2026年10月30日に厚生労働省が公表した「医療施設動態調査(令和8年8月末概数)」によると、歯科診療所は全国で64,940施設だった。前月の64,975施設から35施設減少している。
一方、JFAの2026年9月度コンビニエンスストア統計では、店舗数は56,208店。前月比では19店の増加となった。
両者を比較すると、次のようになる。
- 歯科診療所:64,940施設
- コンビニ:56,208店舗
- 差:8,732施設・店舗
- 歯科診療所はコンビニの約1.16倍
この比較では、歯科診療所のほうが明確に多い。ただし、歯科診療所は全国の医療施設を対象とする一方、JFAのコンビニ統計は正会員のコンビニ本部を対象としている。完全に同じ条件で数えた数字ではない点には注意が必要だ。
【数字を正しく読む】歯科診療所とコンビニの比較一覧

施設数の差を理解するには、単純な数字だけでなく、何を数えているのかを把握する必要がある。
今回の比較に関係する主要な統計を整理した。
出典:厚生労働省「医療施設動態調査(2026年8月末概数)」、JFA「コンビニエンスストア統計調査月報(2026年9月度)」
歯科診療所数と歯科医師数は同じではないここで押さえておきたいのが、歯科診療所数と歯科医師数の違いだ。
歯科診療所数は、医療機関として存在する施設の数を示す。一方、歯科医師数は国家資格を持つ個人の人数である。
厚生労働省の2024年医師・歯科医師・薬剤師統計によると、2024年12月31日時点の届出歯科医師数は103,652人だった。
そのうち医療施設に従事する歯科医師は100,266人。さらに勤務先別では、歯科診療所が88,703人、病院が11,563人となっている。
つまり、1つの歯科診療所に複数の歯科医師が勤務する場合もあるため、診療所数と歯科医師数は単純に一致しない。
「歯医者が約6万5000軒あるから、歯科医師も約6万5000人」という理解は正確ではない。
【なぜ多い?】歯科医院がコンビニを上回る3つの構造的理由
歯科医院が多い理由は、単に歯科医師が多いからではない。医療機関としての開設形態や、患者の受診需要、地域における診療体制が関係している。
1.個人経営の歯科医院が多く、全国に分散している大きな特徴は、歯科医院には個人開設の施設が多いことだ。
厚生労働省の2026年8月末の開設者別統計を見ると、歯科診療所64,940施設のうち、個人開設は46,485施設となっている。
つまり、全国の歯科診療所のおよそ7割が個人開設という構成だ。
医療法人による開設は17,732施設で、残りは公益法人やその他の法人、公的機関などが占めている。
コンビニのように大規模なチェーン本部が店舗網を展開する仕組みとは異なり、歯科医院は地域に根差した独立型の診療所として存在できる。
住宅街の一角、駅前のビル、商業施設のテナントなど、生活圏に合わせて立地が分散することも、街中で歯科医院を見かけやすい理由の一つだ。
2.歯科医療には継続的な受診需要がある歯科医院は、虫歯になったときだけ利用する場所ではない。
主な診療内容には、次のようなものがある。
- 虫歯の治療
- 歯周病の検査・治療
- 歯石除去や定期検診
- 入れ歯の作製・調整
- 小児歯科
- 矯正歯科
- 歯科口腔外科
- 高齢者の口腔機能管理
特に歯周病や義歯の管理、定期的なメンテナンスなどは、継続的な通院につながる。
厚生労働省の歯科保健医療に関する資料では、2人に1人以上が過去1年間に歯科検診を受診していることや、高齢化に伴って歯科診療所を受診する高齢者の割合が増えていることが示されている。
また、小児の虫歯が減少する一方、中等度以上の歯周病に罹患する人が依然として多いことも指摘されている。
歯科医療の需要は、虫歯治療だけでは説明できない。
3.長年の施設開設によって大きなストックが形成された歯科診療所が多い背景には、過去から積み上がってきた施設数も関係している。
日本では、2000年代以降も全国に多くの歯科診療所が存在し、2017年には68,609施設に達した。
その後は減少に転じているものの、2026年になっても64,000施設を超えている。
つまり、現在の施設数は新規開業だけで形成されたものではない。過去に開業した医院が長期間営業を続けてきた結果でもある。
歯科医院の数が多いという現象は、現在の新規開業数だけでなく、過去数十年にわたる開業と閉院の積み重ねから見る必要がある。
【減少傾向は本当?】歯科診療所数の推移と2026年の現状
「歯医者はコンビニより多い」という話が広く知られている一方で、歯科診療所の数は増え続けているわけではない。
日本歯科医師会が公表した統計資料に掲載されている厚生労働省の医療施設調査を基に、歯科診療所数の推移を整理すると、次のようになる。
| 年 | 歯科診療所数 |
|---|---|
| 2017年 | 68,609施設 |
| 2018年 | 68,613施設 |
| 2019年 | 68,500施設 |
| 2020年 | 67,874施設 |
| 2021年 | 67,899施設 |
| 2022年 | 67,755施設 |
| 2023年 | 66,818施設 |
| 2024年 | 66,378施設 |
| 2026年8月末 | 64,940施設 |
出典:日本歯科医師会「令和7年度社会保険指導者研修会統計資料」、厚生労働省「医療施設動態調査」。2026年は月末概数。
2017年をピークに減少傾向が続く2017年の68,609施設と2024年の66,378施設を比べると、7年間で2,231施設減少している。
割合にすると約3.3%の減少だ。
特に2022年以降は、2023年、2024年と連続して減少している。
さらに2026年8月末の月次統計では、前月から35施設減少した。
この数字から読み取れるのは、歯科診療所の数が依然として多い一方、施設数そのものは縮小方向に動いているということだ。
ただし、2017~2024年の年次データと2026年8月の月次データは調査時点が異なる。厳密な前年比を算出する際には、集計条件をそろえる必要がある。
歯科医師数も減少に転じている施設数だけでなく、歯科医師の人数にも変化がある。
厚生労働省の2024年医師・歯科医師・薬剤師統計では、届出歯科医師数は103,652人だった。
2022年の105,267人から1,615人減少し、減少率は約1.5%となっている。
人口10万人当たりの歯科医師数も、2022年の84.2人から2024年には83.7人に低下した。
したがって、2026年時点で「歯科医師が毎年増え続けている」と捉えるのは適切ではない。
施設数と歯科医師数の両方で、縮小する動きが確認できる。
【都道府県別】歯科医院が多い地域と少ない地域の格差
全国で歯科診療所が64,940施設あるといっても、どの地域にも均等に分布しているわけではない。
人口が多い都市部には多くの歯科医院が集まりやすく、人口の少ない地域では診療所の数も限られる。
2026年8月末の都道府県別施設数厚生労働省の2026年8月末統計から、主な都道府県の歯科診療所数を確認してみよう。
| 都道府県 | 歯科診療所数 |
|---|---|
| 東京都 | 10,482施設 |
| 大阪府 | 5,271施設 |
| 神奈川県 | 4,847施設 |
| 愛知県 | 3,576施設 |
| 埼玉県 | 3,432施設 |
| 千葉県 | 3,111施設 |
| 福岡県 | 2,943施設 |
| 兵庫県 | 2,840施設 |
出典:厚生労働省「医療施設動態調査(令和8年8月末概数)」
東京都は10,482施設で、全国の歯科診療所の約16%を占めている。
大阪府や神奈川県など、人口の多い都市圏にも多くの施設が集まっている。
ただし、施設数の多さだけで医療が充実しているかどうかを判断することはできない。
人口10万人当たりで比較すると地域差が見える地域格差をより正確に見るには、人口10万人当たりの歯科診療所数が参考になる。
日本歯科医師会の統計資料に掲載された2024年の数値では、次のような差がある。
| 地域 | 人口10万人当たりの施設数 |
|---|---|
| 東京都 | 74.8施設 |
| 大阪府 | 61.4施設 |
| 福岡県 | 59.3施設 |
| 全国平均 | 53.6施設 |
| 福井県 | 39.4施設 |
| 滋賀県 | 39.8施設 |
| 島根県 | 38.6施設 |
出典:日本歯科医師会「令和7年度社会保険指導者研修会統計資料」。2024年10月1日時点の人口10万人対施設数。
東京都は人口10万人当たり74.8施設であるのに対し、島根県は38.6施設。約1.94倍の開きがある。
この数字から分かるのは、歯科医院の供給量には地域差が存在するということだ。
都市部は競争、地方はアクセスが課題になる都市部では、駅前や住宅街に複数の歯科医院が集まり、患者獲得競争が発生しやすい。
一方、地方では人口減少や高齢化により、患者数の確保が難しくなる場合がある。
加えて、診療所が閉院すると、近隣住民が通院できる医療機関の選択肢が減ってしまう。
全国平均の施設数だけを見ていると、こうした地域ごとの問題は見えにくい。
【歯科医師は過剰なのか】競争激化と歯科医院の経営難を検証
歯科医院がコンビニより多いという数字から、「歯科医師が余っているのではないか」という疑問を持つ人も多い。
確かに、歯科医院の競争は厳しさを増している。しかし、歯科医師の過剰問題と地域の医療提供体制は分けて考える必要がある。
2026年は歯科医院の廃業・倒産が深刻化この問題を考えるうえで注目したいのが、帝国データバンクが2026年10月6日に公表した「歯医者の倒産・休廃業解散動向」だ。
同社の調査によると、2026年1~9月に発生した歯科医院の休廃業・解散は120件だった。
前年同期の106件から14件増加している。
加えて、負債1,000万円以上で法的整理となった倒産は23件。休廃業・解散と合わせると、9カ月間で143件の歯科医院関連事業者が退出した計算になる。
ただし、ここでいう143件は帝国データバンクが集計した事業者数であり、厚生労働省の施設数と同じ単位ではない。
1事業者が複数の施設を運営する場合もあるため、143施設が閉院したという意味ではない。
歯科医院が経営難に陥る4つの要因帝国データバンクの調査では、歯科医院を取り巻く経営環境について、複数の課題が指摘されている。
1.競争激化による利益率の低下
都市部では大型医療法人や自由診療に強みを持つ専門医院が開業し、患者獲得競争が激しくなっている。
特に、マウスピース矯正などの分野では、医院ごとの専門性や集客力が経営を左右する。
2.人件費の上昇と人材確保の難しさ
歯科衛生士などのスタッフを確保することが難しくなり、人件費も増加している。
歯科医院は医師だけで運営できるわけではない。受付や診療補助、予防処置などを支えるスタッフが必要になる。
3.歯科材料・医療機器の価格上昇
銀やパラジウムなどの歯科用金属、医療機器の価格上昇も経営を圧迫する要因となっている。
診療報酬による収入が、材料費や人件費などの上昇に追いつかない場合、利益を確保しにくくなる。
4.院長の高齢化と後継者不足
長年地域で診療を続けてきた院長が高齢になり、後継者が見つからず閉院を選ぶケースもある。
患者がいる医院であっても、経営を引き継ぐ人材がいなければ診療を継続できない。
黒字なのに閉院する歯科医院もある今回の調査で特に注目したいのが、廃業の理由だ。
帝国データバンクによると、過去5年間に廃業した歯科医院のうち、直近期の業績が判明した120件を分析したところ、半数超が黒字経営だった。
また、廃業時の院長年齢は平均70歳を超えていた。
これは、歯科医院の閉院が必ずしも経営破綻を意味するわけではないことを示している。
患者がいて、一定の収益を確保できていても、後継者がいなければ医院を存続させることは難しい。
歯科医院の廃業を考えるときには、赤字による倒産と、経営者の引退に伴う自主的な閉院を区別する必要がある。
【プロの結論】問題は歯科医師の人数よりも地域と経営のミスマッチ歯科医師が多いという議論には、地域ごとの患者需要や医療従事者の配置という視点が欠かせない。
都市部では医院同士の競争が厳しくなる一方、地方では医院が減ることで通院先の確保が難しくなる可能性がある。
全国の歯科医師数が減少していることと、都市部の競争が激しいことは矛盾しない。
医療の供給は、全国の人数だけでなく、どの地域に、どのような診療機能を持つ医院が存在するかによって変わるからだ。
今後は単純な新規開業数だけでなく、事業承継、地域医療の維持、歯科衛生士の確保、医療DXへの対応なども、歯科業界の重要な課題になる。
【歯医者はコンビニより多い?】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年現在、歯医者とコンビニはどちらが多い?
A1:歯科診療所のほうが多い。厚生労働省の2026年8月末統計では64,940施設、JFAの2026年9月度統計ではコンビニ56,208店舗で、差は8,732となっている。ただし、調査時点と集計対象は異なる。
Q2:なぜ歯医者はコンビニより多くなったの?
A2:個人開設の歯科診療所が多く、住宅街や駅前などに分散して開業してきたことが理由の一つ。虫歯治療だけでなく、歯周病治療や定期検診、高齢者の口腔ケアなど、幅広い受診需要も背景にある。
Q3:歯科医院は2026年も増え続けている?
A3:増え続けているわけではない。2017年の68,609施設から2024年には66,378施設へ減少しており、2026年8月末には64,940施設となっている。
Q4:歯科医師は全国的に余っている?
A4:一律に余っているとは判断できない。2024年の届出歯科医師数は103,652人で、2022年から減少している。一方、都市部では競争が激しい地域もあり、地方では担い手不足が問題になるなど、地域差が大きい。
Q5:歯科医院が閉院するのは経営難が原因?
A5:経営難だけではない。人件費や材料費の上昇、競争激化などに加え、院長の高齢化や後継者不足による自主的な閉院もある。帝国データバンクの調査では、過去5年間の廃業医院のうち、業績が判明した120件の半数超が黒字だった。
Q6:歯科医院が多い都道府県はどこ?
A6:2026年8月末の施設数では東京都が10,482施設で最多。人口10万人当たりの施設数でも、2024年の統計では東京都が74.8施設と全国平均の53.6施設を上回っている。
まとめ:歯医者はコンビニより多いが、業界は縮小と再編の局面へ
2026年最新の公的統計を比較すると、歯科診療所は64,940施設、JFAのコンビニ店舗数は56,208店で、歯科診療所が8,732多い。
「歯医者はコンビニより多い」という説は、数字のうえでは事実だ。
しかし、その背景には個人経営の診療所が多いこと、長年にわたって蓄積された施設数、継続的な歯科医療需要など、複数の構造的な理由がある。
一方、歯科診療所数は2017年以降減少傾向にあり、2026年には廃業や倒産も深刻な課題となっている。
特に重要なのは、都市部の競争激化と地方の医療提供体制の維持という、異なる問題が同時に進んでいることだ。
今後の歯科業界を見るうえで注目したい要点は次の3つである。
1. 歯科診療所数の推移: 新規開業と閉院の差によって全国の施設数がどう変化するか。
2. 地域医療の維持: 地方で閉院が進んだ場合、住民の通院環境をどう守るか。
3. 事業承継と経営再編: 後継者不足やコスト上昇に対応し、地域の歯科医療を継続できるか。
歯医者が多いという数字だけを見て、歯科医師が余っている、どの医院も経営に余裕があると考えるのは早計だ。
本当に見るべきなのは、歯科医院の総数ではなく、必要な地域に必要な歯科医療が持続的に提供されているかどうかである。
主な参照資料:厚生労働省「医療施設動態調査(令和8年8月末概数)」「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」、日本フランチャイズチェーン協会「2026年9月度コンビニエンスストア統計調査月報」、日本歯科医師会「令和7年度社会保険指導者研修会統計資料」、帝国データバンク「歯医者の倒産・休廃業解散動向(2026年1~9月)」。