答えは、条件を満たせば最大5万円の報償金を受け取れる可能性があるです。
根拠となるのは、出入国管理及び難民認定法第66条と、同法施行規則第60条です。
入管法第66条が定める報償金制度入管法第66条では、一般の人が第62条第1項に基づいて通報し、その情報に基づいて外国人に退去強制令書が発付された場合、法務大臣が通報者に報償金を交付できると定めています。
ここで重要なのは、条文にある「交付することができる」という表現です。
これは、条件に該当すれば必ず5万円が支払われるという意味ではありません。通報内容や個別の事情を踏まえ、交付するかどうかが判断されます。
報償金はいくら?1,000円から5万円までの範囲具体的な金額は、入管法施行規則第60条に定められています。
- 最低金額:1,000円
- 最高金額:50,000円
- 算定単位:1件につき
つまり、5万円は固定報酬ではなく、法律上の上限額です。
また、通報者が自分で金額を指定することもできません。
【制度の仕組み】入管法第62条・第66条の関係を整理

報償金制度を正しく理解するには、通報の根拠となる第62条と、金銭交付の根拠となる第66条を分けて考える必要があります。
一般市民と公務員では通報の扱いが異なる入管法第62条第1項は、退去強制事由に該当すると考えられる外国人を知った人が、その情報を通報できると定めています。
一方、第2項は、国または地方公共団体の職員が職務を遂行する中で該当する外国人を知った場合、通報しなければならないと定めています。
したがって、一般市民には通報する義務はありませんが、一定の条件に該当する公務員には法律上の通報義務があります。
関連する法律・行政機関の関係一覧| エンティティ | 制度上の役割 | 要点 |
|---|---|---|
| 入管法第62条第1項 | 一般市民の通報 | 通報は任意 |
| 入管法第62条第2項 | 公務員の通報 | 職務上知った場合は通報義務 |
| 入管法第66条 | 報償金の根拠 | 退去強制令書の発付が条件 |
| 施行規則第60条 | 金額の規定 | 1,000円以上5万円以下 |
| 出入国在留管理庁 | 情報受付・調査 | 通報内容を確認し、必要な手続を進める |
| 地方出入国在留管理官署 | 地域ごとの窓口 | 情報受付や報償金に関する連絡を担当 |
注意したいのは、入管法第62条に関係する通報が、すべて同じ制度ではないことです。
退去強制事由に関する通報と、在留資格の取消しに関する行政上の通報は、法的な根拠や扱いが異なります。
特に、在留資格の取消しに関する第62条の2と、退去強制事由に関する第62条第1項を混同してはいけません。
5万円の報償金制度に直接つながるのは、第62条第1項に基づく通報です。
【支給条件】報償金を受け取れる人・受け取れない人
不法滞在の通報で報償金を受け取るためには、複数の条件を満たす必要があります。
単に外国人の情報を入管に伝えただけでは、報償金の支給は確定しません。
報償金を受け取るための主な条件基本的な確認事項は次のとおりです。
1. 入管法第62条第1項に基づく通報であること。
2. 通報者の氏名や職業などを確認できること。
3. 通報した情報に基づいて対象者の調査が行われること。
4. 対象者について退去強制令書が発付されること。
5. 通報内容などを踏まえ、法務大臣側が報償金の交付を判断すること。
特に重要なのが、通報と退去強制令書の発付との因果関係です。
既に入管当局が把握していた情報を単に繰り返し伝えた場合など、通報がどのように処分につながったかは個別に判断されます。
匿名通報では報償金を受け取れないこれは検索者が特に注意したいポイントです。
出入国在留管理庁の公式Q&Aでは、匿名で通報した場合、報償金の交付対象にはならないと説明されています。
理由は、報償金を交付する際に、通報者の氏名や職業、国または地方公共団体の職員であるかどうかを確認する必要があるためです。
つまり、情報提供そのものと、報償金を受け取る資格は別問題です。
匿名で情報を提供することと、実名で報償金の審査を受けることは、同じ条件ではありません。
公務員が通報した場合はどうなる?公務員については、入管法第66条に明確な除外規定があります。
国または地方公共団体の職員が、職務の遂行に伴って知った事実に基づいて通報した場合、報償金の対象にはなりません。
ただし、ここでいう除外は、単に公務員という身分だけを理由とするものではありません。
重要なのは、情報を知った経緯です。
例えば、行政機関の職員が通常の業務で得た情報を通報するケースと、職務とは無関係な私生活上の立場で得た情報を通報するケースは、区別して考える必要があります。
報償金の対象になるか比較| 通報者・通報状況 | 情報提供 | 報償金 |
|---|---|---|
| 一般市民が実名で通報 | 可能 | 条件を満たせば対象 |
| 一般市民が匿名で通報 | 可能 | 対象外 |
| 公務員が職務上知った情報を通報 | 義務が生じる場合あり | 対象外 |
| 通報したが退去強制令書が発付されない | 可能 | 原則として対象外 |
| 通報が処分につながったが個別判断で交付されない | 可能 | 支給されない |
【通報方法】不法残留者の情報はどこに伝えればいい?
不法残留などの疑いがある外国人について情報提供する場合、基本的な窓口は出入国在留管理庁です。
警察や一般の自治体窓口に相談する方法とは異なり、入管行政を担当する機関に情報を届けることができます。
方法1:出入国在留管理庁の情報受付を利用する出入国在留管理庁には、一般市民向けの「情報受付」が設けられています。
情報提供の方法は次のとおりです。
- 電子メールによる情報提供
- 情報受付の専用入力画面からの送信
- 最寄りの地方出入国在留管理官署への直接連絡
- 電話や郵便による情報提供
公式の情報受付ページでは、入力画面も用意されています。
提供された情報は、対象者の勤務先や目撃場所などについて入力された住所の都道府県を管轄する地方出入国在留管理局に送信される仕組みです。
方法2:情報提供で伝える内容通報するときは、確認できている事実を具体的に整理することが大切です。
例えば、次のような情報が参考になります。
- 対象者を見かけた場所
- 勤務先や活動場所
- いつ、どのような状況で確認したか
- 不法残留や不法就労を疑う具体的な事情
- 客観的に確認できる資料がある場合は、その内容
ただし、外国人であることや外国語を話していることだけで、不法滞在と判断することはできません。
在留資格や在留期間は外見から判断できないため、憶測ではなく、具体的な事実を伝えることが必要です。
方法3:休日やメールが使えない場合出入国在留管理庁の案内によると、土曜日、日曜日、祝日、年末年始の閉庁日は、電子メールで情報を受け付けています。
また、情報受付メールの利用には一部制限があります。
メールを利用できない場合は、電話や郵便による情報提供も可能です。
通報者の個人情報はどう扱われる?情報受付ページでは、提供者の氏名などの個人情報や情報内容が外部に漏えいしないよう、セキュリティ対策を講じていると説明されています。
一方、見落とせない注意事項もあります。
情報受付に電子メールを送信すると、IPアドレスが自動的に取得されます。
そのため、完全に身元を把握されない匿名の仕組みだと考えるのは適切ではありません。
また、入管庁は誹謗中傷や、不法滞在・偽装滞在とは無関係な内容のメールを頻繁に送る行為を禁止しています。
制度を利用する場合は、対象者に関する事実に基づいた情報提供に限定する必要があります。
【退去強制令書】発付される条件と報償金が支給されるまでの流れ
報償金制度を理解するうえで、最も重要なのが退去強制令書です。
なぜなら、単に入管が情報を受け取っただけでは、報償金の支給条件を満たさないからです。
退去強制令書とは?退去強制令書とは、外国人について退去強制の手続が進み、法律上の要件を満たした場合に発付される書面です。
入管法第24条には、退去強制事由が定められています。
代表的なものには次のようなケースがあります。
- 不法入国や不法上陸
- 在留期間を過ぎて日本に滞在する不法残留
- 資格外活動などの不法就労に関する違反
- その他、法律で定められた退去強制事由
ただし、不法就労と不法残留は同じ意味ではありません。
例えば、適法に在留している外国人でも、在留資格で認められた範囲を超えて働く場合には、資格外活動に関する問題が生じることがあります。
退去強制令書が発付されるまでの手続出入国在留管理庁が公表している退去強制手続では、おおむね次のような流れで審査が進みます。
情報提供・違反調査
入国警備官が情報を確認し、必要な調査を行います。
入国審査官による違反審査
退去強制事由に該当するかどうかを審査します。
口頭審理
認定に異議がある場合、特別審理官による審理が行われます。
法務大臣への異議の申出
必要に応じて、さらに審査・裁決が行われます。
退去強制令書の発付
法定の要件を満たした場合、主任審査官が令書を発付します。
報償金の個別判断
通報内容などを踏まえ、報償金の交付が判断されます。
出典:出入国在留管理庁「引渡し・違反審査・口頭審理・異議申出・裁決・在留特別許可」
ここには重要な例外があります。
それが、出国命令制度です。
一定の条件を満たした不法残留者は、収容を伴わない簡易な手続によって出国できる場合があります。
例えば、過去に退去強制や出国命令を受けたことがないこと、速やかに出国する意思があること、不法残留以外の退去強制事由に該当しないことなどが条件になります。
この場合、通常の退去強制令書の発付とは異なる手続で出国するため、報償金制度の条件を満たすとは限りません。
また、退去強制事由に該当しても、在留特別許可が認められる可能性があります。
つまり、通報された人が必ず退去させられるわけではありません。
【報償金の実態】5万円が必ず支給されるわけではない理由
制度の存在と、実際にお金を受け取れるかどうかは別問題です。
出入国在留管理庁の公式Q&Aでは、報償金の交付について、通報内容などを踏まえ、個別の事案に応じて判断すると説明しています。
通報すれば必ず報償金がもらえる?答えは、いいえです。
通報後に調査が行われても、退去強制令書が発付されなければ、報償金の基本条件を満たしません。
加えて、令書が発付された場合でも、法務大臣が必ず報償金を交付するわけではありません。
この点は、法律の「交付することができる」という規定からも読み取れます。
報償金の金額はどう決まる?法律と施行規則で定められているのは、1件につき1,000円以上5万円以下という範囲です。
しかし、すべての案件に適用される固定の算定式や、情報の種類ごとの一律の金額は、一般向けの公式Q&Aには示されていません。
そのため、5万円を標準的な支給額として期待することはできません。
また、出入国在留管理庁は、報償金を交付する場合には地方出入国在留管理官署から通報者に連絡すると説明しています。
反対に、交付しない場合は通報者への連絡を行わないとしています。
通報後に調査状況を問い合わせることはできる?原則としてできません。
出入国在留管理庁は、情報提供者から問い合わせがあっても、調査の状況や退去強制令書が発付されたかどうかについて回答しないとしています。
これは、個人情報や入管業務上の情報を保護するための運用です。
そのため、通報した人が自分で対象者の処分結果を確認して報償金を請求するという仕組みではありません。
制度を利用する際に注意したいこと報償金制度には、適正な在留管理に対する一般市民の協力を得るという目的があります。
一方、誤った情報提供は、無関係な人に不利益を与えるおそれがあります。
特に、次のような行為は避けるべきです。
- 国籍や外見だけで不法滞在と決めつける
- 根拠のない噂を通報する
- 個人情報をSNSなどに公開する
- 相手の住居に無断で立ち入る
- 執拗に尾行したり、直接問い詰めたりする
- 虚偽の情報を繰り返し送る
報償金の存在を理由に、個人で取り締まりを行う必要はありません。事実を適切な行政窓口に伝え、その後の判断は専門機関に委ねることが基本です。
【よくある質問】不法滞在の通報と5万円の報償金
Q1:不法滞在者を1人通報すれば必ず5万円もらえますか?
A1:いいえ。5万円は上限額です。施行規則では1件1,000円以上5万円以下と定められており、通報によって退去強制令書が発付されたことなどを踏まえて個別に判断されます。
Q2:匿名で不法残留者を通報しても報償金はもらえますか?
A2:匿名通報は情報提供として利用できますが、報償金の対象にはなりません。報償金の交付には、氏名や職業などの確認が必要です。
Q3:公務員が不法滞在を通報した場合も5万円を受け取れますか?
A3:職務の遂行に伴って知った事実に基づく通報は、入管法第66条の規定により報償金の対象外です。
Q4:不法就労している外国人を通報した場合も対象ですか?
A4:不法就労が退去強制事由に該当する場合、情報提供の対象になり得ます。ただし、不法就労の疑いだけで報償金が支給されるわけではなく、通報に基づく退去強制令書の発付などが必要です。
Q5:通報した後、対象者がどうなったか確認できますか?
A5:出入国在留管理庁は、通報者に対しても調査状況や退去強制令書の発付状況を回答しないとしています。報償金を交付する場合は、担当する地方出入国在留管理官署から連絡があります。
Q6:通報は警察ではなく入管に行うべきですか?
A6:不法滞在や不法残留に関する情報提供は、出入国在留管理庁の情報受付や最寄りの地方出入国在留管理官署が窓口です。事件や緊急の危険がある場合は、別途警察への連絡も必要です。
まとめ:不法滞在通報の5万円は条件付きの報償金制度
2026年10月30日時点で、不法滞在者の通報に対する報償金制度は、入管法第66条と施行規則第60条に根拠を持つ正式な制度です。
要点を整理すると、次のようになります。
- 報償金は1件につき1,000円以上5万円以下。
- 通報した情報に基づいて退去強制令書が発付される必要がある。
- 匿名通報は報償金の対象外。
- 公務員が職務上知った情報に基づく通報も対象外。
- 支給は自動的に決まるものではなく、個別に判断される。
- 通報後の調査状況や処分結果は原則として教えてもらえない。
この制度の本質は、5万円を受け取ることではなく、一般市民からの情報提供によって、入管行政の適正な運用を支えることにあります。
特に重要なのは、情報提供ができることと、報償金を受け取れることは別であるという点です。
匿名通報、公務員による職務上の通報、退去強制令書が発付されないケースなど、対象外となる条件を理解しておく必要があります。
また、不法滞在と不法就労、在留資格の取消しと退去強制は、それぞれ法律上の意味が異なります。外見や国籍、個人的な印象だけで判断することはできません。
不法残留などについて具体的な情報を持っている場合は、出入国在留管理庁の公式情報受付を利用し、客観的な事実を伝えることが適切です。
報償金の上限額だけに注目するのではなく、制度の対象範囲、支給条件、行政手続の流れまで理解することが、2026年現在の制度を正しく利用するための判断基準になります。
主な根拠資料:出入国管理及び難民認定法第62条・第66条、同法施行規則第60条、出入国在留管理庁「情報受付」「退去強制手続・出国命令制度・上陸拒否期間の短縮決定Q&A」「引渡し・違反審査・口頭審理・異議申出・裁決・在留特別許可」。