算5期という新しい制度上の資格によるものです。

この違いを理解しておくことが、2026年の将棋界の動きを正しく把握するうえで重要です。

【女流棋士と棋士の違い】女性初のプロ棋士が誕生する意味

将棋界では「棋士」と「女流棋士」という2つの制度が存在します。どちらも将棋のプロとして活動しますが、資格を得る方法や所属する棋戦、制度上の位置づけが異なります。

棋士は男女共通のプロ棋士制度

棋士は、男女を問わず参加できるプロ棋士制度に属します。一般的なルートは奨励会への入会で、三段リーグなどを経て四段に昇段することです。

棋士になると、順位戦や竜王戦をはじめとする棋士向けの公式戦に参加します。四段は正式な棋士としての出発点であり、そこから実績に応じて段位や順位戦のクラスを上げていきます。

女流棋士は独立した女流棋戦の制度

女流棋士は、女流棋戦を中心に活動する別の制度です。女流名人戦、女流王位戦、白玲戦、女流王将戦など、女性棋士を対象としたタイトル戦があります。

女流棋士として高い実績を持っていても、それだけで自動的に棋士になるわけではありません。従来は奨励会を突破するか、棋士編入試験に合格することが基本的なルートでした。

日本将棋連盟も、女流棋士と棋士は異なる制度で活動していると説明しています。一方、女性であっても奨励会を卒業して四段になれば、棋士として男性棋士と同じ条件で対局できます。

西山朋佳はフリークラス四段からスタート

西山朋佳が2027年4月に編入されるのは、フリークラス四段です。

フリークラスとは、順位戦に参加しない棋士の所属区分です。順位戦のリーグには参加しませんが、順位戦以外の公式棋戦には出場できます。

つまり、フリークラスへの編入は、棋士として認められないという意味ではありません。正式な四段の棋士としてプロ棋戦に参加する一方、順位戦の所属クラスを持たない形で活動を始めることになります。

また、西山は棋士編入後も女流棋戦に参加する予定です。棋士としての活動と女流棋士としての活動を両立できることも、今回の編入の特徴です。

西山のケースは、女流棋士として積み上げたタイトル実績が、男女共通の棋士制度への新しい入口になったという点で、将棋界の歴史に残る出来事です。

【棋士編入試験に関するよくある質問(FAQ)】

Q1:棋士編入試験の受験資格は誰でも取得できますか?

A1:アマチュアと女流棋士が対象です。公式戦で最も良いところから見て10勝以上、かつ勝率6割5分以上などの条件を満たす必要があります。指定棋戦で所定の成績を残す方法もあります。

Q2:棋士編入試験の合格条件は何勝ですか?

A2:新四段5人との五番勝負で3勝すれば合格です。3敗した場合は不合格となります。

Q3:棋士編入試験の受験料はいくらですか?

A3:日本将棋連盟の規定では50万円(税別)です。

Q4:棋士編入試験は何回でも受けられますか?

A4:新たに受験資格を獲得すれば、再挑戦できます。福間香奈は2022年と2026年の2回受験しています。

Q5:棋士編入試験に合格するとすぐ名人戦に出られますか?

A5:合格後はフリークラス四段となります。順位戦には参加しませんが、順位戦以外の公式棋戦には参加できます。

Q6:福間香奈は2026年の棋士編入試験に合格しましたか?

A6:いいえ。2026年3月27日の第3局で生垣寛人四段に敗れ、0勝3敗で不合格となりました。2022年に続く2回目の不合格です。

Q7:西山朋佳は棋士編入試験に合格したのですか?

A7:通常の棋士編入試験では2024~2025年に2勝3敗で不合格でした。その後、白玲通算5期の実績によって別制度の編入資格を取得し、2026年10月に権利行使が受理されました。2027年4月1日付で四段となります。

Q8:棋士編入試験の受験資格を3回取ればプロになれますか?

A8:2026年6月に、受験資格を3回獲得すればフリークラス入りの権利を得るという案が提出されましたが、日本将棋連盟の通常総会で否決されました。現行制度では、資格を3回獲得しただけで棋士になることはできません。

まとめ:【プロの結論】棋士編入試験は実力を証明する制度、2027年は新たな時代へ

棋士編入試験は、奨励会を経ずにプロ棋士を目指すための重要な制度です。受験資格には公式戦10勝以上・勝率6割5分以上などの厳しい基準があり、合格するには新四段5人との五番勝負で3勝しなければなりません。

今泉健司、折田翔吾、小山怜央の3人は、この制度を突破してプロ棋士になりました。一方、福間香奈は2026年の再挑戦でも0勝3敗となり、西山朋佳も通常の編入試験では2勝3敗で涙をのみました。

その西山が白玲通算5期の実績によって新制度の資格を獲得し、2026年10月26日に権利行使を表明したことは、将棋界にとって大きな転換点です。2027年4月1日には、女性初の棋士としてフリークラス四段から新たなキャリアをスタートさせます。

今回の動向から押さえておきたい要点は3つあります。

  • 受験資格と合格は別物:10勝以上・勝率65%以上を達成しても、五番勝負で3勝しなければ通常の編入試験には合格できない。
  • 制度改正案は成立していない:受験資格3回でフリークラス入りする案は2026年6月に否決され、現行制度が維持されている。
  • 西山朋佳の編入は新しいルート:白玲通算5期という実績による資格であり、通常の棋士編入試験の合格とは異なる。

棋士編入試験の難易度を判断するときは、単純な勝率だけでなく、対戦相手の実力、公式戦での継続的な成績、五番勝負での勝負強さまで見る必要があります。

そして2027年4月、西山朋佳の棋士としての活動開始は、女性が棋士制度の中でどのような活躍を見せるのかという新たな関心にもつながります。福間香奈をはじめとする女流棋士の今後の挑戦とともに、将棋界のプロ入り制度がどのように発展していくのか、引き続き注目されます。

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桐島 奈緒

芸能担当デスクとして14年。所属事務所の公式リリース、番組公式サイト、配信サービスの告知を一次情報として照合し、出典の確認できない話は記事にしません。

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