刑事裁判で有罪判決を受けたのは、次の元陸上自衛隊員3人です。
- 渋谷修太郎
- 関根亮斗
- 木目沢佑輔
3人は、福島県の陸上自衛隊郡山駐屯地に所属していた元自衛官です。2021年8月3日夜、北海道内の陸上自衛隊演習場にある施設で、五ノ井さんに対してわいせつな行為をしたとして、強制わいせつ罪に問われました。
2023年12月12日、福島地方裁判所は3人それぞれに懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡しています。
TBS NEWS DIGなどの報道によって公表された3人の氏名と判決内容は、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 渋谷修太郎 | 元陸上自衛官。有罪判決を受けた3人のうちの1人 |
| 関根亮斗 | 元陸上自衛官。有罪判決を受けた3人のうちの1人 |
| 木目沢佑輔 | 元陸上自衛官。有罪判決を受けた3人のうちの1人 |
| 罪名 | 強制わいせつ罪 |
| 判決日 | 2023年12月12日 |
| 言い渡された刑 | それぞれ懲役2年 |
| 執行猶予 | それぞれ4年 |
| 判決の確定 | 2023年12月27日までに控訴がなく確定 |
裁判で認定されたのは、演習後の飲食の場で、3人が五ノ井さんを格闘技の技でベッドに押し倒し、覆いかぶさるなどして、着衣越しに身体を接触させた行為です。
被告側は公判で無罪を主張しました。
渋谷被告は、周囲の笑いを取るためだったという趣旨の説明をしていましたが、裁判所は行為の態様や状況を踏まえて、わいせつ行為に該当すると判断しました。
判決では、被害者の人格を無視し、性的羞恥心を著しく害する卑劣で悪質な行為だったと厳しく評価されています。
一方、3人が懲戒免職などの社会的制裁を受けていたことも量刑判断で考慮され、懲役2年に対して執行猶予4年が付されました。
懲役2年・執行猶予4年とはどういう意味?この判決について、誤解されやすいのが執行猶予の意味です。
懲役2年という刑が言い渡されているため、3人が無罪になったわけではありません。
執行猶予4年とは、原則として判決確定後4年間、刑の執行を猶予する制度です。その期間中に取り消し事由が生じなければ、懲役刑は実際には執行されません。
つまり、正確な理解は次のとおりです。
- 3人全員が有罪判決を受けた。
- それぞれ懲役2年が言い渡された。
- それぞれ執行猶予4年が付いた。
- 無罪判決や不起訴処分になったわけではない。
- 2023年12月に判決が確定した。
2023年12月27日、五ノ井さんは3人から控訴がなかったことを報告し、刑事裁判の有罪判決が確定したと明らかにしました。
【事件はいつ、どこで起きた?陸上自衛隊郡山駐屯地での性被害】

事件の中心となったのは、五ノ井里奈さんが陸上自衛隊郡山駐屯地に所属していた時期です。
五ノ井さんは2020年4月に自衛隊へ入隊し、福島県郡山市の郡山駐屯地に関係する部隊に配属されました。
ところが、職場で複数の男性隊員から性的な言動や身体接触を受けたと訴えるようになります。
2021年6月:複数隊員による性的な身体接触防衛省が2022年12月15日に公表した調査結果では、2021年6月の演習中、複数の隊員が集まっていた天幕内で、五ノ井さんに対する性的な身体接触があったと認定されています。
また、別の隊員が性的な身体接触を強要したことや、訓練後の車内で脱衣を促す発言があったことも記録されています。
こうした行為は、後に刑事裁判の対象となった2021年8月の出来事だけではありませんでした。
2021年8月:演習場での事件特に刑事裁判の対象となったのが、2021年8月3日の出来事です。
北海道内の陸上自衛隊演習場で宿泊を伴う訓練が行われた際、訓練終了後の施設内で複数の隊員が飲食していました。
防衛省の調査資料によると、上位の立場にあった隊員が、別の隊員に対して五ノ井さんを格闘技の技で押し倒すよう指示したとされています。
その後、複数の隊員による身体接触が行われました。
五ノ井さんはこの被害について、自衛隊内部に相談しましたが、当初は十分な対応を受けられませんでした。
防衛省の調査では、被害の訴えを受けた中隊長が事実関係の調査を十分に行わなかったことも認定されています。
五ノ井里奈さんが実名で告発した理由五ノ井さんは2022年6月、動画投稿サイトなどを通じて自らの被害を実名で告発しました。
顔と名前を公表して被害を訴えたことで、事件は自衛隊内部の問題から、社会全体が考えるべきハラスメント問題へと広がっていきます。
五ノ井さんが求めていたのは、自分が受けた被害の事実を認めてもらうことだけではありませんでした。
同じような被害を受ける隊員が今後生まれないよう、組織そのものに対応を求めていたのです。
2022年8月31日には、第三者委員会による公正な調査を求める10万5,296人分の署名を防衛省に提出しました。
【防衛省の2022年調査結果とは?懲戒免職となった5人の処分】
五ノ井さんの告発を受け、防衛省は陸上自衛隊東北方面隊による調査を進めました。
調査は2021年8月末に開始され、五ノ井さんが所属していた郡山駐屯地の部隊を中心に、約100人から聞き取りを実施しています。
捜査機関による捜査への配慮から、2021年9月中旬から2022年5月末までは一時中断されました。その後、防衛監察本部の検事なども調査に参加しました。
2022年9月29日には、それまでに確認された事実が公表され、12月15日には懲戒処分が発表されています。
懲戒免職となった5人とその他の処分対象者防衛省は、五ノ井さんに対する性暴力を含むセクシュアル・ハラスメントに関与した男性隊員5人を懲戒免職としました。
調査資料では、5人は実名ではなく階級と記号で記載されています。
| 処分対象 | 防衛省が公表した処分 |
|---|---|
| A2曹 | 懲戒免職 |
| B3曹 | 懲戒免職 |
| C3曹 | 懲戒免職 |
| D3曹 | 懲戒免職 |
| E1曹 | 懲戒免職 |
| F3尉 | 訓戒 |
| 中隊長(1尉) | 停職6か月 |
| 大隊長(2佐) | 注意 |
| 連隊長(1佐) | 口頭注意 |
出典:防衛省「元陸上自衛官に対するセクシュアル・ハラスメント(性暴力)に係る懲戒処分について」(2022年12月15日)。
ここで重要なのは、懲戒免職となった5人全員が刑事裁判で有罪になったわけではないという点です。
刑事裁判で有罪が確定したのは3人です。
残る2人についても防衛省による懲戒処分の対象になっていますが、3人と同じ強制わいせつ罪の有罪判決を受けたと説明することはできません。
また、防衛省の公式資料では5人の実名は記載されていません。刑事裁判で氏名が公表された3人と、懲戒免職となった5人を混同しないことが大切です。
上司や監督者の責任も問われたこの事件では、直接的な性的行為だけでなく、上司による対応の不十分さも問題になりました。
防衛省の調査結果では、中隊長が部下からセクハラの可能性について報告を受けていたにもかかわらず、十分な調査を行わなかったことが明らかになっています。
五ノ井さん本人から被害の訴えを受けた後も、事実関係の調査を行っていませんでした。
そのため、直接の加害行為を行った隊員だけでなく、管理監督責任を持つ立場の隊員にも処分が実施されました。
この点は、五ノ井自衛隊事件を単なる個人間のトラブルとして片付けられない理由の一つです。
【実名告発から2026年の裁判終結まで!事件の全時系列】
五ノ井自衛隊事件は、2021年の被害発生から2026年の民事和解成立まで、約4年半にわたる経過をたどりました。
刑事事件と民事事件が並行して進んだため、重要な出来事を時系列で整理します。
| 時期 | 主な出来事 | 結果・意味 |
|---|---|---|
| 2020年4月 | 五ノ井さんが自衛隊に入隊 | 郡山駐屯地に関係する部隊へ配属 |
| 2021年6月 | 演習中の性的被害 | 防衛省の調査で身体接触などを認定 |
| 2021年8月3日 | 北海道内の演習場で事件発生 | 後の刑事裁判の中心となる |
| 2022年5月 | 元隊員3人が不起訴 | 刑事手続きはいったん終了 |
| 2022年6月 | 五ノ井さんが実名告発 | 社会的な問題として広く認知 |
| 2022年9月 | 検察審査会が不起訴不当と議決 | 検察が再捜査 |
| 2022年9月29日 | 防衛省が調査結果を公表 | 性的ハラスメントの事実を認定 |
| 2022年12月15日 | 防衛省が処分を発表 | 5人を懲戒免職 |
| 2023年1月 | 民事訴訟を提起 | 国と元隊員5人に賠償請求 |
| 2023年3月17日 | 元隊員3人を在宅起訴 | 強制わいせつ罪で刑事裁判へ |
| 2023年10月 | 元隊員1人と和解 | 民事訴訟の一部が成立 |
| 2023年12月12日 | 福島地裁が有罪判決 | 3人に懲役2年・執行猶予4年 |
| 2023年12月27日 | 控訴がなく判決確定 | 刑事裁判が終結 |
| 2024年7月 | 元隊員3人と和解 | 謝罪と金銭賠償を含む和解 |
| 2026年1月26日 | 国と最後の元隊員1人が和解 | 国の160万円支払いで民事訴訟も終結 |
刑事手続きで特に注目されるのが、当初の不起訴処分から在宅起訴に至った経緯です。
被害届を受けた捜査機関は、元隊員3人を強制わいせつ容疑で書類送検しました。
しかし、福島地検郡山支部は2022年5月に不起訴処分としました。
これに対して五ノ井さんは不服を申し立て、郡山検察審査会が同年9月に「不起訴不当」と議決しました。
不起訴不当とは、検察の不起訴判断について、捜査や判断が十分だったか再検討を求める判断です。この議決だけで被疑者の有罪が決まるわけではありません。
検察による再捜査の結果、2023年3月17日、元隊員3人は強制わいせつ罪で在宅起訴されました。
その後の公判で有罪判決が言い渡されています。
この経緯からも、当初の不起訴処分と最終的な有罪判決は別の段階の判断であることが分かります。
【五ノ井里奈の損害賠償訴訟とは?2026年1月の国との和解を解説】
刑事裁判と並行して進められていたのが、五ノ井さんによる民事訴訟です。
2023年1月、五ノ井さんは国と元隊員5人を相手取り、横浜地方裁判所に損害賠償請求訴訟を起こしました。
請求額は合計750万円でした。
この訴訟では、元隊員による性被害だけでなく、被害を相談した後の調査や再発防止措置が不十分だったとして、国の安全配慮義務違反なども争点となりました。
2023年10月・2024年7月に元隊員4人と和解民事訴訟は、対象となった5人全員と同時に和解したわけではありません。
和解は段階的に成立しました。
- 2023年10月:元隊員5人のうち1人と和解。
- 2024年7月:さらに3人と和解。
- 2026年1月26日:最後の元隊員1人と国との和解が成立。
2024年7月に和解した3人は、刑事裁判で有罪が確定した元上司3人です。
この3人は五ノ井さんに謝罪し、一定の金銭を支払う内容で和解しました。
2023年10月に和解した1人についても、先行して民事訴訟の一部が解決しています。
2026年1月26日、国が160万円を支払う内容で和解成立一連の訴訟で最後まで残っていたのが、国と50代の元隊員1人を相手とする部分でした。
2026年1月26日、横浜地裁で五ノ井さんと国、最後の元隊員との和解が成立しました。
代理人弁護士が公表した国側の支払額は、合計160万円です。
その内訳は次のとおりです。
| 支払いの根拠 | 金額 |
|---|---|
| 国家賠償法1条1項に基づく損害賠償 | 110万円 |
| 安全配慮義務違反に基づく損害賠償 | 50万円 |
| 合計 | 160万円 |
この160万円は国が支払うもので、最後の元隊員個人から支払われる金銭ではありません。
また、最後の元隊員については、和解条項に個人としての金銭賠償や謝罪は盛り込まれませんでした。
代理人弁護士によると、相手側から謝罪文言の提案はあったものの、自分自身の行為を認める内容ではなかったため、五ノ井さん側は受け入れなかったと説明しています。
五ノ井さんが会見で語った和解成立への思い和解成立当日、五ノ井さんは東京都内で記者会見を開きました。
その際、4年半に及んだ一連の裁判について、次のように語っています。
「ようやく自分の人生を自分の足で歩き出すためのスタートだと思っています」
この言葉は、刑事裁判の有罪確定だけでは終わらなかった長い闘いを象徴しています。
五ノ井さんにとって、訴訟は金銭的な補償だけを求めるものではありませんでした。自衛隊という組織の中で起きた性被害を明らかにし、再発防止につなげることも大きな目的でした。
2026年1月26日の和解によって、国と元隊員5人を相手にした一連の民事訴訟は終結しました。
【刑事責任と民事責任の違いとは?事件から見える組織の課題】
五ノ井自衛隊事件を理解するうえで、特に押さえておきたいのが刑事責任と民事責任の違いです。
両者は目的も判断の対象も異なります。
刑事責任:犯罪行為に対して刑罰を科す刑事裁判は、被告人の行為が犯罪に該当するかを判断し、有罪であれば刑罰を科す手続きです。
五ノ井さんの事件では、渋谷修太郎、関根亮斗、木目沢佑輔の3人が強制わいせつ罪で起訴され、福島地裁で有罪判決を受けました。
ここで問われたのは、3人が五ノ井さんに対して行った具体的な行為です。
そのため、防衛省が懲戒免職にした5人全員について、刑事裁判で同じ判断が下されたわけではありません。
民事責任:被害に対する損害を賠償する一方、民事訴訟では、被害者が受けた精神的・経済的損害などについて、誰がどのような賠償責任を負うのかが問題になります。
今回の訴訟では、元隊員だけでなく国も被告となりました。
特に国については、職員による違法行為に関する国家賠償法上の責任や、安全配慮義務違反が争点となりました。
2026年1月の和解では、国が160万円を支払うことになりました。
ただし、和解は判決と同じものではありません。和解成立によって、関係者全員に対する刑事上の有罪判決が追加されたわけでも、すべての事実関係について新たな司法判断が示されたわけでもありません。
3種類の責任を混同しないことが重要この事件には、さらに自衛隊内部の懲戒処分という行政上の責任もあります。
整理すると、次のようになります。
| 責任の種類 | 目的 | 五ノ井事件での結果 |
|---|---|---|
| 刑事責任 | 犯罪に対する刑罰 | 元隊員3人が有罪 |
| 民事責任 | 被害に対する損害賠償 | 元隊員4人と段階的に和解し、最後の1人と国も2026年に和解 |
| 懲戒責任 | 組織内の規律違反に対する処分 | 5人が懲戒免職 |
この3つは相互に関係していますが、同じ判断ではありません。
たとえば、懲戒免職になったからといって刑事裁判で有罪が確定するわけではありません。逆に、刑事裁判で有罪になったことだけで、国の民事責任の範囲が自動的に決まるわけでもありません。
2026年現在、自衛隊のハラスメント対策はどうなっている?五ノ井事件を受け、防衛省・自衛隊はハラスメント防止対策の見直しを進めてきました。
防衛省の有識者会議では、組織の監督者の責任、相談体制、被害者への支援などが検討されました。
問題の本質は、加害行為を行った個人だけではなく、被害の申告を受けた組織が適切に対応できなかった点にもあります。
2026年2月10日の陸上幕僚長定例記者会見でも、五ノ井さんとの和解成立について質問が出ました。
陸上幕僚長は、ハラスメントを完全に根絶できているわけではないと認めたうえで、部隊の監察、隊員との懇談、アンケートなどを通じて現場の状況を把握し、改善を続ける考えを示しています。
つまり、2026年1月の和解は裁判の終結を意味しますが、自衛隊におけるハラスメント問題そのものが解決したことを意味するわけではありません。
【五ノ井自衛隊犯人に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:五ノ井里奈さんに性被害を与えた犯人3人の名前は?
A1:刑事裁判で有罪判決を受けた元陸上自衛官は、渋谷修太郎、関根亮斗、木目沢佑輔の3人です。2023年12月12日に、それぞれ懲役2年・執行猶予4年の判決を受け、同月27日までに控訴がなく有罪が確定しました。
Q2:懲戒免職になった5人全員が有罪になったのですか?
A2:いいえ。防衛省が懲戒免職にしたのは5人ですが、刑事裁判で強制わいせつ罪の有罪判決を受けたのは3人です。懲戒処分と刑事裁判は別の手続きです。
Q3:2026年1月の和解で国はいくら支払ったのですか?
A3:国は五ノ井さんに合計160万円を支払う内容で和解しました。内訳は国家賠償法に基づく110万円と、安全配慮義務違反に基づく50万円です。最後の元隊員個人からの金銭賠償や謝罪は和解条項に含まれていません。
Q4:五ノ井里奈さんの裁判はすべて終わったのですか?
A4:はい。2026年1月26日に国と最後の元隊員1人との和解が成立し、元隊員5人と国を相手にした一連の民事訴訟が終結しました。刑事裁判についても、2023年12月に3人の有罪判決が確定しています。
【プロの結論】五ノ井自衛隊事件から読み解くべき本当の問題
五ノ井自衛隊事件を振り返ると、明らかになったのは3人の元隊員に対する刑事責任だけではありません。
被害を訴えた隊員への対応、内部調査のあり方、上司の監督責任、組織としての再発防止など、複数の問題が重なっていたことが分かります。
読者がこの事件について情報を確認するときは、次の3点を基準にすると、誤解を避けられます。
1. 刑事裁判の有罪判決と懲戒免職を区別する。 有罪が確定したのは3人、懲戒免職となったのは5人です。
2. 2026年の和解と刑事裁判の判決を区別する。 国の160万円の支払いは民事上の和解であり、新たな刑事判決ではありません。
3. 裁判の終結と組織改革の完了を区別する。 民事訴訟は終結しましたが、ハラスメントの根絶に向けた取り組みは継続しています。
五ノ井さんの実名告発は、閉鎖性のある組織で被害を訴えることの難しさと、被害申告を受けた側の対応責任を社会に問いかけました。
2026年1月26日の和解は、五ノ井さんが長年続けてきた司法手続きに一つの区切りをつける出来事です。
しかし、事件から得られる教訓は、過去の処分や賠償金額だけでは測れません。
被害を受けた隊員が安心して声を上げられること、申告を受けた組織が迅速かつ公正に調査すること、そして再発防止策が現場で実際に機能すること。
それこそが、五ノ井自衛隊事件を通じて今後も問われ続ける課題です。